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彼女を寝取ったチャラ男と、反省して泣きつく彼女。だが一番おかしいのは新世界に目覚めた僕だった  作者: 燕


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第1章第2話

翌日の昼休み、文弥は人気のない中庭の外れに一馬と紬を呼び出した。


文弥は憤怒していた。


文弥が歪んだ性癖に目覚めてから三日が過ぎたが、新しい寝取られ動画が一向に送られてこないからだ。


「な、何だよ。話って?」


一馬は目を泳がせていた。


「僕は怒っているんだ! 一体どうなっているんだい! 寝取られ動画はいつ送ってくれるんだい!」


一馬は文弥の何一つ曇りのない真っ直ぐな瞳に、少したじろいでいる。


「も、もうこの女は抱かないよ。だいたいただの遊びだったし……動画もちゃんと消去したからもう関わらないでくれ」


一馬はもううんざりしたような顔をしている。


「わ、私もこの人にはもう抱かれたくない」


紬は心底嫌そうな顔で、一馬を見つめている。


「二人とも僕をがっかりさせないでくれ……寝取られ愛を僕にもっと見せてくれ」


文弥は一馬の両腕を強く握りしめると、狂喜に満ちた瞳で睨みつける。


文弥は小柄で女の子みたいな可愛い顔をしているが、日々筋トレに励んでいるためガッチリとした体型をしている。


一方の一馬はイケメンで背が高いが、線が細く、スポーツ経験もゼロで喧嘩も弱かった。


「わ、わかった。寝取るから手を離してくれ!」


謎の声(何なの……このやり取りは……寝取られ愛って何?)


文弥の真っ直ぐな寝取られ愛に負けた一馬は、渋々ながらも了承した。


「わ、わかったよ。撮るから手を離してくれ」


「あ、あの私の意見は?」


「紬、あるわけないだろ。だいたい君が始めたことじゃないか」


文弥の射るような目で睨まれた紬は、何も言い返すことが出来なかった。


一度だけの情事のつもりが、抜け出せない底無し沼にハマってしまった瞬間だった。


「じゃあ、早いとこ頼むね」


「……ああ、わかった」


「…………」


消え入るような返事をする一馬と、俯いたままの紬。


文弥はそれを尻目に颯爽と、校舎へと戻っていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇


放課後。


一馬と紬は一馬のマンションに居た。


一馬の父親は、建設会社の経営者で市議会議員でもある。


一馬はいわゆるボンボンだ。


二人は文弥に言われた通り事を終えて、ベッドに腰かけていた。


本当はもう一馬に抱かれたくなどなかった紬だったが、文弥と別れたくない一心で彼の言うことを聞くしかなかった。


後悔の念から、紬の目からは涙が洪水のように溢れている。


「そんな泣くなら断れよ……」


一馬が紬を促す。


「……だって、文弥くんがしろって、ぐすっ」


「なあ、彼奴ってあんな怖い奴だったのか?」


「文弥くんのこと?」


「……ああ」


「真面目で大人しそうに見えるけど文弥くんはキレたらとことんやるタイプだよ……私、中学生の頃にいじめのターゲットになりそうになったの……地味で大人しいタイプだったから……」


「……そうなんだ」


一馬は嫌な予感がして息を飲んだ。


「それを知った文弥くんが、いじめの証拠を徹底的にかき集めて、学校や教育委員会、警察に提出していじめグループを追い込んだの……ネットでも大騒ぎになって……」


「……へー」


そういえば隣の町の中学校でそんな騒ぎがあったなと思いだし、一馬の顔から血の気が引いていく。


「……その後、ネットで炎上して、いじめグループの人たちは全員引っ越して行ったわ……誰がネットに上げたのかはわからなかったけど……」


謎の声(それって一人しかいなくない……?)


一馬の背筋に寒気が走り、小さい一物がさらに縮み上がった。


「……そ、そうなんだ」


「それから私はいじめられることはなくなったんだけど……文弥くんと初音以外は誰も私に話しかけなくなったの……」


「…………」


冷房の利いた部屋なのに、一馬の汗は止まらなかった。


「……瀬名くん。今日もキスはしない約束を守ってくれてありがとう」


「……気にするな」


謎の声(風俗のお店なの?)


