28.魔法でクッキングと、懐かしい味
騎士団本部へ戻る頃には、両手いっぱいだった荷物も、さすがに重く感じるようになっていた。
……アルベルト様だけは、牛乳の入った大きな容器を持ったまま、最後まで何ともなさそうだったけれど。
私たちはそのまま、食堂とは別に設けられている共同調理場へ向かった。
隊員が軽食を作ったり、持ち込んだ食材を調理したりするための場所らしい。
「では、一度ここで整理しましょう」
調理場へ入るなり、アインス様が買ってきた材料を順番に並べていく。
卵、砂糖、牛乳、ホワイトチョコ、バニラ、ミント。
米に似た穀物に、味噌と醤油に近い調味料。
白玉粉らしき粉、あんこ、苺、魚。
「……改めて見ると、すごい量ですね」
「誰がこんなに増やしたんだろうな」
ミナトが並んだ材料を見て笑う。
「ミナトもかなり乗り気だったでしょ」
「それは否定しないけど、リナも大概だったぞ」
「食べてくれる人がいると思ったら、色々試したくなったの」
一人暮らしをしていた頃は、作りたいものがあっても、一人で食べられる量には限界があった。
でも今日は違う。
一口サイズにすれば、色々なものを少しずつ試せる。
しかも食べてくれる人が、たくさんいる。
「とりあえず、プリンとアイス。それから夕食ですね」
アインス様が確認する。
「余裕があれば、大福とみたらしも作りたいです」
「増えていますよ」
「材料はもうありますから」
「だからといって、すべて今日作る必要はありません」
もっともだ。
「まあ、時間を見ながらやろうよ」
キリアンが笑った。
「アイスなら、そんなに時間もかからないと思うし」
「アイスが?」
「リナなら氷魔法使えるじゃん」
「……あ」
そこでようやく気づいた。
「魔法があった」
「今さら?」
ミナトが笑う。
「まだ、料理に魔法を使うっていう発想がないんだよ」
「普段は?」
「訓練くらい。日常生活ではほとんど使ってない」
「それはもったいないね」
キリアンが楽しそうに笑った。
「じゃあ今日は、料理での使い方も試してみようか」
「やる!」
思わず即答した。
「では、私たちは――」
アインス様が何か言いかけた時、調理場の入口から声がした。
「副団長、少しよろしいですか?」
振り返ると、第二部隊副隊長のマティアスさんが立っていた。
「お休みのところ申し訳ありません。確認していただきたい件が一つありまして」
「分かりました」
アインス様が私たちを見る。
「少し行ってきます。あなた達三人で作る予定だったのでしょう? そのまま始めていてください」
「はい」
「時間だけは忘れないように」
「ありがとうございます」
「それと、団長にも確認をお願いしたいのですが」
「私もか」
「すみません」
「構わない」
アルベルト様が牛乳の容器を調理台へ置いた。
「リナ、何かあれば呼んでくれ」
「はい!」
そうして、アルベルト様とアインス様は、マティアスさんと一緒に調理場を出ていった。
残ったのは、私とミナトとキリアン。
髪が邪魔にならないようまとめ直して、袖をまくる。
「じゃあ」
私は目の前の材料を見た。
「まずは、約束してたアイスから作ろう」
◇
「そういえば、昨日採ったパチパチする結晶は?」
尋ねると、キリアンが小さな容器を取り出した。
「これ」
「もう使えるの?」
「うん。昨日のうちに表面の食べられない部分を落としておいたよ」
蓋を開けると、ダンジョンで見た透明な結晶が、細かな粒になって入っていた。
「大きいままだと刺激が強いから、ある程度細かくしてある。これなら少しずつなら、そのまま食べても大丈夫」
「食べてみていい?」
「もちろん」
一粒だけ指先に取って、口へ入れる。
ぱち。
「わ」
ぱちぱちっ。
「すごい。本当にパチパチする!」
思わず笑う。
「これなら使える」
「昨日の結晶が、これになるのか」
ミナトも一粒だけ口に入れる。
