第1章10話
車で走ること三十分。
紬と一馬は人里離れた別荘のような建物の中へと連れていかれた。
二人とも結束バンドで両腕を後ろで縛られ、拘束されていた。
しばらくするとカメラが設置された。
「律さん。用意できましたよ」
「ご苦労様でした。では、このコーヒーを飲んだら始めますか。二人とももう少しだけ待っていてくださいね」
律はアイスコーヒーを一口飲むと、どす黒くなった瞳で二人を見つめる。
「おい、ここはどこだよ! 槙原に何する気だ!」
「ここは私の親が所有してる別荘みたいなものですよ。街から近いので女性を連れ込むのに使ってます」
律の親は病院を経営していて、家は一馬にも負けず劣らずの金持ちだった。
「…………」
紬は怖くてただ震えていた。
「これから紬さんと寝取られ動画を撮影しようと思いましてね。きっと文弥くんも喜んでくれますよ。ふふふ」
「何だと! ふざけんな! そんなことさせるか!」
一馬は律に身を投げ出すように体当たりをしたが、律に軽くかわされそのまま転倒してしまった。
「暴れないでくださいよ。せっかくあなたには紬さんが、泣き叫びながら私たちに犯されるとこがじっくり見れる特等席を用意したんですから」
「くそっ! やらせるかよ」
一馬は立ち上がろうとするが、両腕を拘束されているためうまく力が入らずなかなか立ち上がることができない。
一馬がもがいているところに坊主の男から、腹に思い切り蹴りをもらい吹っ飛んだ。
「瀬名くん! 大丈夫!」
「人の心配してる場合ではないですよ。ふふ」
律は紬にじりじりと詰め寄っていくと、彼女の顔にそっと触れた。
そして、顔を近づけてくる。
「やめて! 私に触らないで!」
キスされると思った紬は顔を背けようとする。
だが、律に顔を掴まれ、再び正面を向かされた。
そんな攻防の中、インターホンが部屋に鳴り響いた。
「誰ですかね? お客なんか来ないはずですが」
律は不思議そうな顔をしている。
「俺が見て来ますよ」
金髪ピアスが部屋を出て玄関の方へと向かった。
少ししたら金髪ピアスの叫声が聞こえた。
「な、何だてめえは!……ぐふっ」
何やら殴打する音が聞こえた思ったら、部屋のドアがゆっくりと開いた。
そこには金髪ピアスを引きずる文弥が立っていた。
「文弥くん? なぜ君がここにいるんですか?」
律は文弥を見て困惑している。
「文弥くん!……ううっ」
紬は文弥を見てホッとしたのか、目にいっぱいの涙を浮かべていた。
「遅くなってごめんね。二人とも」
「まあ、いいです。文弥くんも寝取られ動画の撮影会を見学していくといいでしょう」
「どこが寝取られ動画なの? 女の子を無理やりするなんてただの犯罪でしょ」
「何だと。君ならわかってくれると思ったんですけどね」
自分に惚れさせてから、寝取ったあげく相手に別れを切り出して捨てる。
それが律の寝取り美学だが、いくらイケメンでも全ての女性が彼に惚れるわけがない。
自分に靡かないと思ったら無理やり犯して寝取るということを繰り返す、律はただのゲスだった。
「自分のことを好きにならないと思ったら、無理やりするんだ。最低だね」
「くっ! おい、文弥くんも捕まえて拘束しろ」
律は坊主の男とタトゥー男に命令した。
「やれるもんならやってみるといいよ」
「ふ、随分余裕ですね。三対一で勝てると思ってるんですか?」
「大丈夫だよ。僕一人じゃないから」
「……へ?」
律が間抜けな声を上げた瞬間──部屋に複数の警察官が雪崩れ込んできた。
『警察だ! 大人しくしろ!』警察の怒号とともに、あっという間に律たちは捕まり、連行されていった。
一馬と紬の拘束も警察官の手によって解かれた。
「助かったよ。文弥。ありがとな」
「ありがとう。文弥くん……ぐすっ」
紬は文弥に抱きついてただただ泣いている。
「気にしないでいいよ。来る途中に警察に位置情報を渡して、通報しておいたんだ」
「でも、ここにいるのがよくわかったな?」
「ああ、一馬くんと紬のスマホに追跡アプリを仕込んどいたんだよ」
「え? そうなの?」
いつの間にそんなのインストールされたのか、そういえば前にスマホ貸したことあったな、まさかその時に……『やっぱこいつヤベーな』と思う一馬だった。
「あのすみません。タクシー料金の方をお願いしたいんですが」
