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彼女を寝取ったチャラ男と、反省して泣きつく彼女。だが一番おかしいのは新世界に目覚めた僕だった  作者: 燕


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第1章第17話

次の日。


文弥はいつものように、図書館のロビーで休憩をしていた。


いつも腰を落としている四人がけのパブリックベンチに、文弥はすっかり馴染んでいた。


相変わらず隣には、心愛がちょこんと座っていたのだが、なぜかもう一方の隣には千代が昨日と同じく当然のように文弥の隣を陣取っていた。


「……千代さん。あなたは何で今日もいるの?」


心愛が顔を引きつらせて千代を見つめる。


「いや、どこで自習するかは私の自由っしょ。ここっち先輩」


心愛の『あなた邪魔よ』という視線などどこ吹く風、千代は無邪気な微笑みを浮かべた。


「ここっちって呼ばないで。私は先輩よ」


千代をキッと睨み返す心愛。


「まあ、いいじゃないですか。ここっち先輩」


文弥が宥めるように、心愛の肩をポンッと叩く。


「もう、文弥くんまでその呼び方で呼ぶのはやめてよね」


心愛はむすっとした顔をして、文弥をちらりと睨み付けた。


しかし、文弥は穏やかな笑みを崩さず、静かに爆弾を投下する。


「それじゃ……『ビッチ先輩』の方がいいですか?」


「……うっ、ここっちでお願いします」


今までの不名誉な称号より全然いいかと察知した心愛は、一瞬で折れた。


謎の声(相変わらずポンコツだね)


「ここっち先輩の方がいいっしょ。それに、ここっち先輩はビッチじゃないし」


「え? ここっちってビッチじゃないの?」


文弥はもはや、先輩と呼ぶこともなくなってしまった。


「どう見ても未経験っしょ」


千代は何かを見透かしたような目をしている。


「なっ、わ、私が未経験なわけないでしょ!」


核心を突かれた心愛は、目を泳がせて慌てふためく。


「見栄張ってもダメだよ。ははっ」


千代は慈悲に満ちた表情をしている。


「な、なんでわかったのよ!」


あっさり落ちた心愛。


「ここっち。もう答え言ってるようなもんだよ」


文弥は無邪気に答える。


「だってここっち先輩って誰かと付き合ったこととかないっしょ? 私もそうだからわかるんだぁ」


千代は屈託ない笑みを見せ、コロコロと笑った。


「え? そうなの? ギャルなのに? ギャルって男を漁って生きる生き物なんじゃないの?」


千代の衝撃の発言に愕然とする文弥。


「ふみっちはギャルに偏見持ちすぎだよ。ははっ」


そんな暴言を吐く文弥を千代は優しい笑顔で包み込む。


「わ、私もない……」


心愛が俯いてボソッ呟いた。


「私たち仲間っすね。ここっち先輩」


「そ、そうね。ふふ」


何かの絆が生まれた瞬間だった。


「まあ、ここっちは何となくそうかなって思ってましたけど」


文弥は悪気もなく、ぶっちゃけた。


「え? そうなの?」


謎の声(気づかない方が不思議だよ)