「おお……結構くるな」
「面白いでしょ?」
キリアンも笑っている。
「これを、そのままアイスに入れるんじゃないんだよね?」
「うん。先にホワイトチョコでコーティングする」
「なんで?」
「アイスの水分に触れて、食べる前にパチパチしちゃうのを防ぐため」
「なるほど」
ホワイトチョコを細かくして、小さな器へ入れる。
キリアンが指先にごく弱い炎を灯した。
「これくらい?」
「うん。焦がしたくないから、ゆっくり溶かしたい」
柔らかな熱で、ホワイトチョコが少しずつ溶けていく。
そこへパチパチする結晶を加えて薄く絡め、今度は私が冷気を送った。
あっという間にチョコが固まる。
「……早い」
「便利だろ?」
「便利すぎる」
固まったものを細かく砕き、これで中に混ぜる材料は完成。
「次はアイスだね」
牛乳と砂糖、バニラを合わせる。
ミントは最初からたくさん入れず、ほんの少しずつ。
「前に日本で作った時も、ミント味っていうほど強くはしなかったんだよね」
「じゃあ香りが分かるくらい?」
「そう。入れすぎると別物になりそう」
味を見ながら少しずつ調整する。
「このくらいかな」
ミナトも一口味を見る。
「うん。これ以上入れるとミントが前に出そう」
「じゃあ、ここで止めよう」
問題はここからだ。
「リナ、一気に凍らせないでね」
キリアンが小さな器に少量の材料を移す。
「外側から少しずつ冷やして、混ぜながら固めていく」
器に手を添えると、縁にうっすらと霜が浮かんだ。
そのまま混ぜていくと、液体だったものが少しずつ、とろりとした状態へ変わっていく。
「ああ、なるほど」
氷を作るんじゃない。
中身を見ながら、固まりすぎないように冷やしていく。
「やってみていい?」
「どうぞ」
大きな器へ手を添え、混ぜたところから少しずつ固まる程度に冷気を送る。
「そうそう」
キリアンの声を聞きながら温度を調整する。
数回混ぜただけで、滑らかなアイスになった。
「できた」
「早いな」
ミナトが器を覗き込む。
「日本なら、ここから何時間も待つよな」
「そう。冷凍庫に入れて、途中で混ぜたりして」
「魔法って便利だな」
「料理に使うと、急に実感するね」
最後に、さっきのホワイトチョコで包んだパチパチ素材を混ぜる。
三人で少しずつ味を見ることにした。
冷たいアイスを一口。
バニラの甘さ。
ほんのりとしたミントの香り。
ホワイトチョコ。
そして。
ぱち。
ぱちぱちっ。
「……これ」
ミナトが目を見開いた。
「これだな」
「うん」
本物とまったく同じではない。
でも、十分だった。
もう一度食べられるとは思っていなかった味がする。
「美味しい……」
「成功じゃない?」
キリアンが笑う。
「うん」
ミナトと顔を見合わせる。
「ポッピングシャワーだ」
「ちゃんとパチパチするな!」
思わず笑った。
キリアンも楽しそうに笑っている。
「二人とも嬉しそうだね」
「そりゃね」
ミナトが少しだけ柔らかい声で言った。
「もう食えないと思ってた味だから」
「……うん」
それは私も同じだった。
◇
一度作り方が分かれば、そこからは早かった。
アイスは予定していた分まで作り、冷却できる保存庫へ入れておく。
続いてプリン。
最初に少量だけ作って固まり方と甘さを確認し、問題なさそうだったので残りもまとめて作った。
牛乳を温める時は弱い炎。
出来上がったプリンを冷ます時は氷魔法。
使い終わった器は、その都度、調理場に備え付けられた洗浄魔道具へ入れていく。
洗浄魔法で表面の汚れが浮き上がり、水と一緒に流れたあと、最後は温かな風が水気まで飛ばしてくれる。
「これ便利だな」
ミナトが洗い上がった器を取り出す。
「日本の食洗機みたい」
「食洗機?」
キリアンが聞く。
「食器を洗ってくれる機械」
「似たようなものなんだ?」
「仕組みは全然違うけど、結果は似てるね。魔法の方が全然早いけど」
