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トラウマ持ち事務員ですが、騎士団員たちの好意はきっと…勘違いです。  作者: 壬ひなた。


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13/21

初めての飛行と、団長の魔法


 ついに、人生で初めて空を飛ぶ。

 ワクワクが止まらない。


「じゃあリナさん。これから飛行訓練を行います。よろしくお願いします。」


「はい!よろしくお願いします!」


「最初は身体に魔力を巡らせて、足元に魔力を集めます。そこから少しずつ身体を軽くする感じです」


「身体を軽く……」


「そうです。無理に上へ行こうとすると、魔力の制御が難しくなりますから」


 私は言われた通り、身体の中へ魔力を巡らせる。


「まずは少しだけ浮いてみましょう」


 足元へ魔力を集めると、身体がふわりと軽くなった。


「……浮いた!」


「そのままです!」


 ほんの数センチ。


 それでも、確かに地面から離れている。


「すごい……!」


「じゃあ、そのまま少し前へ――」


 身体を傾ける。


 すると、ふわりと前へ進んだ。


「わ! 進んだ!」


「すごいですよ、リナさん!」


 レオくんも嬉しそうに笑う。


 まだ自由自在とはいかないけれど、空を飛ぶ感覚が楽しくて仕方ない。


「もう少し高く飛んでみてもいいですか?」


「いいですよ。ただ、無理はしないでください」


 私は魔力を少しだけ強めた。


 身体がふわりと持ち上がる。


「わ……!」


 地面が少し遠くなる。2メートルほど上がった。レオくんもアルベルト様も視線の下に来る。


 いつもみてる景色とまるで違う。


 嬉しくなって、もう少しだけ魔力を増やした。


 その瞬間。


「きゃっ!」


 身体が大きく傾いた。


「リナさん!」


 レオくんがすぐに飛んで来て、落ちかけた私の身体を抱き止めてくれた。


「大丈夫ですか?」


「は、はい……ありがとう。レオくん。」


 思ったより近くにレオくんの顔があって、ドキドキして、慌てて離れた。


「……加減が難しいね。」


「初めてなら仕方ないですよ」


 レオくんが笑う。


 そのとき、後ろからアルベルト様の声がした。


「レオ。助けるのが少し早い」


「え?」


 レオくんが振り返る。


「今のなら、自分で姿勢を戻せたはずだ」


「でも、落ちたら危ないですよ」


「いつでも助けられたら、リナに技術が身につかない。私が見ているので大丈夫だ」


「……なるほど」


 レオくんが少し考えるように頷く。


「今のは自分で立て直せたんですか?」


「ああ」


 アルベルト様が私を見る。


「……私、できるでしょうか?」


「次はできる」


 短い言葉だった。


 でも、その一言が妙に心強かった。


「じゃあ……もう一回やってみます!」


 再び魔力を巡らせる。


 今度は焦らず、身体の傾きを感じながら少しずつ高度を上げていく。


 ふわり。


 身体が浮かせて高度を上げる。先ほどと同じ高さへ。


 グラグラしつつも、さっきより安定している。


「できた……!」


「その調子です」


 レオくんの声を聞きながら、私は慎重に前へ進んだ。


 数メートル進んだところで、ゆっくりと地面へ降りる。


「やった!」


 自分の力で空を飛べた。


 まだほんの少しだけ。


 それでも、嬉しくて仕方なかった。


「初めてにしては上出来だ。さすがだな。」


 アルベルト様が、ふっと笑う。


 その笑顔に、胸が小さく跳ねた。


「ありがとうございます!」


 嬉しくなって笑い返す。


 すると、ふと疑問が浮かんだ。


「そういえば、アルベルト様も飛べるんですよね?」


「ああ、だが、私はあまり飛行魔法は使わない」


「え?」


「雷魔法で移動する方が速いからな」


「……雷で?」


「ああ」


 そう言った瞬間。


 ――バチッ!


「え?」


 目の前にいたアルベルト様の姿が消えた。


「ええっ!?」


 次の瞬間には、十数メートル先の空中にいた。


「……瞬間移動!?」


 思わず叫ぶと、レオくんが吹き出した。


「びっくりしますよね。雷と風の複合魔法です」


 ――バチッ!


 アルベルト様が再び目の前へ戻ってくる。


「あ、アルベルト様って雷属性使えたんですね!」


「ああ。使える人間はあまりいない」


「すごいです!」


 思わず詰め寄ると、アルベルト様が少しだけ目を細めた。


「そう素直に褒められると、嬉しいものだな」


 そう言って、穏やかに笑う。


 ……やっぱり、かっこいい。


 「団長って、本当にすごいです!」


「……リナ、あまり褒められると照れてしまう」


「いえ!本当にすごいです!カッコ良すぎます!」


すごいすごいという私に団長の顔が真っ赤になっていく。


「リナさん、その辺にしないと団長が茹でタコになっちゃいますよ」


「え!あ、ごめんなさい。アルベルト様。つい興奮してしまって!!私ももっと練習して、ちゃんと飛べるようになりたいです!」


「そうだな」


 アルベルト様が頷く。


「次は、もう少し高く飛んでみるといい」


「はい!」


 こうして私は、空を飛ぶ楽しさと――アルベルト様の、とんでもない移動速度を知った。


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