閑話:アレンとシーザー
※アレン視点のお話です
俺はルークさんにヴィーダーシュプルフ公爵のシーザーさまを紹介してもらって以来、シーザーさまの侍従をしながら剣と魔法を教えてもらっていた。
そんなある日のことだった。
「陛下から、これを」
「これは」
シーザーさまに呼ばれた部屋に用意されていたのは。
「陛下が南部の国境付近の調査を終えられたそうだ。君の話から君が住んでいた村の家を調べた騎士が持ち帰って来たものだ。確認してくれるか」
「はい」
それは、母さんと暮らしていた家にあった、数少ない調理具や何の変哲もない雑貨などだったが、どれも丁重に持ってきてくれたようだった。
「あと、君の母上とされるご遺体も回収しているそうだ。辛ければここで待っていてもいい。私が代わりに確認してくる」
シーザーさまが俺の肩にそっと手を乗せる。
「いえ、行きます。確認に」
「そうか」
シーザーさまに付いて王城へ行けば、久々に陛下にお会いした。そして案内された安置所で、母さんと対面した。遺体は所々傷んでいたが、遺留品からも間違いないことは確認できた。
母さんはその後、王都に埋葬された。その費用はシーザーさまが負担してくれたけど、主人として当然のことだと言ってくれた。
そして、明らかになった事実もいくつか教えてくれた。あの日家に押し入ってきたのは、母さんの親族だったらしい。母さんは“魔物の子”である俺を産んだことで村八分にされ、あの家でひっそりと俺を育てていたのだそうだ。
しかし、母さんが死んだことを知った村人たちが家に押し入ってきて、お金と引き換えに俺を領主に売り渡したのだと聞かされた。
無論、それを主導した母さんの親族や、村人たちは捕らえられ、更にかかわった領主や鎧を着た領主が雇った騎士たちも牢屋行きになったそうだ。
―もう安心していい―
そう、陛下は仰ってくださった。
陛下の弟君である王弟殿下と同じ立場だから、ただそれだけで俺を守ってくれて、シーザーさまも俺に魔法や剣、読み書きなどの教育を施してくれた。
もし王弟殿下がいらっしゃらなかったら、今頃俺は陛下やルークさまに助けてもらえたのだろうか。長い修業に出ていると聞いた王弟殿下のことは、シーザーさまやその周囲の騎士たちからも聞くことができた。
強大な魔力を持った、王弟殿下。
魔晶を埋め込まれた先代正妃さまから産まれたという王弟殿下。
もしかしたら母さんもそうだったのだろうか。陛下はいろんな調査を指揮してくださったそうだけど、今では誰にもわからなかった。
だけど、きっと俺には足元にも及ばないくらいにお強い方なのだろう。
―――王弟殿下はどんな方なんだろう。
修業を終えられたら、王弟殿下にお会いしたい。
日々そんな思いが募っていく。
「あの、シーザーさま」
「どうした?アレン」
「あの、俺も強くなったら、王弟殿下に仕えることができますか?」
「ザックに?そうだな。そうなってくれたら俺も側近として嬉しいよ」
シーザーさまは公爵として、近衛騎士としてお仕事をされているけれど、元々は陛下に頼まれて王弟殿下の護衛と言う名のお守り?をされていたらしい。
「はい。いつか、王弟殿下のお側にお仕えします!」
俺は会ったこともない、話しに聞くだけの方なのに、何故か迷いなくそう告げることができた。




