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〜顔面国宝の引きこもりとナンバーワンホストと女子高生が悪のホワイト企業と戦うそうです〜  作者: 虹の箸


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ただしイケメンに限る

桃井ももい りん

彼女――元・悪の組織の怪人候補生は、かつて高校柔道日本一に輝き、日本代表強化選手にまで選ばれたトップアスリートだった。

柔道での特別推薦を受け、名門校に特待生として入学。文字通り、柔道のみに青春の全てを捧げ、集中し切った日々を送っていた。

だが、悪夢は突然訪れた。

ある重要な試合中、劣勢に立たされた対戦相手が、焦りのあまり強引で危険な技を仕掛けてきたのだ。凛は咄嗟にそれをかわしたものの、不自然な体勢でマットに倒れ込み……二度と畳の上に立てなくなるほどの、致命的な大怪我を負ってしまった。

病室まで謝罪に来た対戦相手は、ベッドの脇で涙ながらに頭を下げていた。

だが、凛は見てしまったのだ。相手がうつむきながら、口元に「ざまぁみろ」という歪んだ笑みを浮かべていたのを。

さらに追い打ちをかけるように、学校側は柔道ができなくなった彼女に対して手のひらを返した。特待生待遇を即座に打ち切るどころか、あっさりと放校処分を下したのだ。

裏切り、悪意、そして全てを奪われた絶望。

心にポッカリと空いた巨大な闇。そこにつけ込んだのが、人々の負の感情を餌とする『悪のプラーナ』だった。

悪の組織にスカウトされた凛は、「思い込んだら命懸け」という生来の極端な性格のまま、今度は悪の道を文字通り爆進していたのである。

……たった数時間前まで。

その全てが、あの一瞬で裏返った。

あの中性的な、それでいて知性を感じさせる、圧倒的な美貌。ぶっちゃけドストライクなレッドの素顔のせいである。

 

結局、夜の街をいくら探し回ってもレッドの姿は見つからず、凛は自分の部屋へと帰ってきていた。

制服のままベッドにダイブし、枕を両手でギュッと抱きしめる。

「ああっ……湊……っ」

脳裏に鮮明に焼き付いた、黒縁メガネを外す仕草。あの戸惑ったような、少し怯えたような伏し目がちな瞳。

思い出すだけで、全身の血が沸騰するような熱を帯びていく。

部屋の隅で、ピンクの精霊が『うわぁ、こいつホンマに湿度ヤバいわ……引くわ……』とドン引きしているのにも構わず、凛は枕に顔を埋めて身悶えした。

「はあ、はあ……湊、湊、湊……っ。……あんなのズルすぎる……。好きになるに決まってるじゃない。絶対に、絶対に見つけるんだから!」

悪の道に100%注がれていた『命懸け』の情念は今、その10倍、1000%の純度で『レッドへのネットリとした愛』へと変換されていた。かつての天才武道家は甘い妄想の中で一人、荒い息を吐きながら己の身を慰めるのであった。

 ◇ ◇ ◇

一方、その頃。

「……っくしゅん!!」

トリプルモニターの前に座り、苦労して手に入れた限定パソコンパーツを組み込もうとしていた赤城 湊は、突然ゾクゾクッと背筋を駆け抜けた強烈な悪寒に身を震わせていた。

「うう……なんか急に寒気が……」

『ミナト様? どうかしましたか?』

「いや……今日は外に出て、知らない人とたくさん会ったからさ。知恵熱かな……それとも、ただの風邪かなぁ」

『お風呂に入って、暖かくして寝てくださいね!』

「うん、そうするよ……」

呑気に鼻をすする湊。

自分に向けられた、超絶重量級の愛情がすぐそこまで迫っていることなど、この時の彼が知る由もなかった――。


お読みいただきありがとうございました。

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