一馬は心底後悔していた。


真面目そうな男の子の彼女を寝取って、その泣き顔を見て優越感に浸るはずだったのに、今は自分が泣きそうになっている。


紬が帰った後、一馬は撮影した新しい寝取り動画を確認するとすぐに文弥に送った。


◇◇◇◇◇◇◇◇


その日の夜、いつものように文弥が机に向かってペンを走らせていると、突然、スマホのバイブ音が部屋に鳴り響いた。


文弥はニヤリと口角を上げると、スマホを手に取り、画面を確認する。


待望の新しい寝取られ動画が届いたのだ。


動画を確認すると、一馬と紬が性行為をしている姿が映されていた。


紬の目には涙が浮かんでいるように見えたが、文弥の股間はどこまでも膨張していく。


しかし、文弥はスマホを静かに机の上へ置くとそっと呟いた。


「時間が短すぎる……いくら何でも早すぎるだろ……彼はいつもこんなやり方をしているのだろうか……?」


一馬は前戯もおざなりで、すぐ発射してしまう早漏。


自分だけ気持ち良くなって終わる。


文弥はこれではダメだと思い、ノートパソコンを立ち上げると、素早いタイピングでキーボードを打ち込んでいく。


徹夜でキーボードを叩き続け、明け方──ついにそれは完成した。


「ふう……完成だ」


文弥は額の汗を拭い、一つ息を吐いた。


彼が一心不乱に作成したものは、昔から書き留めていた、紬攻略ファイルの編集作業だった。


二百ページ、二十万文字にわたる大作だった。


謎の声(この子、真面目すぎてアホの子になったんじゃない……)


文弥はそれをプリンターで印刷すると、綺麗にレールクリアホルダーでまとめた。


レールクリアホルダー五冊パックの資料の作成を終えた文弥は、新作の寝取られ動画を思う存分堪能した。


◇◇◇◇◇◇◇◇


次の日の昼休み。


目に隈ができていて、明らかに寝不足の文弥は再び人気のない中庭に、一馬を呼び出した。


「……こ、今度は何だよ? 動画はちゃんと送っただろう」


一馬は文弥に対する恐怖から、足の震えを隠せないでいる。


「これを読んで勉強してほしいんだ」


文弥は紙袋を一馬に手渡した。


「何だよ? この紙袋は?」


「紬が気持ち良くなるための愛撫をまとめた資料だよ。それをしっかり読んで次の寝取られ動画の作成に励んでほしい」


「……これ全部か?」


「うん、しっかり全部読んで勉強してほしい。僕を失望させないでね」


文弥の瞳から『失敗したら、どうなるかわかってるよね』という殺気がひしひしと伝わってきた。


「……わ、わかったよ」


一馬は急いで図書室に向かい、机に五冊のファイルを丁寧に置くと紬攻略マニュアルを読み始めた。


そこには紬の感じやすい性感帯や、触り方など事細かく丁寧に説明された文章が書いてあった。


謎の声(図書室で真面目な顔して何を読んでいるんだ……この男は……)


授業に出るのも忘れ、一馬は一心不乱に紬マニュアルを読み漁った。


「えっと、次は紬の右耳を舐める際の舌の角度と加減についてか……」


謎の声(……馬鹿なの?)


◇◇◇◇◇◇◇◇


放課後。


文弥が日課である図書室へ勉強しに行くと、一馬がまだ図書室にいた。


『俺、もう帰るところだから』と言うと一馬は紬マニュアルを大事そうに抱えて、早足で図書室を出ていった。


勉強を終えると、正門の前でまた紬が待っていた。


「……一緒に帰っていいかな?」


紬は不安そうな顔をして、文弥の顔を覗き込む。


「もちろん、いいよ」


文弥は満面の笑みで答える。


「……良かった。へへ」


紬はホッとした表情で、文弥の隣を歩き始めた。


駅に着き、人がまばらな車両に乗り込むと電車に揺れながら二人は話し始めた。


「紬、次の一馬くんとの性行為は期待しといてよ」


「え? 何で?」


「次は紬にもっと喜んでもらえると思うんだ」


「そ、そうなんだ」


紬は本当はもう一馬には抱かれたくないと思っていたが、文弥のとても嬉しそうな顔を見ると口に出せなかった。


「次はもっと長い寝取られ動画になると思うよ。ははっ」


謎の声 (彼女が寝取られるのに爽やかな笑顔って……)


「あ、あの、文弥くん。これっていつまで続けるの?」


「寝取られのこと?」


「……うん」


「僕と付き合ってる間は、ずっとだよ」


「……えっ」


この先も絶望しかないのだと感じる紬だった。


「嫌なの? 紬が好きでやったことでしょ?」


「……うっ、そうなんだけど」


「だったら別れる? 別れたらもう寝取られにならないからやらなくてもいいよ」


「それは絶対嫌! 文弥くんと別れたくない!」


「だったらこれからも頑張ってよ。僕のために」


「……うん、わかった。私、頑張るね」


「ありがとう。紬」


文弥は紬の頭を優しく撫でた。


束の間の文弥の優しさに触れ、紬の胸が懐かしい心地よい温もりでいっぱいになった。


「ねえ、今度の土曜日。文弥くんの家に遊びに行ってもいい?」


「うん、大歓迎だよ」


「ありがとう。えへへ」


最寄りの駅に降りると、文弥は紬を家まで送っていった。


そして、紬の家の前で一馬とは絶対にしない口づけを文弥と交わし、文弥は帰路へと着いた。

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