第1章第7話
六月に入り、衣替えを終え、中間テストの結果が返ってきた。
昼休み、いつもの中庭で四人で昼食を取っていた。
文弥のスパルタ勉強会のおかげで、一馬も紬も、赤点をギリギリ回避。
無事に試練を乗り越えることができた。
「いやー、文弥のおかげで助かったよ。はははっ」
一馬は心底ホッとした笑みを浮かべ、感謝を伝える。
「私もギリギリ大丈夫だった。えへへ」
紬もホッと胸を撫でおろし、嬉しそうに微笑んだ。
「二人とも頑張ったもんね」
初音が二人を労うように、優しく微笑んだ。
「テストの結果も出たし、寝取られ動画の方を頼むね。二人とも」
文弥は一馬と紬に熱い視線を向けた。
「……やっぱりそれは続くんだな」
一馬は半ば諦め気味の表情でパンを噛った。
「……このまま終わりだと良かったのに」
弁当を食べながら、肩を落として落胆する紬。
「テストがあってご無沙汰だったからね! 期待しているよ!」
『彼女が寝取られる動画を期待するのって、間違ってるよ!』と思った初音だったが、新作のアニメを待ち望む子供のような文弥の無邪気な笑顔を見ると、何も言えなくなってしまう。
「前回のはかなり酷かったから、次はしっかり頼むよ!」
ただ一馬のイキ顔だけが呆然と映し出されていた前回の動画を思い出し、文弥はどこか狂喜の孕んだ笑みを浮かべていた。
「つ、次は文弥に喜んでもらえるように頑張るから」
一馬は文弥の氷のような笑みに、背筋を凍らせる。
「わ、私も瀬名くんのおち◯ちんを責めすぎないように注意するね」
文弥に嫌われたくない一心で、嫌がりつつ健気に頑張ろうと思う紬。
「こ、今月は体育祭があるね!」
初音は自分が入っていけない話に、何とか話題を変えようとした。
「体育祭かぁ……私、運動苦手だから嫌だな」
紬は真面目なのにおバカだが、運動音痴でもあった。
「俺もやりたくないなぁ……」
一馬もスポーツは苦手だった。
「二人とも勉強はできないし、運動も苦手だからね。いったい何が得意なの?」
文弥は悪気は一切ない無垢な笑みを浮かべながら、二人に会心の一撃を与えた。
こうして、殺伐とした昼休みは過ぎていった。
謎の声(相変わらずほのぼのした高校生の昼休みとはかけ離れているね)
◇◇◇◇◇◇◇◇
その日の放課後。
文弥は日課である図書室の勉強を終え、帰ろうと正門に向かったら、正門の前で紬が何やら見知らぬ他校の制服を着た男子生徒と話しているのを見かけた。
赤毛のマッシュヘアのかなりのイケメンで、通りすぎる女子生徒の視線を一身に集めていた。
『だれだろう?』と思いつつ文弥が紬に近づこうとした瞬間──いきなり一馬が横から現れて、何やら男子生徒と揉めだした。
「ここで何やってるんですか? 蓮見先輩!」
一馬は紬を守るように男子生徒との間に割って入ると、いきなり男子生徒を怒鳴り付けた。
「いや、例の女性がどんな人か気になって見に来たんだよ。写真より実物の方が全然可愛いですね」
男子生徒は気にする様子もなく、不敵な笑みを浮かべている。
「その話は断ったじゃないですか! 槙原に近づかないでください!」
一馬は必死の形相で、男子生徒を追い返そうとしている。
恋愛トラブルかと、興味津々の下校中の生徒たちがざわざわと集まり出してきた。
「ちょっと話するくらいいいじゃないですか。ふふ」
男子生徒は平然と何食わぬ顔で、やり過ごしていた。
文弥は気になって駆け寄ると、一馬たちに話しかけた。
「どうしたの? 一馬くんと紬」
「あ、文弥。何でもないんだ。 もう帰ってください。蓮見先輩!」
「あ、君が秋月文弥くんですか。私は蓮見律と言います。よろしくお願いしますね」
「蓮見先輩! いい加減にしてください」
「わかりましたよ。久しぶりに会ったのに冷たいですね。今日はこれで帰ります。文弥くんに紬さん。またね」
律は不気味な笑みを浮かべて去っていった。
「あ、ありがとう。瀬名くん。人を待っていると言っているのに、ずっとしつこくて……」
紬は一馬に深々と頭を下げた。
「いや、いいんだ。知り合いが迷惑かけてすまなかった」
一馬は申し訳なさそうに、苦笑した。
「誰なの? あの人?」
文弥は一馬に尋ねた。
「あの人は前に話した寝取りフェチの先輩だよ」
「ああ、この世から抹殺した方がいい人か。なるほど。どうりで、胡散臭い笑顔していたもんね」
「……あの人はお前が彼氏なの知ってても、全く怯まないからな。寝取るのが生き甲斐みたいな人だから」
