戦神
―――ラントカルテ帝国の“戦神”。
最早伝説と言っていいほどのひとで、ラントカルテ帝国一の武人であるが故に戦神と呼ばれる。そして彼は、皇弟殿下でもある。
皇位継承位には興味を持たず若い頃から戦場で身を費やしてきた彼は、今も戦場を巡り異母兄である皇帝陛下のため、帝国のため、帝国が守る属国のため、民のために戦い続けてきた猛者である。
ザカリィが戦神と呼んだそのひとの容姿を見て、私は息を呑んだ。
白い髪に、鋭いローズレッドの瞳。陽の光をはじくかのような白い肌に。そしてその体躯は長身痩躯である。戦神と呼ばれるからにはムッキムキな感じを思い浮かべたのだが。あれ?そして何だか見たことのあるような見た目。
「リューリ」
あの、どうして帝国の戦神さまが私の名を呼ぶんだろう?いや、何となく気が付いているんだけども。
「手を出せ」
「・・・はい」
ずかずかと近づいてくる戦神に、私は躊躇いもなく手を差し出す。
不思議なのは何だかザカリィが妙に大人しいこと。
さすがに相手が皇弟殿下だからだろうか。
そして私の手と戦神の手が重なり合えば、それは魔法文を互いにやり取りするための光の印が重なる。
「お、お父、さま?」
恐る恐る戦神と呼ばれた男性を見上げる。
「あぁ、リューリ。やっと迎えに来られた!」
そう言われて、私は抱きしめられた。
長身痩躯だがその胸元はよく鍛えられていることが分かる。
「あの、お父さま」
は、本当に戦神=皇弟殿下??
「リューリ、お前は今日付けで戸籍上も皇弟である俺の娘となった」
は?お父さまの、娘=皇弟殿下の娘???
「どう言うことだか全く話が掴めないんですけど?」
「これまでの功績とシュリュッセルの王弟の監視を盾に兄上を脅して、リューリを皇籍に入れた上でシュリュッセル王国での権威をもぎ取った」
ん?あれー?お父さま、今すっごいこと言ったような気がするんだけれども。
「あの、まず私が皇籍に入ったって聞いた気がするんですけど」
「あぁ、入れた。俺の娘として。だが同時に俺と共にシュリュッセル王国での権威を獲得したことで帝国内での皇位継承権は消滅している」
「それは安心かもですが」
面倒なことに巻き込まれなさそうだし。
「俺とリューリはシュリュッセル王国の王族のそうだな、相談役の立場だ」
何それ、超イミフー。
「家名はシュヴェーツをもらった。役職名はお前が考えろ、ラーシュ」
あの、お父さま。今英雄王陛下のこと呼び捨てにしませんでした?いや、確かに身分はお父さまの方が高いし。
でも投げやりすぎる気が。
「あぁ、そう言うわけだ。リューリ嬢は皇族。つまりは王弟のお前と婚姻してもなんら問題が無くなる。むしろ、ウチはラントカルテ帝国の血を引く皇女を迎えられる。リューリ嬢、どうする」
爵位。お母さまから受け継ぐはずだった爵位。
「へ、返還します」
歴史ある名家ではあるけれど、お母さまもランツェ伯爵家の家名を大事にしてきたけれど。私にとって大切なのは、お母さまとの記憶とザカリィなのだと思う。だから、その最善を選びたい。このままザカリィを見捨てるような選択肢は選びたくなかった。
「わかった。では、そのランツェの名を残し、それを昇爵させてザックに授ける」
「えっ!?」
「ランツェ公爵家。王弟であり今回の戦の一番の功労者に贈る褒美だ」
ランツェの名が残るのか。
「すまんな。昇爵をさせないとザックに継がせられないが、同時に事前に昇爵させようにもその理由がない」
「わ、わかっています。それにありがとうございます」
国王陛下に頭を下げた。お母さまの思い出と共に、その名が残るだなんて、そんな幸せなことはない。
「あぁ、リューリと一緒にいられる」
私は、ザカリィに後ろから優しく抱きしめられた。
急に嫁に迎えるとか言われたけど、ザカリィの腕の中が心地よい。そして一緒になれるという事実がこんなにも嬉しいのだ。
あ、そう言えばランツェ伯爵家を乗っ取っていた彼らはどうなったのだろう?いや、それよりも今はザカリィと一緒にいられることの方が嬉しいし・・・
がばっ
あれっ?
何故かザカリィから引き離されたような。
「娘にベタベタ触るなっ!!」
お、お父さまーっ!?何故かお父さまに抱きしめられている私。
「五月蠅いっ!リューリは俺の妻だ、戦神!」
そして私を取り戻そうとするザカリィ。
うおぉぃっ、取り合いやめて―――。
続きはまた明日(/・ω・)/




