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【完結】最強王弟殿下の花嫁  作者: 瓊紗(旧:夕凪.com)


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お父さまからの文



―すぐに迎えに行く―


お父さまからの突然の槍文やりぶみに括りつけられていた手紙にはひと言、それだけが書かれていた。


「なん、だとっ!?」

それを見て、ザカリィから闇、じゃない病みオーラが駄々漏れである。うおぉっ!?


「リューリは既に俺のものだっ!!」

くわっ!!

いや、めっちゃ顔の影を濃くしてるぅっ!!


「俺からリューリを奪うというのなら、殺す!!」

病みオーラがパネェ。


「ちょっと落ち着きなさい、ザック。人違いかもしれないでしょう?リューリさん。それはリューリさん宛てだとは思いますが、どなたからの文なのか心当たりは?」


「えっと、その。お父さま、からです」


「えっ!?」

「おとうさまとは何だ」


「いや、団長、父親のことですよ。団内で散々お教えしたでしょう?どうやって子どもができるのか。まずはお父さんとお母さんが・・・」

そ、そこからぁっ!?まさかのそこから!?てか、最前線の魔物討伐の裏側で何故その会話をしていたんだ!?


―――でも、ザカリィには父親がいないとされている。

ザカリィは父親を知らないのだ。


「俺には父親はわからん」


「ほら、団員にもいたでしょ?アルファさんとかベータさんとか」


「あぁ、それはわかる」

でも、感覚的にわからないということかな。


「ん~、そうですね。例えるならば陛下がお父さん代わりで、私がお母さん代わりですね~」

神官長さまが、お母さん。何か似合ってる。人類最強っぽい部分も含めて。


「と言うことは、リューリの兄上的な存在、なのか!?」


「いや、そう言うわけでは」


「ならば、殺したらだめっ!」

そうじゃなくても殺したらダメだと思うけど。


「リューリは俺のなのにっ!」

がるるるるっと、唸り声を上げ始める。

まぁ、お父さまにいきなり殺意を向けられるよりはいいのかな?いや、これで本当にいいのだろうか。陛下ー。こう言ったらなんですけど陛下ー。ちゃんとそこら辺を教えておいて欲しかったぁ―――っ!もしくは神官長おかあさん!!


今ものほほんと微笑んでるだけだし!


「と言うか、このような魔法文を届けるなんて、リューリさまのお父さまはどのような方なのでしょうか」


「えっと」


「大丈夫ですよ。リューリさんは大切な弟のお嫁さんですからね。何があっても力になりますよ」


「神官長さま」


「“お義兄さま”でもいいですよ」


「いえ、さすがにそれはっ!!」

あははは~と再び笑う神官長さま。どこまで本気なのかわからない~。


「あの、お父さまは帝国の方なのです」


「帝国の?」

神官長さまがきょとんとする。


「その、軍人の方です」


「お名前は?」


「姓はわかりませんが、名は“オーヴェ”と言います。見た目は多分、私と同じ白い髪にローズレッドの瞳です」


『・・・』

何だろう。ザカリィもアレンも神官長さまもきょとんとしている?


「いやいや、まさか」

「でも、わかりませんよ?年齢的には」

「でもこの魔力・・・」

三人とも、どうしたんだろう?


「あの、帝国の軍人さんもたくさんいらっしゃるので」


「まぁ、それはそうなんですが」

何だろう、神官長さまのその微妙そうな笑みは。


「もう少し、詳しくお伺いしたほうがいいかもしれませんね」

「リューリがとられないようにすぐに連れ帰る!!」

と、ザカリィ。連れ帰るって・・・


「とにかく、リューリさまを城に保護しましょう」

と、アレン。やっぱり城か。城だよね。

ザカリィは城で暮らしているわけだし。


「となれば早速城へ」

神官長さまが言いかけたその時だった。


『神官長さまぁっ!!』

この甲高い声は。


「助けてくださぁいっ!この横柄な騎士どもが聖女の私をぉっ!」

うわぁっ、騎士のひとたちに拘束された寄生虫一家と使用人たちが護送されていく途中なのだろう。その途中に神官長さまの姿を捉えた聖女・ユーフェミアが哀れに髪を振り乱しながら叫んでいた。


