閑話:アレンとルーク
※アレン視点のお話です
―――俺に治癒魔法を掛けてくれたひとは、“ルークさん”と言うらしい。
数日で起き上がれるほどに良くなったのは、やはり魔物の血を引いているからだろうか。
それともルークさんのお陰?
「君の名前は“アレン”くんと言うのですね」
「はい」
「苗字はないのですか?」
「知らない」
「ふ~む。生まれ育った土地の名前は?」
「えっと、母さんは“テッサ”って言ってた」
「やはり国境にある土地の名ですね」
「国境?」
「えぇ。このシュリュッセル王国の東には、宗主国であるラントカルテ帝国があります。そしてシュリュッセル王国の南には同じラントカルテ帝国の属国があるのですよ。南部にはその国との国境があります。あそこの国境地帯と西部の国境地帯は、特に魔物の被害が大きく出る場所です。よく頑張りましたね」
「そんな土地で、母さんはどうして俺を産んだの?」
「う~ん、アレンくんの話から察するにお母さまは人間で、お父さまが魔物と言うことでしょうか」
「父さんのことはよく知らない。母さんは俺と同じ」
「では、恐らく父方が魔物の血を引いていたのでしょうかね?ひとと交われる魔物の正体はわかりませんが。まぁ、ウチの弟も産まれちゃいましたからね。産まれちゃったものは兄としても守りませんと~」
「弟?ルークさんの?」
「えぇ。ウチの弟も半分は魔物ですよ。今はちょっと修業に出してますけど」
「俺と、同じ」
「えぇ」
「陛下にも、その弟がいるって聞いた」
「あ、それは私の弟でもあります」
「へ?」
「え~と、詳しく話していませんでしたね。私は“3”人兄弟なんですよ。一番上が陛下、2番目が私で、3番目が魔物との混血の弟です。ザックって言うんですよ。仲良くしてあげてくださいね。あ、でも今は修業に出ているので、帰ってきたらですけど」
「俺も・・・」
「はい?」
「俺も修業したら、強くなれるの!?」
「ん~、そうですね。体は丈夫そうですし、魔力もあります。鍛えれば伸びる可能性もありますよ」
「・・・っ」
「もし興味があるなら、師を紹介しましょうか?」
「し?」
「剣や魔法を教えてくれる先生です」
「いいの?」
「もちろん。素質のある子は大歓迎ですよ」
ルークさんは、今まで襲ってきた人間たちのようなひとではないとわかった。そして、俺と同じ立場のひとがいる。だから、俺も強くなれるのかなって思ったんだ。
俺が弱かったから、抵抗もできなかったから母さんは、今もきっとあの村にひとり取り残されている。
「強くなりたい。母さんを迎えに行きたい!」
「アレンくんが話してくれた、お母さんのことですね。そちらは陛下が動いているので大丈夫ですよ。でも、アレンくんが強くなりたいというのなら、協力しましょう」
そう言うと、ルークさんは俺の頭を撫でてくれた。
前に、母さんがしてくれたように。
***
問題なく歩けるようになると、ルークさんがひとりのひとを紹介してくれた。
「じゃ~ん。こちらはシーザー・ヴィーダーシュプルフ公爵!ウチの弟が修業に出る前に主にお守りを任せていた魔剣士ですよ~っ!」
「誰がお守りだ!貴様ら兄弟は揃いも揃って!!」
へらへらと笑うルークさんに対して、長い名前のひとはくわっと顔をこわばらせていた。何だか恐そうだなと思っていたけれど。
「まぁ、魔法と剣を習いたいというのなら、教えてやる」
長い名前のひとは俺の頭にぽふんと手を乗せて、優しく微笑んでくれた。
「ヴィーダーシュプルフ公爵は独身で子どももいないので寂しがり屋なんですよ~。かまってあげてくださいね~」
「くぉらっ!変なことを吹き込むんじゃないっ!」
ルークさんに対しては相変わらず恐い顔をしていたけれど、不思議と仲が悪そうには見えなかった。