こういうところを見ると、魔法のある生活も悪くない。
「プリンも味見しようか」
一つを三人で分ける。
「……プリンだ」
ミナトがしみじみと言った。
「ちゃんとプリンだね」
「美味しい」
キリアンも頷く。
「よかった」
胸を撫で下ろす。
「じゃあ、次」
「まだやるんだ?」
「せっかくだから、少しだけ」
白玉粉らしき粉を手に取る。
ミナトが笑った。
「その『少しだけ』、今日はあんまり信用できないな」
「一口サイズにするから大丈夫」
「量の問題じゃない気がする」
◇
白玉粉らしき粉も、思っていた以上に扱いやすかった。
水で練り、まずは小さく丸めて湯へ落とす。
浮いてきたものを取り出し、醤油に近い調味料と砂糖で作った甘辛いタレを絡めた。
「みたらし」
半分に切って味を見る。
「かなり近い」
ミナトも頷いた。
「うまい」
「じゃあ大福もいけそう」
残った白玉粉では、大福用の生地も作る。
火を通して柔らかくなった生地で、苺とあんこを包んだ。
チョコを入れたものも少しだけ。
キリアンはこういう細かな作業が得意らしく、私より綺麗に生地を閉じていく。
「器用だね」
「こういうの好きなんだよ」
「すごい」
そして、さっき作ったアイスも小さく丸めて冷やし、冷ました白い生地で包んでみる。
「……アイス大福」
「これは絶対うまいだろ」
ミナトが言う。
「一個食べる?」
「食べる」
「オレも一つだけ」
「じゃあ私も」
三人で一つずつ。
本当に一口で食べられるくらい、小さく作った。
「美味しい」
「これ、普通に売れそうだな」
「ほんと! 私も買いに行きたい」
「確かに定期的に食べたいかも」
そんなことを話しながら、夕食の準備へ移った。
◇
米に似た穀物は、一度目は少し水が多かった。
「柔らかいな」
ミナトが一口食べる。
「でも、味はかなり近い」
「次は少し水減らしてみようか」
「そうだな」
少量だけもう一度試す。
今度はかなりそれらしく炊き上がった。
蓋を開けた瞬間、湯気が立ち上る。
「……ご飯だ」
思わず呟いた。
「な」
ミナトも少しだけ静かな声になる。
それ以上は言わなかった。
でも、たぶん同じことを考えている。
味噌汁。
焼き魚。
魚の煮付け。
醤油に近い調味料を塗った焼きおにぎり。
日本とまったく同じではない。
それでも、並べてみると懐かしい食卓に見えた。
「昨日、おにぎり食いたいって話してたのにな」
「今日もう食べられるね」
「展開早いな」
「すごく嬉しい」
笑いながら、残っていた卵と牛乳を保存庫へ入れる。
「これはまた今度使おう」
「まだ作る気なんだな」
「ポンデリングも作れそうだなとは思ってたんだけど、さすがにね」
「それも食べたいな」
「え? 今日?」
「いや、今日はもういいだろ。これ以上増やしたら食べきれない」
「そうだね」
「もう夕食の時間だし、今日はここまでにしようよ」
キリアンにも言われて、私は頷いた。
「うん。おしまい」
そこで時計を見ると、本当にもう夕食の時間になっていた。
「思ったよりかかったね」
キリアンも時計を見る。
「アルベルト様とアインス様にも声をかけないと」
「さすがに、もう仕事は終わってるんじゃない?」
ミナトに言われ、調理場を出ようとしたところで、ちょうど二人がこちらへ戻ってくるのが見えた。
「終わりましたか?」
アインス様が尋ねる。
「はい。ちょうど今、夕食にしようと思ってたところです」
「それはよかった。こちらも終わりましたよ」
「そうだ。ルディ様にも声をかけた方がいいですよね」
プリンとアイスは、一緒に食べる約束をしている。
「ルディにも、夕食をどうするか聞いてきましょう」
アインス様が言った。
ほどなくしてやって来たルディ様は、調理場へ入るなり保存庫の方を見た。
「できた? プリンとアイス」
「できましたよ。でも、先に夕食にしようと思ってます。ルディ様も食べますか?」
