魔物討伐団団長
「基本、神殿は神官よりも弱い聖騎士は雇い入れません」
な、何言ってんだ神官長さま。
「あの、神官と言うのは神に仕えるお仕事で、たくさんお仕事はあるかと思いますが主にヒーラー系の方々では?」
「えぇ、純粋なヒーラーも多くおりますし、中には体の弱いものもおります。しかしその神官たちも含めて、戦場でも自分の身を自分で守れるくらいの神官は日々育てています」
な、何―――っ!!?は、初耳なんだけどっ!
「まぁ、優秀なのはザックに付いていかせましたが」
「あぁ」
ザカリィも頷く。ラスボスザカリィに付いて行ける神官。―――絶対ヤバそう。
「なので聖騎士のレベルはかなり高いんですよね。他の魔物討伐の残党処理や他の不正、陛下の影の護衛と色々業務が重なって、ハードルが上がってしまいまして。すみません、私のせいですね」
「いえ、神官長さまのそのスタイルのおかげでザカリィにいい神官が付いてくれたんですから」
「あぁ、将来の義妹が優しくてお兄さん嬉しいです」
そ、そうですか?
「まぁ、王族から籍は抜いているので、“義妹”と呼ぶのはあなたの許可があれば、ですけどね」
「あの、私は別に構いませんが」
「では義妹で」
「むっ」
何故ザカリィがむっとするのだろう?
「リューリの全ては俺のものであってほしい」
え?義兄ポジションも?それはさすがに無理なんじゃ。
そう思っていれば、神官長さまのデコピンがザカリィにヒットする。
「ぐぬぬ」
「あはは~」
ダークオーラだだもれなザカリィにのほほんと微笑む神官長さま。
「とまぁ、そう言う理由もありまして、影でも手練れなものを派遣して彼らの罪を調べ上げ、なおかつあなたをガードしていたというわけです」
「そうだったのですね」
「聖女(仮)も関わっていたため、どうしても慎重にならざるを得なく。随分と辛い思いをさせましたね」
「あ、いえ。その守っていただいたのですよね」
そう言えば、いつからかご飯がましになってきたような。急に正統な後継者の私の命が惜しくなったのかと思ったけれどパンが柔らかくなった気がする。あれは影さんのおかげだったのかもしれない。
「あと、聖女もろとも元聖騎士どもも木っ端みじんにするために陛下がザックにはっぱをかけたんですよ」
「え、はっぱ?」
「ん。即刻片付けて戻って来いと言われた。俺は国の魔物を討伐した後、帝国や他の属国の魔物討伐にも加わっていた」
ことはウチの国だけじゃない。他の勢力が足りなければそちらにも加わる必要が出てくる。帝国から打診を受ければなおさらだ。
「今回は“戦神”にも力を借りたから、戦神に付いて怒涛の如く」
「怒涛の如く?」
「殲滅した」
殲滅。何だろうその言葉の響き。やっぱりさすがはザカリィ。ラスボスっぽい。
「戦神さまにもご迷惑をおかけしたのでしょうね」
「いや、戦神も急いでいたらしいからちょうどよかった」
え?戦神さまも?魔物討伐は早期解決のほうがいいのだろうけど。何だか気になる。
「で、仕上げはザックの討伐団に任せました」
「討伐団?では、先ほどのグレーの髪の方が団長さん?」
「あれは副団長だ」
え、副団長?
そう言えば、さっきアレンがザカリィのことを“団長”って。
「ザカリィが、討伐団の団長!?」
「あぁ」
「ウチのザックなら実力も折り紙つきですからね」
まぁ、ラスボスだからねー。でも、何故か神官長さまからラスボス臭を感じる。
「そう言えば、それも外そう」
ザカリィの手が私の手首をそっととった。
そう言えば、腕輪をはめられて魔法を使えなくされていたのだ。
「俺以外が与えたものを身に付けているなんて、そろそろ耐えられない。本当は服も脱がせたい」
「脱がせるのは勘弁して」
「全く、兄弟ですよね~」
ザカリィの衝撃思想もそうだけど、神官長さまがもっと恐ろしい言葉を吐いた気がする。その兄弟って神官長さま?それとも英雄王陛下?いや、不敬になったら困るから深く考えるのはやめよう。
ザカリィが少し力を込めれば、腕輪は簡単に外れた。
「わぁ、すごい。こんなに簡単に」
「ザックが規格外なんですよ。我々ならば手順を踏まないと無理ですね」
「ザカリィは、すごいんだね」
「あぁ、俺はいつでもリューリの一番でありたい」
何だか会話が噛み合っていない気がする。
―――その時、不意にふたりが空を見上げ、馬車の入口にアレンの姿が目に入った。
「ザック」
「ここを頼む」
その声と同時にザカリィが馬車を飛び降りる。
「あなたはここに」
私は神官長さまの腕に制されてしまった。
「心配するな」
ザカリィが手を天に高く掲げると、先ほどの黒いバチバチオーラが馬車の周りを囲う。
そして衝撃が来るっ!
ドオオオオォォォォォォォンッッ!!!
ひぇぇ~~~っ!!?何これぇっ!!?
神官長さまに抱きしめられ、不安の中10秒ほど揺れに耐えれば。
「もぅ、大丈夫」
ザカリィの声がした。
神官長さまがゆっくりと私の抱擁を解けば。
「でも、リューリに触れるのは俺の権利だ」
「あなた心狭すぎますよ?」
何だかまたむくれているザカリィに再びぎゅむっと抱きしめられ、神官長さまが微笑んでいる。
「本当に、神官長さまじゃなきゃ今頃団長の極大魔法に当てられてますね」
と、アレン。
えぇぇっ!?何か恐ろしい言葉を聞いた気がっ!?
「ふふふふふ~」
そして特に気にしていないらしい神官長さま。
「あの、今のは何が?」
「魔法文のようです」
魔法文!?今のが!?私に魔法文を届けるとしたら一人しかいない。
「お父さま?」
「魔法文に槍を付けて来たようです」
と、アレンが長い槍を掲げる。その柄には矢文のように紙が結ばれていた。
矢文を魔法文の原理を使って飛ばすならちょっとファンタジーっぽくてカッコいいけれど、何故槍!?一歩間違えれば大事故じゃないっ!!
お父さま~~~っ!!!
私のお父さまは帝国の軍人で、、、
一体軍で何をしているひとなんだろう。
―――何だか、不安になってきた。