そんな雑談をしていたら、交際経験がない女子仲間になりそうなやつが汗をダラダラ滴しながらやって来た。


「文弥くん! 酷いじゃない! 図書館で勉強しているなら私も呼んでよ!」


初音は頬を膨らませながら、文弥に詰めよった。


「よく図書館にいるってわかったね。ははっ」


怒っている初音を文弥は、屈託のない笑顔で見つめる。


「さっき文弥くんの家に行ったら、聡美さんが教えてくれたの」


聡美というのは、文弥の母親の名前である。


初音と文弥は小学生から友達だったので、聡美とも仲が良かった。


「心愛先輩も酷いです! 知っていたなら教えてくれたらいいのに!」


心愛をジト目で見つめる初音。


「あ、あら? 教えてなかったかしら、ごめんなさい。おほほっ」


『教えるわけないだろ』と心の中では思っていたが、心愛は何とか誤魔化した。


と言うかせっかくの文弥との二人の時間が奪われていく感じで、心愛はかなり焦っていた。


「ふみっちって女の子の知り合い多いんだね。実は見た目と違ってチャラ男なの? あははっ」


「ふみっち? 文弥くんと知り合いなの?」


メガネ地味女子の自分とは、対照的なギャルを見て初音は困惑する。


「ふみっちと同じクラスの葛城千代だよ。やっほー、よろしくね」


初音にたいしても、千代は濁りのない無邪気な笑顔を見せる。


「一年三組の浅井初音です。よろしくお願いします」


千代に挨拶されると、しっかりと頭を下げて自己紹介をする真面目な初音だった。


この日から初音も加わり、文弥の夏休みの間の隠れ家はすっかり女子たちの憩いの場になってしまった。


◇◇◇◇◇◇◇◇


図書館での勉強を終え、初音は帰路へとついていた。


辺りを包む夏の夕日は、すべてを赤く染め上げている。


そんな帰り道、初音が紬の家の近くを通りかかった時だった、一台のタクシーが止まり中から紬と一馬が降りてくるのが見えた。


驚く初音の前で、一馬は紬を優しく抱きしめる。


名残惜しそうにそのままタクシーへと戻り、車は走り去っていった。


残された紬はどこか嬉しそうな様子で家の中へと消えていく。


誰もいなくなった閑静な住宅街の道で、初音は呆然と立ち尽くす。


初音はモヤモヤした気持ちのまま家へ帰ると、自分の部屋のベッドへと滑り込んだ。


あの二人の異常な関係は知っている。


でも、初音にはあれは恋人同士の関係にしか見えなかった。


『紬にとって文弥くんは何なの?』という疑問が初音の心の中でふつふつと湧いてくる。


『紬にとって文弥くんはもうどうでもいいのだろうか?』 『私が奪ってもいいの?』 初音の中の押さえきれないどす黒い感情がどんどん込み上げてきた。


しかし、考えれば考えるほど、友達の彼氏を奪っていいのだろうかという罪悪感にもむしばまれていく。


彼女の生真面目な性格が、高いハードルになっていた。


でも、文弥のことは『絶対に諦められない!』 『絶対に正常な道に私が引き戻すんだ』という決心は揺らがなかった。


初音は頬をパンッと軽く張り、ベッドから起き上がると、鍵のかかった机の引き出しからタッパーを手に取った。


そして、中のものを大切そうに取り出す。


それは中学二年生の時に、文弥の家からこっそり盗んできた彼の使用済みハンカチだった。


文弥のハンカチの匂いを嗅ぎ、悶絶しながら葛藤する初音だった。


謎の声(……やっぱりまともな子って出てこないの? ギャルに期待するしかないの?)


◇◇◇◇◇◇◇◇


図書館から帰った文弥は、夕飯を済ますと母親と二人で居間で寛いでいた。


「文弥。スイカ買ってきたから食べよう」


聡美はスイカをテーブルの上に置いた。


「え? うん、珍しいね」


母子家庭であまり裕福とは言えない文弥の家では、食費も普段は節約が当たり前だった。


「二割引だったから買ってきちゃった。ふふ」


「わあ、甘いね」


頬を緩ませる文弥。


「当たりだったかしら。ふふ。そういえば明後日、花火大会があるんじゃない? 今年も行くんでしょ?」


「うん、そのつもりだよ」


文弥はスイカの種を飛ばしながら答えた。


「また、紬ちゃんと初音ちゃんの三人で行くの?」


聡美は穏やかな笑みを浮かべている。


「うーん、初音と紬とは行くけど、他にも増えそうかも」


文弥の頭の中に、寝取り友達とポンコツと白ギャルが浮かんだ。


謎の声(……ちゃんと名前で覚えようね)


「お友達が増えたね。良かったわね」


「うん、ありがとう」


謎の声(全員、かなり癖が強いけどね)


スイカを食べ終えると、自分の部屋で、寝取り動画について考えていた。


文弥は最近はかなりいい感じになっていると思っていた。


最初の頃が酷かったことを思い出すと、天と地の差ではある。


文弥はうんうんと頷きながら、満足そうに微笑んだ。


しかし、何かマンネリしてきたし、もっと何かがあるんじゃないかと文弥は考えていた。


その時、文弥はハッと思った。


「シチュエーションか!」


咄嗟のひらめきに、思わず声を荒げる文弥だった。


いつも一馬のマンションだから、見ていてマンネリしてきたのだと文弥は核心したのであった。


二人が野外で、性行為をすると斬新なんじゃないかと思い、色々と案を出していく。


学校、公園、墓地、次々と案を出していく文弥。


文弥の狂った情熱は、夜中まで続くのであった。


謎の声(バレたら普通に退学になるか、最後のは祟られるかもよ。 やめなさい)

読んでくださりありがとうございました

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