「僕はいいよ。魔術団で軽く食べてきたから」
そう言ってから、少し考える。
「でも、プリンとアイスは食べる」
「そこは別腹なんですね」
「もちろん」
「じゃあ、食後に出しますね」
「うん。食べ終わる頃にまた来る」
「分かりました」
満足そうに頷いて、ルディ様は一度戻っていった。
(おやつのつもりだったのに、結局デザートになっちゃった)
◇
食べる準備をして、五人で夕食を囲んだ。
「これが、前に話していた米ですか?」
アインス様が焼きおにぎりを見る。
「かなり近いものです。最初は水加減を失敗したんですけど、二回目でそれらしくなりました」
「美味しい」
アルベルト様が魚の煮付けを食べながら言った。
「この味付けも私は好きだ」
「本当ですか?」
「ルディの分も、私が食べてもいいか?」
「はい、ぜひ食べてください」
美味しそうに食べてくれて、自然と頬が緩む。
「味噌汁もかなり日本のものに近いよな」
ミナトが言う。
「うん。ちょっと違うけど、十分」
食べているうちに、不思議な気持ちになった。
異世界の調理場で。
異世界の材料を使って。
魔法まで使って作った料理なのに。
どこか、昔の食卓に帰ってきたみたいだった。
◇
食事が終わった頃、約束通りルディ様が戻ってきた。
「プリンとアイス」
「はい。ちゃんとありますよ」
「三つずつ?」
「あります」
「よし」
満足そうに頷く。
まずはプリンを一つ。
「……美味しい」
ルディ様の顔が、明らかに緩んだ。
「こっちも食べてください」
今度はアイス。
口の中でパチパチ弾けた瞬間、ルディ様の目が丸くなる。
「何これ」
「面白いでしょう?」
「うん。好き」
アイスを食べ終えると、ルディ様が残っているプリンとアイスを見る。
「これ、明日も食べられる?」
「保存庫に入れておけば大丈夫だと思います」
「じゃあ、多めにもらっていい?」
「三つずつって言ってたのに」
「今日はね。明日の分もあるならもらう」
アインス様が小さく笑った。
「そんなに気に入りましたか?」
「なかなか珍しいよね。他のデザートも食べたい」
その隣で、アルベルト様もアイスを一つ手に取った。
「ああ。これは美味しい」
一口食べて、ふっと笑う。
「リナが作ったものは、何でも美味しいな」
「本当ですか?」
「ああ」
「よかったです」
素直に嬉しくなって笑う。
その時、ふとミナトを見ると。
アルベルト様を見て。
アインス様を見て。
今度はキリアンを見る。
そして、一人で小さく頷いた。
「…………なるほど」
「ミナト?」
「いや、何でもない」
まただ。
時々こういう顔をする。
何が「なるほど」なのか気にはなったけれど、今は聞かないことにした。
余った分については、アインス様が数を確認してくれた。
「残りは、私が適当に配っておきますよ」
「お願いします」
それでも残ったものは、無理に今日食べず、保存庫へ。
プリンもアイスも、明日また食べればいい。
……そう。
明日でもよかったのだ。
「…………」
そこで、私はようやく気づいた。
いや、気のせいと思いたかった。
なんだか……お腹が苦しい。
アイスの味見。
プリンの味見。
みたらし。
苺大福。
チョコ大福。
アイス大福。
全部一口ずつだった。
でも、そのあと普通に夕食を食べて、食後にプリンとアイスも食べた。
それだけじゃない。
昼も、アルベルト様が三種類頼んでくれた料理を少しずつとはいえ、結構食べている。
「…………」
「リナ?」
キリアンが私を見る。
「どうしたの?」
「ちょっと……食べすぎたかも」
お腹に手を当てる。
さっきから、じわじわと痛い。
「大丈夫?」
「うん。少し休めば大丈夫だと思う」
椅子に座って、そっと机に肘をついた。
(神様。今日は調子に乗りました。本当にごめんなさい)
一口ずつなら大丈夫だと思っていた。
