王弟殿下の凱旋
「あっ、あの、ザカリィ!一体どこへ!」
「あぁ、すぐにリューリを俺との愛の巣に連れて行くから、しばし待ってくれ」
いや、愛の巣って何だぁ―――っ!!!
私は王城に着くなりザカリィに再びお姫さま抱っこされて王城の豪華な回廊を進んでいた。
「あの、せめて降ろしてっ」
余りの豪華絢爛な風景とザカリィや神官長さまに頭を下げる城内のひとびとにふるふると震えながら訴えれば。
「寒いのか?ほら、もっと俺にくっつけ。温かくなる」
人肌であったまれと!?そしてぎゅぅっと私の体を自分に押し付けるようにして抱きしめてくる。
「ひぁっ!?」
「まぁまぁ、あれも似たんですよねぇ~」
のほほんと笑ってないで助けてください神官長さま~~~っ!
「私は弟のこんな幸せそうな姿を見られて本望です~」
このひと絶対放置する気だぁ―――っ!!!
そして荘厳な扉が開け放たれる。
「こ、ここは、どどど、どこ?」
まさかここはザカリィの宮?いや絶対違うでしょ!!じゃぁ、どこだ!大きなパーティーホール!いや、それはそれで困るけれど!
そして、騎士服を着たひとたちの間を抜け、ザカリィが悠然と玉座の前に立つ。
あうぅっ、玉座の周りには偉そうなひとたち、そして目の前には。
美しいさらさらの銀色の髪に、神官長さまと同じ群青色の瞳を持つがその瞳は切れ長。端正な顔立ちに雪のように白い肌。やっぱりお美しすぎるっ!!
このひとが、ラーシュ=エリク・シュリュッセル陛下。シュリュッセル王国の英雄王陛下だ。
更にその隣にはダークブラウンの髪にブラウンの優し気な瞳の女性が座っている。シュリュッセル王国王妃殿下・ゼフラさま。彼女は天才的な魔法使いでもあるという。
どうしよう、このシュリュッセル王国のツートップの前で私、お姫さま抱っこをされている。あぁ~~~っ!?怒られない!?これ陛下と王妃さまに怒られない!?
「兄上、今帰った」
「あぁ、魔物の大規模討伐並びにリューリ・ランツェの保護及び謀反者の掃討、ご苦労だった」
声もきれいすぎるわっ!ザカリィに似ていい低音ボイスっ!!
はぁ、それにしても寄生虫どもが謀反者、ね。まぁ、当然の認識だろうなぁ。
「あぁ」
ザカリィが静かに答える。
でも、2年間戦場を駆けたザカリィに対して、随分と淡白な反応のような気がする。
―――本当に、ザカリィはこの陛下と添い寝されていたんだろうか。
「言いたいことはたくさんある、が」
陛下がそこで言葉を一旦切る。
「即刻俺とリューリの婚姻を認めろ!ここにはルーク兄上もいるから問題ない!」
いや、問題あるわぁっ!いきなり陛下の前で何を言い出すのぉ―――っ!?あぁ、終わったぁ、終わったぁ―――。
「わかった。後で書類を出しておけ。受理する」
え、受理してくれるの?
「保護したリューリ嬢にこれ以上無理はさせられまい。すぐに休ませてやるように」
「わかった」
ひょっとして、私のために?
「後は、副団長に一任する」
「うん、それがいい」
と、互いに頷く兄弟。あぁ、結局副団長さんに丸投げ―――。いいんだろうか、これでいいんだろうか。
しかも隣で王妃さまが失笑しているし。これはその、ある意味息の合った仲良し兄弟と言うことなのかな?
「私はもう少しここに残りますよ。ウチの子とリューリさんのお世話はアレンとアリシアに任せます。後はこちらでやっておきます」
あぁ、神官長さまもこちらに残ってくれるんだ。何だか副団長さんの過労が心配だし、良かったかも。
―――
「ここが俺の宮で、リューリと俺のベッドがここだ」
ベッドがひとつしかない。しかも、前世で王族とかが寝てそうな豪華な天蓋付きベッド!しかし、居候の身で贅沢を言うわけにはいかない。
「リューリ。今夜はここで寝よう」
マジで、ここで寝るの?
「俺はリューリが一緒に寝てくれないと寝られない。戦場では大変だった」
あぁ、そうだよね。戦場じゃぁ安心して寝ることもできなかったよね。
「団長が誰かと一緒じゃないと寝られないと我儘を言うので」
「主に俺と副団長が交代で隣に寝ていました」
そう、アリシアとアレンがそれぞれ告げる。
うえぇっ!?ザカリィの添い寝癖はそこまで深刻なの!?
「寝不足だと機嫌が100割増しで悪くなるので」
と、アリシアが淡々と告げる。
100割増しってなに!?10割増しならわかるけど、100割増しって何!?不機嫌マックスがさらに+100%増えるってことか?
「その分暴れますが周りが大変ですので」
と、アレンも続ける。
「この団長の嫁になれる方がいらっしゃるとは青天の霹靂です。どうか、夜は添い寝を。それが世界の平和につながります」
と、更にアレンがとんでもないことを言い出す。世界を揺るがす魔王として蹂躙しつくしたラスボス・ザカリィを知っている私としては、聞き逃せないセリフである。
せ、世界の平和のためなんだぁ~~~っ!
「そ、添い寝・・・だけだから、ねっ!?」
「あぁ、嬉しい。リューリ」
私の世界の平和を守る決意も、アリシアの真剣な眼差しも、アレンの必死な形相もものともせず、ザカリィは相変わらずでろっ甘に私の腰を腕で支えながら、縦に抱きしめてくる。
わぁ、世界って平和だなぁ。
「とにかく、まずはリューリさまのお着替えです」
「ザカリィさまも王弟っぽい格好にしますので。さ、早く」
そしてアリシアが私を、アレンがザカリィを引っ張る。てか、王弟っぽい格好って何!?でもやっぱりそのオール黒コーデは絶対違うよねっ!!?
「待てっ!リューリは俺とっ!」
「王妃さまに怒られますよ」
アレンに腕を引っ張られて抵抗するザカリィに、アリシアがぴしゃりと告げる。
そしてザカリィは力なくアレンに引っ張られて行った。
王妃さま、やっぱり最恐!?めっちゃ優しそうだったけども。
さすがは国母。英雄王陛下の妻。すっごい魔法使い。
でも、それ以上の何かを持っている気がする。




