第1章第15話
花火が終わった後、文弥たち男子と紬たち女子それぞれの部屋に分かれ眠りについた──はずだった。
だが紬は部屋をこっそり抜け出し、文弥たちの部屋へとやって来ていた。
昼間の罰ゲームである、文弥の願い事を聞くためだ。
文弥の願い事──それは寝取られ動画ではなく、生で寝取られるところを見たいという異常なものだった。
一馬と紬は困惑し、断ろうとしたが、『一つだけ願い事を聞く約束でしょ』という文弥の狂気の瞳に圧され、承諾せざるを得なかったのだ。
ベッドの上で生まれたままの姿で向き合う一馬と紬、それを狂った目で見つめる文弥。
「ほ、本当にするのか……?」
動揺している一馬に、紬が静かに答える。
「……約束、だもの」
もはや文弥の狂気からは逃げられない。
一馬は紬の背後に回り込むと、その身体を後ろから抱きしめ、胸を優しく包み込むように揉み解した。
「……ん……んっ……」
文弥の狂った視線を感じてるからなのか、早くも身体を熱くし始めた紬が甘い吐息を漏らす。
一馬が紬の小さく尖った先端を摘まんで、丁寧に愛撫する。
「……あっ……んっ……」
紬は顔を赤く染めながら、文弥を愛おしそうに見つめる。
文弥は狂ったように熱い眼差しで返すと、紬に優しい笑みを浮かべる。
一馬は文弥からもらった紬攻略マニュアル通りに、胸を愛撫しながら耳や首も口で丁寧に責めだした。
「……ん……んん……っ」
文弥の顔を見つめながら、いつもの一馬との行為より感じ始める紬。
やがて、一馬が紬の少し濡れてきた秘部へと手を伸ばす。
「……あっ……ん……」
小さな吐息を漏らす紬。
そこで、なぜか文弥が口を出してきた。
「違う! そうじゃない!」
いきなり割り込んできた文弥が、紬の秘部に手を添えて繊細な指使いを見せ始めた。
「ここはこうしないとダメだよ! 一馬くん!」
「は、はい!」
思わず返事をしてしまったが、一馬は激しく困惑していた。
「……ああ……ん……うう……っ」
紬は久しぶりの文弥の見事な指使いに、すぐに絶頂を迎えてしまった。
「もっと頑張って! 一馬くん!」
「が、頑張ります!」
お手本見せた文弥は、また傍観者へと戻っていった。
そんなことを繰り返し、愛撫を終えると、一馬が紬の上に跨がり二人が重なり合うと文弥は紬の手を両手で握りしめた。
「頑張るんだ! 紬!」
「……ん……ん……私……頑張るね…………文弥くん……っ」
「一馬くん! そんなに激しくしたらダメだ! 自分だけ気持ち良くなろうとしないで!」
「……は、はい……先生……うっ」
その後も狂った宴は一晩中続いた。
謎の声(……先生って呼んじゃったよ。何のこれ? 何の授業?)
◇◇◇◇◇◇◇◇
次の朝。
文弥が顔を洗おうと洗面所に向かうと、初音と心愛にばったり出会った。
文弥を見た二人は、顔を真っ赤に染めている。
実はむっつり二人組は、紬がいないのに気づき文弥たちの部屋にこっそり様子を伺いに行っていたのだ。
部屋のドアの前で聞き耳を立てていたら、始まったあの三人の狂った行為。
二人はその声に釘付けになっていたのだが、むっつり二人組にはいかんせん刺激が強すぎた。
火照った体と興奮で、初音と心愛は目がギンギンと目を血ばらせ、全然眠れなかった。
「おはよう。初音。ビッチ先輩」
文弥は朝から爽やかな笑みを浮かべて、二人を見つめる。
「……お、おはようございます。文弥くん」
初音は頬を真っ赤にして、目を逸らしモジモジしている。
「……お、おはよう。ふふ」
平静を装うとするが、耳まで真っ赤にして挙動不審になる心愛。
「どうしたの? 二人とも凄い顔が赤いけど? 熱あるんじゃないの? 大丈夫?」
心配そうに二人のおでこに、手を当てる天然垂らしの文弥。
「ひゃっ! だ、大丈夫だから!」
初音は更に顔を赤くして、慌てふためく。
「ぶひゃ! わ、私も熱はないから平気よ!」
鼻を鳴らして、目をキョドらせる心愛。
「うーん、熱はないみたいだね」
「わ、私、荷物の整理しないと。また後でね」
初音は俯きながら、そそくさとその場を去った。
「わ、私もお花摘みに行くところだったの。じゃあ」
ガン! と壁に頭を打ち付けながらも、心愛は『……大丈夫だから。 うふふ』と鼻血を流しながらその場を走り去った。