申し訳なさそうに部屋に入ってきたタクシーの運転手が、文弥に話しかけてきた。
「あ、すみません。一馬くんタクシー料金の方をお願いできるかな? 僕、お金ないから」
文弥は一刻も早く駆けつけたくて、単身タクシーで飛ばしてやってきたのだった。
「……お、おう。」
俺が払うのか? と思いつつも料金を支払う一馬。
その後、事情聴取を受けに警察署まで連れていかれ、夜になってやっと三人は解放された。
◇◇◇◇◇◇◇◇
数週間後の土曜日の午後。
一馬と紬は寝取られ動画を撮影するため、下着姿でベッドで準備をしていた。
カメラのピントをしっかりと合わせて、ぶれないように固定をする。
それを見て紬はブラジャーを外すと、一馬はベッドの上に座る彼女の後ろから優しく抱きしめた。
そして、紬の手のひらサイズの膨らみにそっと手を添える。
両手でゆっくり揉み解すと、小さく突起したものを指で優しく摘まんだ。
紬は大分上達した一馬の愛撫に、少しずつ顔が火照っていく。
まだ少しだが、一馬も紬が感じ始めているのがわかった。
やがて、一馬は胸を愛撫しながら、片方の手を紬のショーツへと伸ばす。
「……あ……ん……ん……っ」
ショーツ越しからの愛撫が気持ちよくて、紬は思わず吐息を漏らす。
「……ねえ、一馬くん……ん……っ」
「……何だ?」
「……この前は格好良かったよ……あっ」
「……そ、そうかな。助けたのは文弥だけど」
「……私を守ろうとしてくれてありがとう……んんっ」
思ってもみなかった言葉に、一馬の手に力が入る。
「……いたっ……そんな強く揉んだら痛いよ……」
「……あ、ごめん」
一馬は力を抜き、再び優しく揉み解した。
「今度は私がしてあげる」
紬は一馬の股間に手を伸ばすと、パンツの中に手を突っ込み彼のモノを弄りだした。
紬の柔らかい手に包み込まれ、一馬は早く果てそうになる。
一度はぐっと我慢した一馬だったが、紬の洗練された手の動きに果ててしまった。
「ご、ごめん。出ちゃった」
「……気にしないでいいよ。また硬くしてあげるから」
一馬がティッシュで汚れたモノを拭き取ると、紬は再び彼のモノを手で愛撫する。
少しすると、一馬のモノは再び硬くなっていった。
「……槙原……うっ……また出ちゃう」
一馬がまた果てそうになると、紬は手の動きを止めた。
「まだ駄目だよ。ふふ」
「……ま、槙原……俺もう……」
「……いいよ。来て。」
紬がうつ伏せに横になると、一馬は避妊具を装着した。
そして、紬の上に跨がる。
カメラの存在も忘れ、二人は何度も体を重なり合わせた。
謎の声(……何か恋人同士みたいになってきたね)
◇◇◇◇◇◇◇◇
夜の帳に激しい雨の爆ぜる音が部屋に響き渡る。
文弥はいつものように、机に向かって勉強していた。
今日はこの辺で終わりしようかと、ペンを止めたその時──机の上のスマホがブーブーと音を立て暴れだした。
『来たか』文弥は心踊らせて、スマホの画面を確認する。
そこには、一馬からの待望の新作の寝取られ動画が届けられていた。
文弥は早くも少し膨張する股間と、高ぶる衝動を抑えつつ動画を再生した。
そこには一馬と紬の性行為が映されていたのだが、いつもとかなり違っていた。
紬が少しずつ感じ始め、一馬のモノを少し激しく責めている。
一馬も紬を優しく丁寧に愛撫する姿が、映し出されていた。
「……素晴らしい」
文弥は狂気に満ちた漆黒の瞳で、動画を食い入るように見つめている。
文弥はようやく自分の望むものに、近づいていることに歓喜の笑みを浮かべた。
一馬のモノを優しい目をして受け止める紬の姿に、文弥は一馬への愛を感じていた。
これこそが寝取られ愛だと、文弥は確信した。
謎の声(未だに寝取られ愛の意味がわからないんだけど……)
「……僕が望んでたのはこういう作品だ」
文弥は恍惚の笑みを浮かべて、ポツリと呟いた。
謎の声(……また作品って言っちゃってるし……将来、パンツ一枚でカメラ回してたりしないよね)
抑えきれない欲望を吐き出すように、文弥は自分の股間に手を伸ばす。
そして、思う存分、枯れ果てるまで、狂っている欲求を解放した。
やがて疲れはてると、文弥は幸せそうな笑みを浮かべ深い眠りについた。
謎の声(今日もお疲れ様でした)
PVが今までにない感じで増えていて、とても励みになります。
読んでくださり、本当にありがとうございます。




