花と光の乙女
※誤字修正しました(/・ω・)/
【花と光の乙女】
平民として暮らしてきた少女・ユーフェミアはある日、自分の父親だと名乗る男により伯爵家に迎え入れられる。そして神殿の成人の儀式により“聖女”の力を発現させた聖女は、その聖女の力を使い、3人の仲間と共に魔物討伐に赴くことになる。
その3人の仲間とは、伯爵家の養子で勇者のエルンスト、魔物との混血の魔法使い・アレン、そして剣と魔法に堪能な王子のシャルル殿下だ。
ユーフェミアはこの3人の仲間と恋をしながら魔物を討伐していき、その過程で愛を育んでいく。
―――それが、この小説の大まかな内容だ。
何故突然こんなことを語りだしたかと言えば。思い出したからだ。前世の、地球の日本と言う国で暮らした記憶を。そして、私はこの恋愛小説にハマっていた。コミカライズも読んだ。アニメも見た。めっちゃファンだった。誰の?それは上記の登場人物ではない。
物語の悪役・ザカライアス。彼は先代王妃が何者かによって魔晶を体に植え付けられて産まれた魔物の子。そして王家を影から支配し腐敗させ、主人公たちの前に立ちはだかるラスボス!彼はまず、ユーフェミアの親族に目を付ける。突然現れた伯爵の落とし胤であり聖女に選ばれたユーフェミアに嫉妬する従姉を夢の中から唆しユーフェミアを害そうとするのが最初の接触だ。
ユーフェミアは従姉を中から惑わすザカライアスの気配に気が付き、聖女の清らかなる光の魔法でザカライアスの隙をついて従姉の中から追い出し、伯爵家の窮地を救う。
その従姉は聖女を狙ったとして有罪となり、魔物がうじゃうじゃいる国外に追放されてしまうのだ。その従姉の名前がリューリ・ランツェ。
つまりは私だ。
しかしながら、小説の内容と酷似しているこの世界だが確実に違うことが多くある。
まず、ユーフェミアは伯爵の落とし胤などでは決してない。何故なら彼女の父親は伯爵ではない。子爵家の次男だ。子爵の爵位も継いでいなければ、伯爵を継ぐ権利もない。私が20歳になるまで後見人は伯爵代理を名乗る権限が与えられるが、それも私が認め、国王陛下に許可を得た場合に於いてだ。にもかかわらず、あのリチャード・オックスという男は勝手に我が家に寄生し、伯爵を名乗っている。更にユーフェミアも勝手に伯爵令嬢の座に収まった。
ついでに言えば、ユーフェミアは私の従姉妹ではない。
私の母の妹の夫(子爵)の弟の娘という、伯爵家の血筋にも乗らない娘である。
まさかとは思うけど、小説のユーフェミア一家もこうやって伯爵家を乗っ取ったのかな。そう思うと何だか末恐ろしくなってきた。そして、そんな寄生虫を小説の中では従姉であるリューリ・ランツェが快く思わないのも納得だ。
―――そして目下最大級の難題が。
ザカライアス。
つまりは、夢の中で出会った“ザカリィ”だった。
見間違えるはずがない。てか、何故今まで気が付かなかった。思い出さなかった。私はザカライアスが大好きだったのだ。それなのに。
既に夢の中で出会ってしまった。彼が私を迎えに来ると言ってしまった。
それは事実上の私の破滅フラグではないか?
ザカリィに利用されてユーフェミアを狙い、そして国外追放される。あぁ、何てバカなことをやってしまったんだ。しかし、気がかりなこともある。
彼は“戦”に参戦していると聞いている。
はて、本来は魔物を率いるラスボス・魔王としてヒロインたちの前に登場するザカリィが何故、シュリュッセル王国側で魔物と戦っているのだろう?
ハッとして目を開けた時、私は汗をたくさんかいていた。熱は汗のおかげで下がったのか?正直時間間隔が麻痺しており、どれだけ日数がかかったのかはわからない。喉もからからだ。そして目線の先に靴が見えた。
―――靴?
誰か、そこにいるの?
「リューリ」
夢の中で邂逅した、彼の優しい声が響く。
ま、まさか。
「ザ、カリィ?」
私はからからの喉に鞭を売って、恐る恐る声を絞り出して彼を見上げた。
「迎えに来たぞ、リューリ」
彼は夢の中の姿と寸分たがわぬラスボス・ザカライアスの姿でそこに立っていた。黒いコートに黒いタートルネック、黒いズボンに靴。どんだけ黒ずくめやねんというオール黒コーデに身を包むラスボス・ザカライアス。
ただ、前世の記憶の中のザカライアスと違うのは・・・
まるでにゃんこを猫かわいがりしている時のような、優しく蕩けたようなイケメンスマイルを、私に向けているところであった。
そしてラスボス・ザカライアスことザカリィは私を颯爽とお姫さま抱っこしたのだ。
「え、」
な、何故!?
驚いて目をぱちくりさせていれば。
「リューリ、やっと迎えに来られた。リューリ、俺と結婚しよう」
え、結婚!?
迎えに来てとは言ったけれど、結婚ってどういうこと・・・?




