表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
14/16

第14話 本気のビンタ

 パチン――ッ!!!


 冷え切ったリビングに、乾いた激しい音が響き渡った。


 気がついたときには、私の右手が空を切っていた。


 私は、大好きな、世界で一番愛しているはずのお兄ちゃんの頬を、思い切りビンタしていた。手のひらがジンジンと熱い。お兄ちゃんの白い頬が、瞬く間に赤く腫れ上がっていく。兄は殴られた衝撃で顔を横に向けたまま、信じられないものを見る目で硬直していた。


「お母さんのことを悪く言わないで! 何も知らないくせに……!」


 私の目から、今度は演技ではない本物の涙がボロボロと溢れ出していた。悔しくて、悲しくて、やりきれなくて、胸が引き裂かれそうだった。


 そうよ、ママが遺産目当てで動いているのは事実だわ。


 でも、すべてはお兄ちゃんがエアコンを奪われたくらいで家出なんて突飛な真似をしたせいよ。おじい様が本気で怒って、一族の勢力図をひっくり返そうとし始めたから、すべてが狂い始めたの。


 お兄ちゃん、あなたのせいなのよ!


 私は心の中で叫んだ。

 何も知らないくせに、わかったような顔で冷たく突き放さないで! 私がこの家の恐ろしい秘密と、実家の崩壊にどれだけ一人で怯えていたと思っているの!?


「エリー、お兄さんがかわいそうよ」


 隣から、佳乃が咎めるような、どこか突き放した冷徹な声を上げた。


「佳乃は黙ってて!」


 私は涙を拭いもせず、この最悪の乱入者に怒りをぶちまけた。


「エリーが悪いんじゃない、ちゃんと説明しないから。徹お兄さんは何も知らないのよ」


 佳乃は一歩前に出ると、私と徹の間にすっとスマートに割って入った。その大人しそうなタレ目は、もはや怒り狂っている私など一瞥もせず、呆然と頬を押さえている徹だけを、憐れむようにじっと捉えていた。


「え、ぼくは……何も知らない?」


 徹が、赤くなった頬を押さえたまま、掠れた声で呟く。


「ええ、何も。お兄さんはただの被害者。この家の中で、一番残酷に騙されていたのよ」

読んでくださりありがとうございます。「おもしろい」とか「よかった」という、一言でも感想を残していただけると嬉しいです。よろしければ、☆のポイントとリアクションのクリックをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