堅物団長と、規格外な魔力
魔法の設定や言い回しなど、分かりやすく調整しました!
それと、お話もかなり修正しております。
既読の方には違和感があると思いますが、ご了承ください。
「……なるほど。リナの魔力は、水属性……いえ。どうやら氷の性質が強く出ているようですね。ですが……少し妙ですね。詳しく調べてみないと」
アインス様がどこからか借りてきた魔力測定の水晶が、キラキラとした美しい光を放っていた。
「ただ、これなら異世界転移の歪みを見つけ出す『探知魔法』の習得もできるかもしれません」
「よかった……!」
「実戦での魔力感知を鍛えるには、一度、本物の『高密度な魔力』を肌で体感する必要がありますが……私の魔力では、少し密度が足りない」
アインス様がそう呟いた、その時だった。
「――なら、私が協力しよう」
軍服をきっちり着こなし、今日は髪をきっちり結んだアルベルト様が資料室の入り口に立っていた。
その立ち姿が、どこか大人の色気を醸し出して麗しい。
「あ! 団長! おかえりなさいませ。会議終わりましたか? 予定より早かったのですね」
「ああ、二人ともいないので、こちらかと思ってな。
私はもう公務を終えたんだが、また明日にでも資料を見てほしくて、そのための資料を取りに来た。
今の話は聞こえた。『高密度な魔力』が必要なら、私が協力しよう」
アルベルト様は私の前に歩み出ると、視線を少し落とし、じっと私を見つめた。
「リナ。私はアインスほどの繊細な魔法技術はない。だが、高密度な魔力は人よりある。どうだろうか?」
「は、はい! ぜひお願いします」
こちらからお願いすべきところを、アルベルト様から申し出てくれる優しさに心が温かくなる。
「アインス、今から『高密度な魔力』を体感させても問題ないか?」
「はい。今日はまだ検査だけですので、問題ありません」
「リナ、体調などは大丈夫か? 平気なら今からでもどうだろうか?」
「あ、ありがとうございます! お時間いただいてすみません!」
「……君が帰ろうとしているのは、知っている。協力したい」
アルベルト様が、そっと右手を前に差し出した。
次の瞬間――資料室の空気が、ピシッと音を立てて張り詰めた。
アルベルト様の手のひらの上に、見たこともないほど濃密で、眩いゴールドの魔力の塊が出現した。
「くっ……相変わらず、非常識な魔力量ですね。制御を誤れば、この城ごと消し飛びかねない」
さすがのアインス様も、一歩後ずさりして冷や汗を流している。
しかし、当のアルベルト様は、その暴力的とも言える規格外の魔力を、私を包み込むようにして、極限まで優しくコントロールしてみせた。
その表情はどこまでも冷静で、絶対的な実力者としての余裕に満ちている。
「心配するな。アインスが言う通り、これは少し密度が高すぎるが……その分、感覚を掴むには一番早い。
怯えなくていい。――傷つけはしない」
低く、耳元に響くような、落ち着いた大人の声。
アルベルト様は少し視線を和らげ、私を安心させるように真っ直ぐに見つめた。
「ゆっくり目を閉じて、この温かい波長に意識を預けてみてくれ。
……焦らなくていい。君のペースで、少しずつ掴んでいけばいいから」
私の身体に、アルベルト様の強力な魔力が触れる。
それは驚くほど穏やかで、そして不思議と私の心まで、じんわりと包み込んで守ってくれるような心地よさだった。
「……すごい、です。圧倒的なのに、すごく優しくて……背中を押されるような感覚がします」
私が感動に目を輝かせてアルベルト様を見上げると、アルベルト様は「フッ……」と小さく笑った。
「掴めたようだな。君の集中力なら心配ないと思っていた。……やったな」
大きな手が、私の頭をポン、とぶっきらぼうに、しかし優しく撫でる。
(……あ。なんだろう、これ。すごく……ドキドキする
ううん、違う!
これは『上司による熱血部下へのパワフルな指導』の一環だよ!
あっっぶない!
危うく好きになっちゃうところだよ。
もー!! 元カレのクソ野郎のせいで傷残ってんだから、ぐらつくな私!
勘違いしちゃダメ。元の世界へ帰るっていう部下のモチベーションを最大まで高めてくれようとしてるんだよ。
私も期待に応えて、もっと仕事も魔法も頑張らなきゃ!)
必死に自分に言い聞かせていると――
「……元の世界に帰れるといいな」
低く落ちたその一言に、思考が一瞬止まった。
顔を上げると、何だか物言いたげな表情をしていたけど――
すぐにポンポンと頭をなでて、いつもの顔に戻った。




