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研究室はまだまだ閉鎖中

まだ太陽が高い位置にあって、日差しがジリジリと照り付けている。

「常夜街って、時間が麻痺しますね」

遠くの時計台が17時を指している。

「辻馬車を呼ぼうか?」

「いえ、そんな贅沢は必要ありません。今日は本当にありがとうございました」


「また、どこかに行こうよ。今日は楽しかったよ。今度は、クリスティーナの弓矢の腕前をちゃんと見せてよ?」

「わかりました」

「近いうちに騎士学科の練習場に呼ぶから。じゃあね」

交差点でクライド様と別れて、まだ活気があるバザールで買い物をして帰ると、シリルが先に帰宅していた。


しかも、貴族らしい華美な服を着て外出の準備をしている。

長い髪は一つに結び、タキシードを着て、淡い匂いの香水をつけていた。

「急遽、夜会に出る事になったんだよ」

と言って、バタバタと出掛けていった。

シリルは爵位を引き継いだから、社交の場にも行かないといけないと以前言っていたけど、大変そう。


簡単に食事を済ませると、今日買ったばかりの壊れたラジオを分解する。

まずは部品一つ一つを綺麗に磨いて、杖を使い魔法を通していく。

魔法が通らない部品を2つ見つけた。

きっとこれが原因ね。

近いうちに部品を探しに行こう。

机の上に綺麗に並べて、部品を眺めながら考える。


明日は何をしようかしら?

研究室が閉鎖されているから、今しか出来ない事をしなきゃ。

となると、本棚の奥を徹底的に掃除してみよう。


毎日掃除をしたり、今まで放置されていた古い資料を並べたりしているけれど、一向に閉鎖が解除される兆しはない。

魔法薬学科の棟が閉鎖されて7日目。

何日も研究室が封鎖されているので、空気の入れ替えや掃除に来る雑用係をチラホラと見かけるようになった。

何人も雑用係がいる研究室は当番制にしているみたいだけど、キャロルには出会えていない。


今は1人でできることをしよう。

書棚の整理をしながら、今まで見れなかった壁に貼ってある鉱物の標本や、開けた事のない整理棚の鍵を探してみる。

こうやって日々過ごすのも悪くない。


棚の文字が消えかかって気になっていたところは、魔法を使いながら文字が読めるようにしたり、魔法釜を綺麗に磨いたり、1人の作業は誰にも気を使わずに楽でいい。


誰もいないから、書棚の気になった本を読むことも今ならできるわ。

あまりみんなが使わない本を開いてみる。

見た事のない薬草や魔法草について書いてある。

次の本は、古代魔術を使った魔法薬の精製方法が書かれていた。

こんなに面白い本、何故誰も読まないのかしら。

気になった魔法草は、シリルと初めて出会ったランドール公園や、色々な場所に探しに行ってみよう。

メモを取ってから、綺麗に片付けて窓を閉めて、灯りを消す。


外に出て空を眺めた。

青空の奥の方に灰色の雲が見える。

風も強いから、もしかしたら雨が降るかもしれないわ。

早くバザールに行って買い物をして帰ろう。


急いでバザールに向かうと、テント営業をしているお店はもう店じまいの準備をしていた。

お客さんもまばらなのに、一際目立つ人物が民芸品店で何かをまじまじと見ている。

シリルだわ。


背中から出ているオーラが、独特すぎてすぐにわかる。

夢中になって何かを見ている時のシリルだ。

ハナメイで孤児院にいた時、夢中になると人の声が聞こえない男の子がいたけど、シリルも似たようなものだ。

何をしているのかと近づいてみると、不思議な置物を見ていた。

大きな顔に小さな胴体のついた象の置物だ。

あれ、どうするつもりなのかしら?


私には気がついていないようで、不思議な置物を手に取って裏側まで眺めている。

しばらく隅々まで見た後、元の位置に置いて迷う事なくお香を買っていた。

お香は匂いを確認している様子はない。苦手な匂いだったらどうするつもりなのかしら?


買い物を終えると別の民芸品店に行き、次は掌サイズのクッションのような物をじっと手に取って眺めている。

不思議な行動に思わず声をかけた。

「シリル、何してるの?」

肩がビクッと上がり、こちらを向いた。

「びっくりした。驚かせないでよ」

「勝手に驚いたのはシリルでしょ?あの置物を見た次は、この小さいクッション?」

「これはお手玉っていう民芸品なんだってさ。投げて遊ぶらしいよ。中に何がはいっているのかな?」

言われて振ってみる。


「乾燥した豆?」

「何の豆だと思う?東の方の国の民芸品らしいんだけど。見た事ない豆だったらと考えて買おうか迷っているんだ」

研究の事ばかり考えているのね。

「さっきの象の置物は?」

「そこも見てたの?あれもびっくりするくらい軽くて、木製なんだけど何の木で出来ているのか気になって」

「シリルって相変わらず面白いわね」

気になった事に対して本気で悩む姿が面白い。


「そう?そんなことはないけど。…そうだ。バザールに来たのは、壊れた魔道具の部品を買いに来たんだった。門番小屋の入口にある、人を感知する魔道具の調子が悪いんだよね」

「魔道具の修理部品屋さんがあるの?」

「あるよ。壊れた魔道具を分解して、使える部品だけを売っているお店があるんだよ」

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