「へー、そういうところは僕と一緒だね。まあ、僕は寝取られる方だけどね」
「……文弥と蓮見先輩とは違うよ」
一馬は文弥には聞こえない小さな声で、独り言のように呟いた。
一馬は文弥と蓮見との本質の違いに気づいていた。
文弥は純粋に寝取られることに喜びを感じるだけだが、蓮見は寝取ることをゲーム感覚で楽しんでいる。
どっちも狂ってくるが、蓮見には完全に悪意がある。
その後、後から来た初音も加わると、帰宅するため四人で駅へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
一馬と紬は文弥たちと途中で別れ、一馬のマンションで寝取られ動画を撮影していた。
事を終えると、カメラを止めてから二人はベッドに並んで横たわっていた。
「今日は蓮見先輩が迷惑かけて悪かったな」
一馬は指で頬をかきながら、本当に申し訳なさそうにしていた。
「気にしないでいいよ。瀬名くんが悪いわけじゃないし」
紬は屈託のない朗らかな笑顔を見せた。
「でも、先輩に寝取られの話したのは俺だし、あの人お前のことを完全に狙ってる感じだったな」
「私は文弥くん以外の人を好きになることはないから大丈夫だよ」
「まあ、そうだよな。こんなになってごめんな。俺が誘わなかったら普通の恋人同士でいられたのに」
一馬は紬の目を見ると、神妙な面持ちをしていた。
「今日は瀬名くんは謝ってばかりだね。ふふ。誘いに乗った私も悪かったんだから気にしないでいいよ」
自分にも非があったことがわかってる紬は、少し悲しげに小さく微笑んだ。
「そう言ってもらえると助かるよ」
「……瀬名くん。今日のは少し良かったよ」
紬は微かに頬を赤めた。
「え? 何が?」
「何がって、鈍感だな」
一馬をじっと見つめる紬。
「あ、そうか。良かったか。ははっ」
性行為のことだと気づいた一馬は照れくさそうにしていた。
「本当にちょっとだけだけどね。ふふ」
紬は下手くそながらも一生懸命に愛撫してくれる一馬を可愛いと思いながら、どこか母親みたいな眼差しをして微笑んだ。
「勉強の成果が出てきたかな、次はもっと頑張るよ」
「勉強って?」
「あ、エロ動画とか見て勉強したんだ。はははっ……」
文弥からもらった紬攻略マニュアルのことは言えないので、一馬は笑って誤魔化した。
「ふーん、あ、私、そろそろ帰らないと」
紬はスマホを手に取ると、時間を確認した。
「もう、そんな時間か、こんな遅くなって大丈夫か?」
「お母さんには初音の家で勉強会するから少し遅くなるって言ってあるから。初音にも口裏合わせるように頼んであるし」
「そうか、それなら安心だな」
「うん、初音はお母さんに信用されてるからね。ふふ」
「家まで送って行くよ」
「え、いいよ。悪いから」
「一時間後にタクシーが来るようにアプリで予約したから、シャワー浴びてけよ」
「ありがとう。えへへ」
それぞれシャワーを浴びた後、二人は高級ソファに座り、タワマンの高層階からの宝石を散りばめたような夜景を眺めながら、タクシーが来るのを待っていた。
謎の声(いい感じなのかな……?)
◇◇◇◇◇◇◇◇
晩御飯を終えた文弥は、台所で食器を洗っていた。
母親は夜勤なので、今夜は帰って来ない。
食器を洗い終わり、シャワーを浴びようと風呂場に向かおうした時、ポケットの中のスマホがブーブーと震え出した。
高揚感を押さえつつ、スマホの画面を確認すると、一馬から『送信完了』の通知とともに新作の寝取られ動画が届いていた。
文弥は急いでシャワーを浴びて、部屋に戻ると、すぐさま動画を再生した。
画面には一馬と紬の初々しい性行為が映し出されていた。
前回と違い、紬は控えめに攻めながら、一馬のまだぎこちない愛撫を受け入れている。
まだまだだが紬が少しだけ感じているのが、彼女の全てを知っている文弥にはわかった。
今までに比べ一馬が丁寧に愛撫しているため、動画の尺も八分と長くなり、今までの最高傑作だと文弥は歓喜に身を震わせ、狂喜の瞳を輝かせていた。
膨張する股間から欲望を何度も絞り出すと、文弥は久しぶりの快楽に溺れていった。
たった八分という短さでありながら、その凝縮された内容に狂喜しつつ、自分の彼女が他の男に感じ始めているという最高のシチュエーションに歓喜し、夜中まで快楽の宴は続いた。
やがて、疲れ果てた文弥は眠りについた。
謎の声(……お疲れ様でした)
読んでくださりありがとうございました




