新居
「ここが新居ですか」
「あぁ、従兄弟からもぎとってきた」
んもっ、もぎとってきたってお父さまったら。
「何故お前がまずもぎとってきたんだ戦神っ!そして一緒に住む気かっ!」
そして相変わらずの調子でザカリィが私の腰を抱き寄せてくる。
「当たり前だろう。俺はお前の監視だし、それに娘を男とひとつ屋根の下に住まわせられるか」
「夫なのだからいいだろう!」
「だから住むことは許してやると言っている」
「ふぐぐっ」
あぁ、またお父さまとザカリィの不毛な争い。でもそんな日常が戻ってきたことがまず嬉しい。
しかし、陛下からいただいたというこのお屋敷。ザカリィが使用人を最低限しか置きたくないというモットーなのと、私もお父さまも豪華さや広さにはこだわっていないという点もあり、王城の離宮程度のお屋敷をもらった。うん、離宮程度。
―――いや、むしろ離宮だろ。離宮だったところだろ、ここ。
何故か王城の端っこの土地をもらったということだが、確実に。確実に陛下が弟離れができていないが故のこの処置!!
今後もザカリィの討伐団は、今後の魔物被害に備えて近衛騎士の一部として残るそうだ。因みに神官は神殿からの出向。これからは騎士たちとの連携も含めて積極的に交流を続けるそうだ。
まぁ、隣にその討伐団の演習場があるし、宿舎まであるんだけどね。完全に陛下が弟離れできていないのである。うん。
ついでに王妃殿下のお義姉さまはと言えば、私と気軽に魔法談義ついでにお茶できるからとOKしたそうな。
何気にお義姉さまもザカリィのことを心配しているのかもしれない。
アレンはあの後すっかり良くなって、今はザカリィの侍従として一緒に屋敷で暮らすことになった。何故かアリシアも付いて来てくれた。いや、それは大変ありがたいのだが、いいのだろうか?
そう問うてみれば、神官長さまから是非にと言うことだった。
あぁ、あそこにも弟離れできていないひとがひとりいたぁ。
しかしながら、アリシアとアレンも本来は休暇中。休暇中も鍛錬は怠らないという二人だが、ワーカホリックと言うかザカリィのお世話が既に日常生活の一部、いや条件反射になっているアレンは温かく見守りつつ。
みんなの休暇中はお義姉さまとシーザーさんが実家から侍女や侍従を派遣してくれたので、休暇中のアリシアとお茶をしたり、私は私で自分の研究も進めたりしている。
今は私とザカリィ、お父さま、アリシア、アレンと一緒にサロンでお茶をしており、シーザーさんが様子を見にきてくれている。
なお、シーザーさんも休暇中だが公爵としての仕事は既に再開しているらしい。すごいな、シーザーさん。
「私も、何かお役に立てればいいんですけど。せめてルービノーグンのことをもっと詳しい資料やシュリュッセル王国のロッホについてもう少し探究したいのですが」
先日の一件で、陛下が帝国にいるお母君に手紙を出してくださったようで。お父さまのお母さま、つまりは私のおばあさまは既に亡っていらっしゃる。
だから今、何かをご存じであれば陛下のお母君だけなのだ。しかし有力な情報は得られなかったというのが結論である。
ただ、先代正妃さまの実子であるザカリィは孫同然らしく、そのザカリィとご自身の姉君の孫である私の婚姻を祝福してくれたのだ。
それだけでもとても嬉しいお返事であった。
「そうだ、それなら近々領地の方にも顔をだす予定なんだが、お前たちもどうだ?」
シーザーさんの領地!ヴィーダーシュプルフ公爵家の領地は、ルービノーグンの伝説が残る北部のヘクセーデルシュタイン領の一部である。
「けれどお仕事のお邪魔になるのでは?」
「貴様も少しは休んだらどうだ」
私の言葉に続き、お父さまがそう告げる。
「いや、確かに休息をとは言われているが。2年も留守にしていたからな。あちらは弟たちに任せていたとはいえ、挨拶くらいはいかないと。家令からはせめて領地でゆっくりして来いと念を押されたが」
「じゃぁ、旅行みたいな感じで楽しむ?」
と、アリシア。
「あちらには遺跡もあるんですよ」
アレンもそれに続けてくれる。ロッホや部落のことはあまり残ってはいないけど、遺跡があるのか。それは興味深いかも。ルービノーグンに繋がる何かがあるといいなぁ。
「まぁ、そこならガイドくらいは」
と、言いかけたシーザーさんに対し。
「ガイドなら俺がやりますから」
と、アレン。アレンも休暇中なのだが、ワーカホリックだしな。
それに公爵家の仕事もやっているシーザーさんには少しでも気分転換していただきたいし。
「新婚旅行にもなるかも?」
と、アリシア。
「あぁ、確かにそうかもしれない!ねぇ、ザカリィ」
そう私が言えば。
「俺はリューリと一緒ならそれでいい」
そう言ってごく普通に首筋に顔をうずめてくるので、お父さまからの視線が痛い。ちょっ!みんなの前なのに~~~っ!!
「まぁ、新婚旅行先に選ばれることはほぼないけどな」
と、シーザーさんが暗い顔をする。
「こ、これから流行るかもしれないですよ!」
「そうだ。北部は魔剣士が多いと聞く。腕試しにはもってこいだし、私にとっては魅力的だ」
まぁ、アリシアの目的は、ちょっと新婚旅行とはかけ離れている気もするのだが。
―――私たちは、早速旅行の計画を練るのだった。
※本日はなかなか時間が取れず、1話のみの更新となります<(_ _)>※
※明日は頑張りたいっ!!(/・ω・)/※




