控え室にて
「じゃ~ん。私のおさがりでリメイク!ステキでしょ?」
『どうしてこうなったっ!!』
―――いや、原因はたかが知れているのだけど。
討伐団の帰還と戦勝を祝う祝賀パーティー。私は団長であるザカリィの妻として一緒に参加することになっただのだが。
私のドレスに関しザカリィとお父さまの意見がぶつかり合ったのだ。私は地味なのでいいと言ったら、ザカリィが朱色を提案してきた。朱色のどこが地味なんだっ!!
お父さまはお父さまで、ならば私の瞳と同じローズレッドだと主張する。まぁ、明るい色合いの朱色よりは落ち着いているような気もするが。何気にお父さまは自分の瞳の色とお揃いにしようとしているような。いや別にそれはそれで構わないのだが、
―――不毛な争いが、終わらぬっ!!
そこで助け舟を出してくれたのが王妃殿下であるお義姉さまだ。
『ちょうどいいライトグレーの私のおさがりがあるから、仕立て直して着てみない?イチから仕立てるよりも時間の短縮になるし、黒と白の中間だからそれで妥協できるでしょ。ね?』
お義姉さまからの圧にザカリィが泣く泣く屈し、それを見たお父さまが哀れに思い妥協してくれた。うん、私もお義姉さまのおさがりなら安心して着られるし。
何よりその不毛な争いが終結したのだから何よりである。
ついでにその日の晩餐では、その騒動の一部始終を聞いた陛下が吹いていたけれど。
―――まぁ、そんなやり取りがあったわけで。
今日はそのパーティーの当日である。私は無事お義姉さまのおさがりをお義姉さま付きの侍女たちにこれぞというほどに着飾らされた。
ヘアメイクは落ち着いた感じに。ドレスもお義姉さまの計らいで、装飾などを控えめにより落ち着いたものに仕立て直してもらったみたいだし。まぁ、胸元にはザカリィの瞳の色である朱色の宝石をあしらったペンダントが輝いているので、これは目立つけれど。むしろ牽制にもなるからと言うことで妥協した。
「下手に目立って、キドゥーシュに目を付けられたら困るわ。公王陛下は平気だけどね」
そう、お義姉さまが告げる。確かに。公王陛下はお父さま曰はく性悪とのことだが、ぶっちゃけ言って皇弟殿下なので問題はない。問題は・・・
「ふんっ、教皇が使節団と共に来るとはな」
ザカリィが不満げに吐き捨てる。因みにザカリィは騎士服である。エポレット(肩のぴらぴら)や勲章なども胸元に付いていて、本来の騎士団の団長クラスの正装だという。
そして共に出席するアレンとシーザーさんもそれぞれの騎士としての正装を身に纏っているわけだが。
「私は、納得していないっ!!」
あぁ、アリシア。本来、私のドレスアップを手伝ってもらう予定ではあったのだが。
「でも、せっかくなんだから。男爵からの心遣いでしょう?」
とのお義姉さまの言葉に、アリシアは渋々頷いた。
何でも、アリシアのお父さまである男爵さまが娘のためにとドレスをわざわざ送ってくれたらしい。
出席者の男性騎士たちは割と騎士服が多いそうだが、女性騎士は割とこういう場ではドレスを選ぶことが多い。ましてや貴族令嬢なら。
アリシアは安定の騎士服を着るつもりだったのだが、男爵さまが娘のために是非にと張り切ってしまったので。こうしてアリシアもお義姉さまの侍女さんたちに着飾ってもらっている。なお、その侍女さんたちはアリシアのファンでもあるので大喜びで仕上げてくれた。
本日のアリシアは、瞳の色と同じオレンジ色のドレスを身に纏っている。あまり華美ではないものの、美少女のアリシアが着るとまるでモデルさんのようである。
「今夜はアリシアも楽しんだら?」
「うぅむ。しかしだな。キドゥーシュの教皇も来るわけだし、警戒はする」
やっぱりか。聞いた話では、ザカリィの部下たちは割と殺気立っているようで。やはり南部での教皇のイミフな接触が原因らしい。
「もちろん、リューリさまも守る」
「ありがとう、アリシア」
アリシアに頷いたところで、ぐいっと腕を引き寄せられた。
「俺の側にいればいい」
顔を上げれば目と鼻の先にザカリィの顔がある。
「お前は王弟で、臣籍降下し公爵になる。更には此度の戦の一番の立役者である“団長”だ。ずっと一緒は難しいかもしれないぞ」
「わかってる」
シーザーさんの言葉にザカリィが渋々頷く。やっぱり、大人気だもんね。
「今更そんな群がって来られても困りますけど」
と、アレンがツンとした様子で告げる。ザカリィは強大な力を持ち、魔物の血を引いているが故に色々と苦労も多かったんだろうな。
「だが、なるべく一緒にいるから」
「ありがとう、ザカリィ」
「どうしてもの時は、私に任せて」
「うん、アリシア」
「本当は俺も付いていたいが、さすがに異母弟や甥たちの相手はせにゃならん」
そう、控え室を覗きにきたお父さま。うん、キドゥーシュからの使節団にも、帝国からの代表にも、各属国からのお客さまにもラントカルテ帝国の皇族の方々は多くいる。さすがにお父さまは陛下やお義姉さまと一緒にその相手をしなくてはならないらしい。
「わぁっ、お父さま。カッコいいです!」
「そうか?単なる礼装だが」
さすがにこちらの国籍になったので帝国の軍服ではない。本日は淡い水色のスーツである。
「でも、お母さまの色です」
「そうだな」
そう言って、私の頭にぽふっと手を乗せてくれる。
「りゅ、リューリ!」
何だかそんな感じで和んでいれば。
「俺よりもカッコいいのか」
「え、いや。その、ザカリィもカッコいいよ?」
ザカリィが安定のヤキモチを焼いてくれたようで何だか嬉しいような恥ずかしいような。
「いや、俺の方がカッコいいと思う」
「あー、うん。ザカリィが一番だねっ!」
「うむ」
何とか納得してくれたみたいだ。
「大人げないぞ、ザック」
と、シーザーさんに言われて周囲に和やかな苦笑が漏れる。
本当にずっとこんな感じで楽しい時間を過ごせたらいいのだけど、そればっかり言ってても仕方がないよね。気持ちを切り替えないと。
「今回はお前も主役のひとりだ。何かあれば頼れ。わかったな」
そう、お父さまがザカリィに声をかける。
「戦神」
ザカリィは意外そうにお父さまを見上げていた。
「わかった」
何だかそんなお父さまの言葉に何だかザカリィが照れながら頷いていて。割と仲良くなってきているのかな?このふたりも。やっぱりケンカするほど仲がいいのかもしれない。
※続きは明日更新予定です※




