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第5話 ブラコン、合法化される

「……本当のことを話すわ、エリー」


 母は両手で顔を覆い、観念したようにボロボロと涙をこぼした。その隣で父は気まずそうにそっぽを向き、耳まで真っ赤にしている。


「あなたの本当のお父さんは……そこにいるパパじゃないのよ」


「え……」


「本当のお父さんは、お隣の水瀬の叔父様、佳乃ちゃんのパパなの。私たちが結婚する前、ちょっとした……いえ、かなり泥沼の恋愛沙汰があってね。結局、お腹にあなたがいたまま、私はこの人と結婚したの。だから、あなたと佳乃ちゃんは本当の『異母姉妹』なのよ」


 頭を鈍器で殴られたような衝撃が走った。


 つまり、あの外面だけ天使で中身は腹黒悪魔の水色のワンピース――佳乃と私が、本当の姉妹だというの?


「じゃあ……」


 私は喉の奥から声を絞り出した。


「徹お兄ちゃんは? お兄ちゃんのお母さんは、パパの前の奥さんよね?」


「あ、ああ……そうだ」


 父が消え入りそうな声で、顔を背けたまま答える。


「徹は、私と前の妻の間に生まれた子だ。そして……エリー、お前は私の弟の娘、つまり姪だ。だから、お前と徹は……兄妹ではない。正確には従兄妹(いとこ)同士だ」


 リビングの空気が、音を失った。


 私と徹お兄ちゃんが、従兄妹。


(……ってことは)


 ガガガガガ、と頭の中で何かの歯車が猛烈な勢いで回り始めた。


 ショック? 悲しみ? 絶望?


 そんな殊勝な感情は、私の脳内から一瞬で吹き飛んだ。代わりに湧き上がってきたのは、強烈すぎる、ピンク色に染まった恋の暴走だった。


(ってことは……私、お兄ちゃんと結婚できちゃうの!?)


 これまで「妹」という立場に縛られて必死に抑え込んできた、こじらせまくったブラコン感情が、「合法」という免罪符を得て、一気に天井を突き破った。


 なんだ、そういうことだったのね。神様、ありがとう!


 市民プールをドタキャンされてあんなに腹を立てていたのも、ただのわがままなんかじゃない。男として大好きなお兄ちゃんを、他の女の影に嫉妬していたからだったのよ!


「エリー? 大丈夫? ショックなのはわかるけど……」


 心配そうに覗き込んでくる母を、私はキッと見据えた。


「パパ、ママ。私、お兄ちゃんを連れ戻してあげる」


「えっ、本当か!?」


「ええ。ただし、条件があるの。お兄ちゃんをおじい様に無事お渡しした後……お兄ちゃんを私の『旦那様』にするわ!」


「は、はあ!?」


 両親が同時に口をあんぐりと開けた。


「いいわよね!」


「え、ああ……」


 呆然とする両親を無理やり頷かせ、私は自分の部屋へと駆け上がった。待ってなさい、お兄ちゃん。可愛い妹のフリは今日で終わりよ。


 これからは一人の女として、あなたを絶対に逃がさないんだから!


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