「何ですか騒々しい」

神官長さまは呆れ顔であった。そして。


「悪女!何で悪女が神官長さまと一緒なの!?そいつは悪女なの、神官長さま!騙されないで!」


「何を言っているのか、あの女」

アレンが私たちを守るように前に出れば。


「やだっ!アレン!アレンじゃない!」

ユーフェミアの目が輝いた。

ユーフェミアもアレンを知っている?顔見知りなのか、それとも・・・


「あなたのことはずっと見てきたわ!知っているの!」


「はい?」

アレンは何のことかわからずに眉をしかめる。

何だか知り合いではなさそう。“何だあの女”と言う目で睨みつける。


「あなたが魔物の血を受け継いでいるからずっと迫害されてきたんでしょう!?知っているのよあなたの悲しみも、苦しみも!だから私を助けて!私があなたをきっと幸せにしてあげる!あなたは私と一緒になって幸せになれるの!」

それは、どうだろう?寄生虫一家の一員になってアレンが幸せになれるとは思わないし、原作のシナリオ通りに行ったらアレンは自ら聖女に殺されることを選んでしまう。


「神官長さま!」

その時、ひとりの少女がこちらにやってきた。長い赤い髪を持つ凛々しいオレンジ色の瞳の少女は軍服ではあるものの、神官が身に着けるペンダントを首から下げている。あの方は神官なのだろうか?


「あれは聖女として扱うべきでしょうか」


「いえ、神殿はそう認めてないので関係ありませんよ」

神官長さまがにっこり微笑むと少女はこくりと頷ききびすを返し、副団長さんのところへ向かった。


「神官長さまからの言質を得ました」

「なら問題ないな。おいっ!」

副団長さんが聖女・ユーフェミアの前に仁王立ちになる。


「今のはどう言う意味だ、女!」


「な、何よ、あなた!あなたなんてモブは知らないわ!」


「何を言っているかはわからんが、アレンは俺の大事な部下だ!それを侮辱するなら許さないし、俺たちは2年間互いに命を預け合ってきた。俺たちがアレンを迫害しただ?そんな戯言をほざくなら、覚悟することだなっ!」

そう言うと副団長さんが思いっきりユーフェミアを地面に投げつけた。


「連れて行け!」


『はっ!』

副団長さんに呼ばれた団員はみんな手荒く彼女を引きずって護送馬車に押し込んでいく。


「いやぁっ!やめて!助けてよぉっ!アレン~~~っ!」

最後までユーフェミアはアレンの名を呼んでいた。アレンが彼女を見る目は嫌悪に満ちている。


「全く、何なんでしょうあの女」


「そもそも、団長がザカリィなのにそんなことあるはずがないでしょうに」

へらへらと笑う神官長さま。


それは、ザカリィもアレンと同じように魔物の血を引いているからであろう。

そもそも、このふたりはどうやって出会ったんだろう?何となく、気になった。


「さて、私たちも王城に帰りましょうか。あぁ、アリシア、こちらに」

神官長さまが呼ぶと、先ほどの赤髪の少女がこちらへ駆けてきた。年齢は私と同じくらい、かな?


「どうした、ルーク兄上」


「いや、ほら。この子にも一緒に来てもらおうと思いましてね。あなた自分の宮に侍女も入れないでしょう」

え?侍女を、“入れない”?王城で暮らす王弟殿下なのだから、普通に侍女に囲まれているものかと。


「リューリさんのためにも同じ女性がいた方がいいでしょう。あ、副団長殿、アリシアお借りしますね」

と神官長さまが告げれば、副団長さんが軽く頷く。


「ルークさまがそう仰るのであれば」

そう言って、副団長さんは他の団員さんたちと護送を開始する。


「アリシア、アリシアはリューリさんのお世話をお願いしますね」

えっ、私!?


「はい、神官長さま」

アリシアさんが騎士の礼で答える。やっぱりこのひと神官じゃなくって騎士?でも神官のペンダントを首にかけているし。


「リューリのことは全て俺がる。他はいらない」

と、ザカリィが私を抱き寄せる。


「着替えや入浴はどうするんですか」


「着替えは手伝う。風呂も俺が一緒に入ればいい」

今さらっと言いのけたザカリィ。いや、さすがに着替えをザカリィに見られるのは。それにお風呂はせめて別々にしてほしいっ!!


「王妃さまに怒られますよ」

にっこぉっ。

その神官長さまの笑顔が恐い。


「・・・ぐっ」

何故かザカリィが王妃さまに屈したっ!


ひょっとして、王妃さまが最恐なんだろうか。何だか神官長さまよりも最恐感を覚えた。

とにもかくにも、私たちは馬車に乗って王城へと向かったのだった。


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