シュリュッセル王国のカギ
※ドロドロしております。性格悪すぎるひとが出てきます。
※ただし公王の方じゃないぞっ☆
―――ここは、どこだろう?
私は、どうなって。
『うぅっ』
苦しむ声。これは。
―アレン!?―
しゃべれないっ!せめて声をかけてあげたいのにっ!
猿轡まではめられている。
『あっ、うぅっ』
縛られ横たわった体の視線の先には、手首を鎖で繋がれてぐったりとするアレンの姿があった。
―――ここは、どこだろう。何がどうなって?どれくらい眠っていたのだろう。
わからない。けれど、遠くから声が響いてくる。
『リューリとアレンはどこへやった!』
これは、ザカリィの声?
『大丈夫ですよ。今のところ、無事ですから』
『貴様、今すぐ貴様をこの手で殺めてやってもいいんだぞ!』
『おやおや、そんなにあの侍従と妻が大切ですか?侍従の方は魔物との混ざりものの失敗作でしょうに』
―――失敗作って何?
そしてザカリィは誰と話しているのだろう。
『失敗作?何のことだ。あと、魔物の血が混じっているのは俺も同じだ!』
『いいえ、あなたは違いますよ。正真正銘の生物兵器。我々キドゥーシュの技術が生み出した、世界を我が物にするためのバケモノなのですから』
『なに?』
え?キドゥーシュが生み出した、生物兵器?ザカリィが?一体何を言っているの?
『あなたは、何故帝国に反発し続け、代々娘を、当代は我が妹を公王に人質として差し出しながらも生きながらえているかわかりますか?』
公王に妹を人質に差し出した?確か公王妃は教皇の妹。と言うことはザカリィと話しているのは、教皇!?
『それは、シュリュッセルにかけられた“カギ”の解錠方法を唯一知りえる一族だからですよ』
シュリュッセル王国にかけられたカギ?“シュリュッセル”と言うのは、古代の言葉で“カギ”の意味だ。シュリュッセル王国は、何かのカギを守っているってこと?
『だからこそ生かされてきた。その解錠方法を利用して、この手にもう一度我が一族の栄華を帝国から取り戻すために!』
つまり教皇は帝国に対する謀反を企てている。
『あなたがどのようにして生み出されたか、知りたくはないですか?』
『興味ない』
『シュリュッセル国王が、あなたの敬愛する兄君があなたを騙しているとしてもですか?』
国王陛下が、ザカリィを騙している?そんな、バカな。ザカリィはあんなに陛下を敬愛している。陛下もザカリィをかわいがっていて。
―――そもそも、あのお義姉さまに隠れてザカリィを騙せるとは思えないのだが。
『はぁ?』
『知らないようですから教えて差し上げます。あなたは、先代正妃の御子ですが』
『そんなことは知っている』
『ふふ、ここからですよ。あなたは現ラーシュ国王が先代正妃に魔晶を埋め込み産ませたあの男の実の子ですよ。全ては帝国の愚かな狗となり下がった先王に絶望し、ラーシュ国王がシュリュッセル王国を帝国から独立させるために身を粉にしてあなたを生み出し、そして兵器として活用しようとしたのに。ラーシュ国王は先王の王太子とその王太子妃に罪を着せて殺し、先代正妃を追い詰め自死させ、あなたという兵器を自分の手に収めて今回の戦でも利用したんですよ!シュリュッセル王国のカギを利用してね!」
―――は?
教皇は何を言っているんだろう。そもそも、そんなことをしたら確実に王妃殿下であるお義姉さまに誅殺されると思うんだけど。
あの英雄王陛下がそんなことをやるはずがないと思うし。
『そもそも20年前の大規模討伐だって、あの国王がシュリュッセル王国のカギを使って起こした自作自演ですよ。いやぁ、上手くやりましたよねぇ。まさか英雄になるためにそんなことまでするなんて』
―――いや、当時はお義姉さまも一緒に戦っていたのだから、そんな工作をしたら一気にお義姉さまにバレて今頃木っ端微塵に粉砕されていると思うんだけども。
『貴様、さきほど自分で言ったことを忘れたのか。シュリュッセル王国のカギとやらを扱える一族はお前たちだけだと』
『えぇ、そうですよ。だから、彼はこちらのスパイです。彼を英雄王にするために我らが力を貸したのですよ。そして兵器は見事に完成した。今こそ帝国を一網打尽にするとき。あなたが世界を脅かす魔王として力を目覚めさせるときなのです!』
―――国王陛下が、スパイ?何だかしっくりこないんだけども。そして、ザカリィを魔王にってどういうこと?確かに原作では魔王として覚醒するし、帝国の大神殿の予言でもそう言うものがあった。だからこそ戦神たるお父さまがこのシュリュッセル王国に来た。
―――その前に、この教皇は知らないのかな?初代魔王のことを。
初代魔王にこんな企みがバレたら大変なことになるし。それに、陛下が初代魔王を欺いて大切に育ててきたザカリィをそんな風に兵器として使おうとするのかな?
『そしてその弊害となるカギは、始末しなければなりませんねぇっ!』
―――うぅ、何だかすごい嫌な予感
そう言った予感は案外当たるもので。私とアレンの前に服面を被った神官服のひとびとが立ちはだかった。そして抵抗できるはずもなく、私とアレンは引きずり出されたのだ。
「リューリ、アレン!」
ザカリィの声が響く。
ひとりのピンクブロンドの髪の神官服の男の前に怒りをあらわにするザカリィの姿。
「返してもらうぞっ!」
「そうはいきません。何の準備もしていないとお思いですか?あなたは私たちが生み出した“兵器”なのですから」
そう言って神官服の男・教皇が何かを掲げた瞬間、ザカリィが崩れ落ちる。
え、何?これ。
『あああああぁぁぁぁぁっっっっ!!!』
悲痛な叫びが耳に響く。
顔を両手で押さえながら崩れ落ちるその姿は、まるで。
―――原作で、ザカリィが魔王として本格的に覚醒するときの、最後のワンシーン。