取り残された文弥は、『本当に大丈夫なんだろうか?』と首を傾げながら洗面所へと向かった。
その後、別荘の片付けをしてから五人は別荘を後にして帰路へとついた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
その日の夕方。
別荘から帰った初音は、別荘での文弥との思い出に浸りながらシャワーを浴びていた。
小さな島の岩場で二人きりになった時に文弥に好きだと言われたことを思い出し、初音は顔をにやけさせる。
でも、あれは異性としてではなく、あくまでも友達としての好きの意味であることは初音はわかっていた。
それでも、初音は一生の思い出になるくらいの衝撃が走り、とても嬉しかった。
文弥と一緒に海で遊び、バーベキューもして、花火をした。
全てが初音にとっては、文弥との楽しい思い出になった。
しかし、最後の夜の出来事を思い出すと、途端に体が火照ってくる。
今、思い出しても、初音はその豊満な胸の高鳴りを抑えられないでいた。
もし、自分が文弥の恋人になったら、ああいうことをしなければならないのだろうか──そんな悩みが頭をよぎる。
シャワーを浴び終わり、湯船につかると、初音はポツリと呟いた。
「……私は文弥くん以外の人とは絶対に嫌だな」
一途な初音とって、文弥以外の男性となんて絶対に考えられなかった。
初めて好きになった初恋の相手。
彼の無邪気な笑顔を思い浮かべ、『私が絶対に正しい道に導くんだ』と決意する初音だった。
謎の(本当に一途だね。頑張って)
そして、いつか自分が文弥の恋人に──。
そこまで考えて、初音の胸に深い罪悪感が込み上げてきた。
友達である紬から、文弥を奪うような真似をしていいのだろうか。
謎の声(私は奪ってもいいと思うよ)
甘い妄想と胸を刺す葛藤を抱えたまま、初音は静かにお風呂を出た。
謎の声(いい子だね。応援してるよ)
◇◇◇◇◇◇◇◇
別荘から帰った夜、心愛はベッドに横たわり、別荘での出来事を一人思い出していた。
紬や初音と遊んだことは、心愛にとってとても嬉しかった。
なぜなら、心愛には同性の友達がいなかったからだ。
人の彼氏を奪う女のレッテルを張られている心愛と、友達になろうとする女子は一人もいなかった。
それどころか、敵意を剥き出しにしてくる女子ばかりだった。
自業自得とは言え、心の中では彼女はいつも寂しい思いをしていた。
足をつった時も、紬と初音は優しくしてくれた。
心愛はその時のことを思うと、自然と笑みがこぼれる。
でも、もちろん一番楽しかったのは、文弥と遊んだことだ。
足をつった時には、お姫様抱っこをして運んでくれた。
心愛には初めての体験だった。
小柄だが筋肉質な逞しい胸と、太い二の腕。
今、思い出しても顔がにやけてしまう心愛。
だが、最後の夜の出来事には彼女は強い衝撃を受けていた。
寝取り友達ってああいうことだったんだと、心愛は理解した。
もし、自分が文弥の彼女になったら、『同じことをしないといけないのかしら』と心愛は悩んだ。
経験のない心愛には、考えても答えは出なかった。
でも、やっぱり文弥以外の人は嫌だなと思う心愛だった。
どうすれば、自分のことを文弥は好きになってくれるのだろか、心愛は真剣に考え出した。
人の彼氏を奪い取るだけで、付き合うことなんて考えてこなかった彼女にとっては今までの自分が嘘のような変化だった。
文弥の顔を思い出すだけで、胸の奥が苦しくなる。
「……文弥くん。明日も会いに行くね」
謎の声(……恋する乙女かな?)
◇◇◇◇◇◇◇◇
別荘から帰ってきた夜、文弥は激しい自責の念に駆られていた。
机に向かい、両手で髪を鷲掴みして頭を抱えている。
文弥が後悔していたのは、最後の夜の一馬と紬の行為ことだった。
あの時は寝取られ愛に夢中になっていて、文弥は大事なことを忘れていたのだ。
「何で僕はあの時カメラを回さなかったんだ! 最高の寝取られ動画だったのに!」
謎の声(後悔してるのってそっち?)
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