種類が多ければ、結局同じだ。
(だからお願いします。このお腹の痛みだけ、なんとかしてください……)
「リナ」
顔を上げる。
アルベルト様が心配そうにこちらを見ていた。
「腹が痛いのか?」
「……少しだけです」
アルベルト様が懐から小瓶を取り出す。
見覚えがある。
「飲め」
「え」
ポーションだった。
「いや、これは駄目です」
「なぜだ?」
「食べすぎですよ? こんなことでポーションを使うなんて」
「だが、腹が痛いんだろう?」
「それはそうですけど……銀貨一枚ですよね?」
「金のことは気にしなくていい」
「そういう問題じゃないんです」
日本円で一万円。
自分で食べすぎて、その腹痛を治すために一万円。
勿体なさすぎる。
「そんな使い方するくらいなら、一万円で美味しいもの食べたいです」
「今、お腹が痛い人の発言とは思えませんね」
アインス様に言われた。
横で、キリアンが苦笑する。
「オレも止めればよかったね。ごめん」
「キリアンは悪くないよ。自分で食べたんだから」
「でも、楽しそうだったから、そのままにしちゃった」
「楽しかったのは本当だから」
アルベルト様は少し困ったように私を見る。
「リナ。今日はたくさん作って疲れただろう」
小瓶をもう一度差し出す。
「疲れを取ると思って飲めばいい」
ミナトがぼそっと呟いた。
「……なんか高級ユンケルに見えてきた」
「やめて。笑うとお腹痛い」
「ごめん」
「ユンケル?」
アルベルト様が首を傾げる。
「日本で、疲れた時とかに飲むものです」
「なら、ちょうどいいじゃないか」
「違うと思います」
思わず答えてから、急に恥ずかしくなってきた。
「……朝は二日酔いで、夜は食べすぎって」
顔を覆う。
「本当に恥ずかしいです! ごめんなさい」
「なぜ謝る」
アルベルト様が困った顔をする。
アインス様は少しだけ笑った。
「反省しているなら大丈夫ですよ」
そして、アルベルト様の持っているポーションを見る。
「確かに食べすぎでポーションを飲む人は普通いませんが、だからといって痛みを我慢する必要もありません」
私へ視線を戻す。
「団長もこう言っていますし。さ、お腹が痛いなら飲みなさい」
「でも……」
「リナ」
アルベルト様が小瓶を差し出した。
「私が渡したいと思って渡しているんだ。気にしなくていい」
「…………」
一万円。
でも、お腹は痛い。
しかも、みんなが飲めと言っている。
しばらく小瓶を見つめてから、観念して受け取った。
「……いただきます。ありがとうございます」
「ああ」
一気に飲む。
少し苦い。
しばらくすると。
「……あ」
じわじわ続いていた痛みが、少しずつ引いていく。
胃の重さまで楽になってきた。
「効いた?」
ミナトが聞く。
「……効いた」
「すごいな、ポーション」
……なんだか、朝にも似たようなやり取りをした気がする。
私は空になった小瓶を見つめた。
(またポーションに助けられてしまった……)
アインス様が小さく息を吐いた。
「まさか一日で使い切るとは思いませんでしたが、多めに用意しておいて良かったですね」
朝は二日酔い。
夜は食べすぎ。
今日は本当に、どうかしている。
それでも。
昼にはみんなでご飯を食べて。
市場を歩いて。
魔法を使って料理をして。
もう食べられないと思っていた味を、もう一度食べることができた。
お腹が痛くなるまで食べたのは、反省しないといけないけれど。
「次からは、ちゃんと加減します。本当にご心配かけてすみません」
アインス様が頷いた。
「そうしてください」
「はい」
アルベルト様も、ようやく安心したように微笑んだ。
その横でミナトとキリアンが笑う。
異世界で食べた、懐かしい味。
次はもう少しだけ、ほどほどに楽しもうと思う。
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