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買い物

魔法騎士学科の制服のままなので、貴族然としている。確実に浮いてしまうわ。


「大丈夫だよ」

パチンと指を鳴らすと、異国情緒溢れるトーブと呼ばれる真っ白な砂漠の多い地域の服装になった。


「似合ってますけど、それはそれで目立ちますよ?」

チョコレート色の綺麗な肌に真っ白な衣装は、本当にエキゾチックで素敵だけど、バザールにそのような服装の人はいない。


「そう?それならこれは?」

またパチンと指を鳴らすと、白いシャツに黒いズボンに黒いベスト。腰には真っ赤な幅広の布製のベルトを巻き、ベレー帽という民族衣装風の服装になった。

「それ、どこかの地方のお祭りの服装ですか?」

「そう。今日は、月に一回のナイトバザールの日でしょ?だから、このくらいの格好しないと変じゃない?」

そう言った後、クスクスと笑い出した。


「揶揄ってごめんね。あまりにも驚く顔が可愛かったから」

そう言って、長いケープを出して羽織る。

「さっきまでは、魔法で着替えたように見せていただけだよ。だから、数十秒で元に戻ってしまうんだ」

「魔法で…。なるほど、さすがですね」

そんな高度な魔法見たことない。

貴族は魔力が多いって聞いたことがあるけど、こういうことなのかもしれない。


「このケープは決められた服装に早着替えする魔道具。早着替えが必要なら、あらかじめ服装をセットしておくんだ」

そう話しながら、ゆっくりとケープを脱ぐと、洗いざらした半袖のシャツと作業用ズボンに変わっていた。

胸元まで開いたボタンが、溢れ出す色気を隠しきれずにいる。

なんだか目のやり場に困ってしまう。


「その服装は庶民に変装ですか?」

「変装というかなんというか。たまに街歩きをしているんだよ。これくらいできないとね」

これくらいできないと何なのか聞くことができずに曖昧に笑って頷く。


「古道具を買うからお勧めの古魔道具屋があるんだ」

「いいですね。どこにあるんですか?」

貴族が買うような古い魔道具屋さんでは、高くて買えないだろうけど、いい物はたくさんありそうだわ。


「案内するよ。かなりお値打ち品が多いんだ」

横に並んで歩くとわかるけど、アークライト侯爵令息とは違って私の歩幅に合わせて歩いてくれる上に、心地よい距離で接してくれる。

アークライト侯爵令息は貴族の世界を覗き見させてくれたけど、ワインバーグ伯爵令息は、私に合わせてくれていて私の世界側にいてくれるんだわ。


他愛もない話をしながらバザールに向かう。

「ワインバーグ伯爵家は、鉱山地帯なんだ。だから、金の含んだ岩盤を砕いて金を産出した後、残土に何も混ざっていないか検査をしたりするんだよ」

「それで分離の魔法が!」


粉薬から必要な薬草だけを抜き出す魔法が見事だったので、何かしらの経験があるのかと思ってたけどそれで納得する。

「僕は、今まで攻撃に特化した魔法しか学んでこなかったから、君の弓には驚いたよ。あの場面で魔力を使っていたら、クサントスに居場所がバレただろうから」

「平民の私たちは、魔力はそんなに多くないので、魔力を使わず生活することに慣れているんです」


「僕は魔力が多いから、魔法騎士学科にいるけど。貴族でも魔力が少ない人はいるよ」

「そんな人はどうするんですか?」

「君と同じように杖を使うんだよ。気になってたんだけど、あれは自作?」

「はい。不恰好ですけど」


「すごいね!杖を自作するなんて聞いたことないよ。杖は、杖屋さんで買うのが普通だよ」

「杖屋さん?いつか行ってみたいですね」

どんなお店なのかしら。

沢山の杖が並んでいて、自分に合うものを探すのかしら?

それとも、オーダーメイドで、注文するのかしら?

想像がつかない。


「すぐそこにあるよ。知り合いが経営しているお店なんだけど。行ってみる?」

「いいんですか?」

自分1人で入る勇気がないから、連れて行ってもらえるならすごく嬉しい。


「そんなに嬉しそうな顔をすると思わなかったよ。じゃあ、その先の角を右に曲がって」

言われた通りに曲がると路地裏に入った。

看板など一つもない。

本当にここに?


「なんか不思議な通りでしょ?ここは、一見さんお断りのお店しかないんだよ。だから、看板も出ていないんだよ」

人もいないし、細くて薄暗い路地裏に足がすくむ。


「大丈夫だよ。それともやめておく?」

「いえ。行きます」

息を飲んで一歩踏み出す。

「すごい好奇心旺盛だね」

クライド様はクスクスと笑い、右手を大きく伸ばして私の手を取った。

「仕方ないなぁ。子供みたいだね」

私の手を引いて楽しそうに先へと進む。


クライド様の態度の方が子供みたいだけど、そこは言わずにぐっと我慢した。

猟師さんと一緒に森に入った時の気持ちと似ていて、ドキドキしたような緊張したような気持ちになる。

「ここだよ」

そこには地下に降りて行く階段があった。

その先は真っ暗な穴がぽっかり空いていた。

この暗がりの先にあるのだろうか。

この路地を歩く人は誰もいないし、怖さしかない。


ここで不安な気持ちが大きくなる。

私、もしかして騙されてる?

闇の奴隷商とかに売られるのかしら?

恐怖を感じるけど、逃げる勇気もない。

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