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第4話 誕生日の謎

「エリー! 頼む、この通りだ! 徹を見つけてくれ!」


 佳乃が去った直後、ソファーから飛び起きた父が、私の両手を掴んで文字通り縋りついてきた。母も涙でマスカラをドロドロに溶かしながら、


「お願いエリー、徹を説得して、おじい様に取りなしてちょうだい! あなたから言えば、あの子だって……!」と狂ったように叫んでいる。


 そのあまりのみっともなさに、かえって私の頭がスッと冷えていくのがわかった。


「……嫌よ」


 私は父の手を冷たく振り払った。


「な、何を言い出すんだエリー! 我が家が破産したら、お前の服も学費も全部なくなるんだぞ!?」


「パパたちがおじい様を怒らせたんでしょう? 自業自得よ。それにお兄ちゃんをサウナみたいな部屋に閉じ込めて家出させた挙げ句、私にも何も教えてくれなかった。……私、今すごく後悔してるの。お兄ちゃんにひどいことしちゃったって。それなのに、自分の都合で連れ戻せだなんて、虫が良すぎるわ」


「エリー、そんな冷たいことを……!」


 泣きつく母を見下ろしながら、私はずっと胸の奥でくすぶっていた「パンドラの箱」に、ようやく手をかけた。実家が沈みかけている今、もう遠慮する必要などない。


「ねえ、パパ、ママ。お兄ちゃんを探しに行く前に、一つだけ、どうしてもハッキリさせておきたいことがあるの」


「な、なんだよ、こんな時に……」


 私は腕を組み、冷徹な視線を二人に突きつけた。


「パパとママの結婚記念日って、十月十四日よね。……じゃあ、どうして私の誕生日は、その翌年の四月二十五日なの?」


 二人の身体が、同時にビクッと跳ね上がった。


「……お前は少し、予定より早く生まれたんだ。未熟児だったんだよ」


 父が泳ぐ目で、あからさまに動揺しながら言い訳する。


「嘘よ。私、母子手帳も出生時の記録も全部見てるもの。三千二百グラムの、どこからどう見ても立派な満期産児だったわ。逆算すれば、ママはパパと結婚する『三ヶ月も前』に私を妊娠していたことになる。それなのに、親戚の人たちが私の出生の話になると、いつも歯切れが悪いのはなぜ?」


 私は一歩、二人に詰め寄った。


「本当のことを言って、パパ。私は、本当にパパの子なの?」


 リビングのエアコンの低い音が、妙に大きく響いた。


 両親は幽霊でも見たように青ざめ、お互いの顔を見合わせた。長い沈黙のあと、ついに観念したような表情になり、真実を白状し始めたのだった。


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