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トラウマ持ち事務員ですが、騎士団員たちの好意はきっと…勘違いです。  作者: 壬ひなた。


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15/23

騎士団の全体集会と、新しい出会い


 今日は、年に一度の王国騎士団の全体集会が開かれる。


 普段はそれぞれの部隊で活動している騎士たちが一堂に会し、王国各地の魔物被害や治安状況、警備体制などを共有する日だ。


 そして明日は、近衛騎士団と王国魔術団も加わった合同集会が予定されている。


 私は、その両方に参加することになっていた。


 全体集会へ向かう準備をしながら、昨日教えてもらった作法を頭の中で繰り返す。


 整列する位置、礼の仕方、立つタイミング。


 昨日、アルベルト様とアインス様に一通り教えてもらったけれど――。


「……もう一回、礼のタイミング確認してもいいですか?」


「昨日あれだけ練習したでしょう」


「分かってますけど! 本番になると不安なんです!」


「少し間違えても大丈夫ですよ。まだ入って間もないのは皆わかっています」


「でも、ちゃんとしたいんです! アルベルト様の隣だと目立つじゃないですか!」


 今日はいつものように団長室で仕事をするのではなく、騎士団の一員として皆と一緒に全体集会に参加する。


 しかも、普段は顔を合わせることのない騎士たちまで大勢集まるらしい。


 考えれば考えるほど緊張してきた。


「大丈夫ですよ。それよりもリナ、軍服似合ってますね」


「本当ですか?」


 改めて鏡に映った自分を見る。


「……初めて軍服を着ました。かっこいいです」


 今日はいつもの事務員用の制服ではなく、女性騎士用の軍服を身につけている。


 黒を基調とした軍服は、普段着ている制服よりもずっと凛々しい。


「ああ。リナ、似合ってる。その髪飾りも」


「あ、気づきました? 前にいただいた髪飾り、今日つけてきました!」


「贈り物をつけてもらうのは、こんなに嬉しいものなんだな」


「団長、感極まるのは結構ですが、そろそろ行きますよ」


「アインス、ハンカチあるか」


「あいにく今は持っていません。そちらに台拭きならあります」


「ならいい」


 相変わらずの辛辣さに、思わず笑ってしまう。


 少しだけ緊張がほぐれた。





 大広間へ向かうと、すでに大勢の騎士たちが集まっていた。


 見慣れた黒い軍服が、広い会場を埋め尽くすように並んでいる。


「すごい……」


 思わず足を止めてしまった。


(こんなにいるの?!)


 さっきまで少しほぐれていた緊張が、一気に戻ってくる。


「リナ」


 呼ばれて振り向くと、アルベルト様が立っていた。


「そろそろ整列する。私の隣に立ってくれ」


「はい!」


 返事をしたものの、やっぱり緊張する。


「……アルベルト様」


「どうした?」


「昨日教えてもらった通りにすれば、大丈夫ですよね?」


「ああ。何も心配する必要はない」


 アルベルト様が穏やかに私を見る。


「いつも通りでいい。リナはもう、騎士団の一員だからな」


「……はい!」


 私はアルベルト様の隣へ向かった。


 女性騎士用の軍服を着て、大勢の騎士たちの前で団長の隣に立つ。


 緊張はしている。


 でも、少しだけ嬉しかった。


 やがて全員が整列し、全体集会が始まった。


 各部隊から、王国各地で発生している魔物被害や治安状況、警備体制についての報告が行われる。


 私はアルベルト様の隣で、その様子を眺めていた。


 普段は団長室や第一部隊で仕事をすることが多く、最近になってアインス様から第二部隊の仕事を頼まれるようになったくらいだ。


他の部隊の騎士たちとは、ほとんど顔を合わせる機会がない。


 こうして改めて見ると、知らない騎士がたくさんいる。


 報告が一通り終わると、アルベルト様が騎士たちの前へ出た。


 さっきまで私と話していた時とは、纏う空気が少し違う。


「各部隊、報告のあった地域について必要な対応を進めてくれ。詳細はこの後の会議で詰める」


 大勢の騎士たちを前に、アルベルト様が指示を出す。


(……やっぱり、騎士団長なんだな)


