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【完結】最強王弟殿下の花嫁  作者: 瓊紗(旧:夕凪.com)


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マジックセーフティーボックス


「こちらです」

私が案内したのは、お母さまが生前書庫として使っていた場所だった。一応ダミーの本は残しておいたのだが、見事にすっからかんである。恐らく売り払ったのだろうなぁ。それか捨てたか。


それに部屋自体もあのひとたちが好むような広々とした場所ではない。ここにものをつぎ込む際は、お母さまが他の壁に施した転移魔法を使って他の部屋にも移動したっけ。ここにものをつぎ込んだあとはその術を解除して証拠隠滅もはかった。そう言うわけで完璧にここは守られたらしい。


「本当に何もないな」

シーザーさんは感心するように何もない壁を見つめている。セーフティボックスだけに偽装は完璧だ。偽装にも魔力を使うので痕跡を隠すのも並大抵のことではないだろう。お母さまを改めて尊敬する。


「ここに私の魔力を当てます」

魔力は人ぞれぞれ波長のようなものがあり、人それぞれ異なるという。ここには私とお母さまの魔力の波長を登録してある。恐らく近縁者であれば開けられるかもしれない。それも、私の実の子どものみになるようにお母さまが絶妙に調節したのだ。私にはとても真似できないが。しかしそんなすごい技術でさえお母さまは外に隠していた。

この技術が公になれば、お母さまに何かあった時にこのセーフティボックスの存在を疑われてしまうから。そしてその存在はお父さまやザカリィたちに知られてしまったけれど、でも大丈夫だ。彼らは信頼できるし、お父さまと夫のザカリィがいるのだから。


私が魔力を当てると、壁の中から10センチ四方の立方体が出てくる。


「この中に、全てが入っています」


「その箱はマジックバッグの応用のようなものか」

シーザーさんは不思議そうにしながらもしげしげとその箱を眺めている。


「えぇと、中のものを取り出すのは王城でのほうがいいでしょうか」


「そうだな。あちらで確認しよう。それまで君が持っていていい」


「はい」

「俺もついているのだから、リューリには視線のひとつすら注がせない」

いやいや、ザカリィ。それは無理なのでは。そもそも、いまちょうどザカリィが私を抱き寄せたことでみんなの視線が私たちに集中したけれど。


「ふんっ、それは俺の役目だ小僧」

すかさずお父さまが私を抱き寄せるように腰に手を回す。

「いや、俺の役目だ戦神っ!」


「ほら、二人ともケンカしないで!」

全くもぅ~。


「では、この後は証拠の回収に移らせてもらう」

シーザーさんがそう言いつつもみんなで屋敷の外に出れば、早速それを担当する騎士たちが集まっていた。みんなアレンやアリシアと同じ騎士服。どうやらザカリィとシーザーさんの部下の方々らしい。


「万が一と言うこともあるから、信頼のおける者たちに任せることにしたんだ。表は俺が手配した騎士団が守る」

と、シーザーさん。まぁ、金目のものは恐らく彼らがたくさんため込んでいるだろうし。下手な気を起こされてはかなわないのだろうな。

それにしても、彼らがザカリィの部下の方たち。みんな合わせて30人くらいかな?


「団長の嫁ってこの子?」

「何で戦神がいんの?」

「戦神の娘ってマジ!?」

「さすが団長。戦神の娘を嫁にする!」

「団長マジ規格外!てかかわいい子じゃないの」

何かみなさんにすごい感激されている?


「貴様ら!俺のリューリを見るな!とっとと仕事をしろっ!!」

ザカリィの喝に、部下のみなさんは苦笑しつつも応じる。


「はぁ~い」

「団長も奥さんと仲良くね~」

「戦神に負けるな団長~」

何だかとっても気さくな方たち?団員のみなさんともザカリィは仲良さそうだし。原作の孤高のラスボス魔王と呼ばれていた姿とは違う。


「貴様の部下どもは相変わらずだな」

と、お父さまがふいっと顔をそむける。


「まぁ、実力は確かなやつらだが」

お父さまもザカリィの部下のみなさんを認めているみたい。やっぱり一緒に戦場に立ってきた仲だしなぁ。


「頼もしいみなさんだね」

そう、告げれば。


「俺が一番頼もしい」

ぷくーっと頬を膨らませるザカリィ。顔が元々いいだけにそんな表情ですら輝かしい造形美を醸し出している。

それに何だかかわいくて苦笑してしまう。


「リューリ?」


「ううん、そうだね。ザカリィ」


「あぁ」

そう言うと、ザカリィが肩をぎゅっと抱きしめてくれる。後ろからのお父さまの視線がぎすぎすしているのは気のせい。うん、気のせい。


「ほら。イチャイチャしてないで、早く城に向かいましょう」

と、アレン。

い、イチャイチャってっ!

急に恥ずかしくなってきてしまった。ザカリィもなんだかんだで渋々アレンの言葉に耳を傾ける。原作では敵対関係だけど同じ魔物の血を引いている立場。


―――近くて遠い関係。アレンは最期、ザカリィと同じ魔物の血を引いているその身を滅ぼすことを選ぶのだ。もしも原作でもアレンがザカリィと共にいられれば、アレンとザカリィはその出生ゆえに彼らが抱えていた孤独を共有できたのだろうか。今のアレンとザカリィと同じように、互いを信頼し合う関係になっていたのだろうか。


いや、原作は原作。これは現実だ。今のふたりの信頼し合う関係が私は嬉しいのだから、それだけでいい。今が一番だ。


「そ、そうですね!」

さて、急ぎましょう~っ!!



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