 いつも団長室で話している時には、つい忘れそうになる。


 けれど、こうして大勢の騎士たちを率いる姿を見ると、改めてアルベルト様がこの騎士団の一番上に立つ人なのだと実感した。



 全体集会が終わり、この後に行われる隊長や副隊長たちの会議を前に休憩へ入った頃。


「お疲れさまです、団長」


 最初に声をかけてきたのは、がっしりとした大柄な男性だった。


 短く切った深紺の髪に、日に焼けた肌。見るからに騎士らしい逞しい体格をしているけれど、豪快な笑顔のせいか威圧感はあまり感じない。


「ガルド」


「今年も相変わらず大人数ですな!」


 その人は、第三部隊を率いる隊長らしい。


「こちらが例の?」


 ガルドさんが私を見て向き直る。


「はい。リナです」


「おう! 俺はガルド。第三部隊を任されてる」


「よろしくお願いします」


「こっちこそよろしくな!」


 大きな手を差し出され、握手を交わす。


「団長から話は聞いてる。異世界から来たっていうから、どんな感じなのかと思ったが……」


 ガルドさんが私をじっと見る。


「すげぇ別嬪な女の子でびっくりだよ! こりゃ団長も骨抜きになるわ!」


「ガルド」


 隣から女性の声がした。


 振り向くと、鮮やかなオレンジ色の髪をきっちりとまとめた女性が立っていた。


 華やかな顔立ちだけれど、隙なく着こなした軍服と凛とした立ち姿からは、しっかり者らしい雰囲気が伝わってくる。


「失礼なこと言わないの。謝りなさい」


「え?! 褒めたつもりだが――」


「初対面の女性に言うことではないでしょう。少しは考えてから口にしてください」


「……ごめんな。褒めたつもりだったんだ」


 ぴしゃりと言われ、ガルドさんが大人しく謝る。


「申し訳ありません。私はエレナ。第三部隊の副隊長をしています。そして、こちらのガルドの妻です。以後お見知りおきください」


「いえ、こちらこそ、よろしくお願いします!」


 エレナさんは柔らかく微笑んだ。


 なるほど。


 この二人が噂の第三部隊長夫妻か。


 夫婦で同じ部隊を率いているなんて、すごい。


 その後も、何人かの隊長や副隊長が挨拶に来てくれた。


「第四部隊長のキリアンです」


 そう名乗った男性は、他の騎士とは少し違う雰囲気をまとっていた。


 ミルクティー色の髪をツーブロックにカットして、黒縁のウェリントン型の眼鏡をしている。


 とても整った顔立ちで、眼鏡越しに見える赤い瞳がとても印象的だった。


 宝石のように澄んだ赤色で、思わず綺麗だなと思った。


 穏やかな表情を浮かべているけれど、その視線はさりげなく周囲を観察しているように見えた。


(この人が、偵察や情報収集を担当する第四部隊長なんだ)


 なんとなく納得してしまう。


「お噂は伺っています。異世界から来られた事務官殿ですね」


「はい。リナです」


「リナさんは氷の精密操作がお得意だとか。実は私も同じです」


「え? そうなんですか?!」


「はい。私は氷と炎の精密操作が得意なんですが、氷ならこんなこともできますよ」


 キリアンさんが手のひらを掲げると、そこに氷でできた白鳥の彫刻が現れた。


「すごい! そんな使い方もできるんですね」


「料理にも応用できて、お菓子作りにも使えますよ」


「え?! 例えば?」


「例えば、異世界のアイスクリームとか」


「え!?」


「口の中でパチパチするアイスも作れますよ」


「ええ?!」


「以前、他の国で、日本から来たという異世界人に会ったことがあるんですよ」


「ええぇ?!?!」


「第四部隊は偵察や情報収集を担当していますから。何か聞きたいことがあれば、いつでも聞いてください。教えられることは教えますよ」


「ぜ、ぜひ! よろしくお願いします!」


 キリアンさんは穏やかに笑った。


 その笑顔は余裕があって、少しだけどきりとした。


「お! 君がリナちゃん?」


 突然、聞き慣れない声が後ろから飛んできた。


 振り向くと、そこにはにこにこと笑っている男性がいた。


 茶色の髪に茶色の目。癖毛を後ろでひとまとめにしている、ワイルドな感じの人だった。


 顔は整っているけど、その雰囲気になんか警戒してしまう。


「初めまして。俺の名前はオスカー。第一部隊の副隊長だ」


「……初めまして」


「第一部隊……」


 ということは、アルベルト様の部下だ。


 第一部隊はアルベルト様が団長と隊長を兼任していて、副隊長が二人いる。


「よろしくお願いします」


「よろしく。いやー、やっと会えた」


「……?」


「団長付きの事務官って、どんな子なんだろうってずっと気になってたんだよ」


「そうなんですか?」


「うん。で、実際会ってみたら――」


 オスカーさんが私をじっと見る。


「思ってたよりめっちゃ可愛い」


「…………」


「ねえ、リナちゃん」


「はい?」


「今度デートしよ?」


「イヤです」


「即答!?」


 思わず一歩後ずさる。


「なんで? 俺、一緒にいると楽しませられるよ?」


「では、他の方とどうぞ」


「え? なんか、キリアンの時と態度全然違うくない?」


「困ります」


「えー、でも喜んでくれる子、多いよ?」


「では喜ばれる方とご一緒されてください」


「はは! なーんか、簡単に靡かないところに痺れちゃったなー。本気で口説いちゃおうかな」


 悪びれもせず笑うオスカーさん。


 ……この人、チャラい。


「オスカー」


 低い声が響いた。


 アルベルト様だ。


「はい?」


「リナから離れろ」


「えー。せっかくリナちゃんと話せたのに」


「離れろ」


「団長。なんか怖くないですか?」


 オスカーさんは肩をすくめる。


「じゃあリナちゃん、また後で」


「もう来ないでください」


「はは! それは困るなあ」


 そう言って笑いながら去っていく。


 私はその背中を見送った。


「……なんなんでしょう、あの人」


「女性を見れば口説きたくなるようだな。リナ、不快な思いをさせてすまない」


「団長、あの人、また来ますかね」


「どうだろうな」


 私がため息をつくと、アルベルト様が少しだけ眉を寄せた。


「……なるべく騎士団内で会わないように、遠征を増やそうか」


「団長、私情を挟むのは良くありませんが、リナに辞められると困ります。またリナに近づいたら、雷魔法でお仕置きしてはいかがでしょう」


「そうしよう。アインス、お前天才だな」


 年に一度の全体集会。


 普段は顔を合わせない騎士たちと交流する日。


 そして私はこの日、これまで知らなかった騎士たちと出会った。


 豪快な第三部隊長と、しっかり者の副隊長。


 掴みどころのない第四部隊長。


 そして――


 とにかくチャラい第一部隊の副隊長。


 少し離れたところから、オスカーさんの声が飛んできた。


「リナちゃーん! 次の遠征から戻ったら、デートしようなー!」


 アルベルト様の眉がぴくりと動いた。


「……オスカーの次の遠征はレオが担当だったが、しばらくオスカーにしておく」


 それを聞いていた隣のレオくんが、嬉しそうに声を上げた。


「え?! やったー! ラッキー♪」


「レオはもっと副隊長らしく落ち着いてください。ラッキーじゃないでしょうに」


「はい! すみません、副団長! 頑張ります!」


(レオくん、書類全然書けないけど……そういえば副隊長だった)


 私は思わず遠い目をしてしまった。


やっと、描きたかったメンバーが揃いました!


今、ChatGPTでこの作品のイラストを作っています。

少しずつ形になってきたので、近いうちにお披露目できたらと思っています!


イラストが完成したら、後書きや活動報告でお知らせします。


初めての投稿で、読んでもらえるかな?と思っていたので、こうして読んでくださる方がいてとても嬉しいです!


ブックマークや評価、リアクションまでしてくださった方も、本当にありがとうございます!

とても励みになっています!

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