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〜顔面国宝の引きこもりとナンバーワンホストと女子高生が悪のホワイト企業と戦うそうです〜  作者: 虹の箸


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新規異動社員

リコの退社により、席が一つ空いたミアズマ本社。そこに春の人事異動で、近隣の支部から一人の若き女性幹部が配属されてきた。

彼女の名はシオン。透き通るような冷たい目をした、極めて優秀で合理主義的な女性だ。

彼女は本社での新たな「ワークバディ」として、ベテラン幹部であるクロウと組むことになった。

「おう、シオン。これからバディとしてよろしくな。とりあえず、うちの社食でコーヒーでも飲みながら打ち合わせ……」

「お断りします、クロウ先輩」

シオンは手元のタブレットから目を離さず、ピシャリと言い放った。

「先月のあなたのプラーナ回収効率、および労働時間を分析しましたが、無駄が多すぎます。雑談や休憩に割く時間があるなら、一件でも多く現場を回るべきです。あなたのその『温い』やり方が、組織全体の利益を損なっていると自覚してください」

「うっ……」

正論の連射に、クロウはぐうの音も出ない。クロウは内心、優秀で隙のない年下の女性バディとどう適切にコミュニケーションを取るべきか頭を悩ませていたが、シオンはそんな彼の気遣いなど意にも介さず、そのまま社長室へと向かってしまった。

「社長。クロウ先輩の温いやり方を含め、現在のミアズマの回収方針は非効率的です。我々は『悪の組織』です。定時退社など推奨せず、もっと非情に、効率的に市民からプラーナを搾取すべきです」

社長室で冷徹に数値を突きつけるシオン。しかし社長は、静かに首を振った。

「シオンくん。社員の心身の健康と信頼関係なくして、質の高いプラーナの継続的な回収は不可能だ。持続可能な組織運営こそが、我々の強みなんだよ」

「……甘すぎます。そんな方針では、いずれ他組織に呑み込まれますよ」

シオンの危惧は、最悪の形で現実のものとなる。


数日後。街で異変が起き始めた。

突然、人々が次々と意識を失い、路上に倒れ込む事件が多発したのだ。

原因は、突如としてこの街に進出してきた新たな悪の組織「ゼノス」。

彼らはミアズマのように「感情の揺れから自然発生するプラーナ」を回収するのではなく、特殊な装置を使い、人間のプラーナを強制的に吸い尽くすという外道な手段をとっていた。戦闘員たちも過労でボロボロになりながら洗脳状態で働かされており、まさに血も涙もない「真のブラック企業」だった。

「これが、私の言っていた『力』です。私がゼノスのシステムを奪い、ミアズマに導入してみせます」

自らの合理性が正しいことを証明するため、シオンは単独でゼノスのアジトへと乗り込んだ。

しかし、それは無謀な特攻だった。コンプライアンスもルールも皆無のゼノスは、人質を盾に取り、毒ガスや違法兵器を躊躇なく使用する。冷徹に計算されたシオンの戦術は、狂気に満ちた暴力の前にあっさりと崩れ去った。

「くっ……!」

瓦礫の山に追い詰められ、ゼノスの怪人の凶刃がシオンに振り下ろされようとした、その時。

スパンッ!

煙玉が弾け、目眩ましに乗じて怪人の腕を蹴り飛ばした影があった。

「まったく……新人が、先輩を置いて一人で突っ走るなよ」

「クロウ先輩……!」

鋭い目つきで武器を構えるクロウ。ワークバディの危機に駆けつけたのだ。

しかし、多勢に無勢。ゼノスの波状攻撃とえげつない罠の前に、クロウも彼女を庇いながら次第に傷つき、追い詰められていく。

そこへ——。


「——そこまでだ」

重厚な声と共に、凄まじい衝撃波が怪人たちを吹き飛ばした。

土煙の中から現れたのは、スーツのネクタイを緩め、圧倒的な「悪のカリスマ」としての威圧感を放つ社長だった。

「しゃ、社長……どうして。私は、あなたの命令に背いて……」

「バカを言うな。可愛い部下たちがピンチの時に、駆けつけない上司がどこにいる」

その時、アジトの天井が派手な音を立てて崩落した。

「プラーナリゾルブ(変身)!!」

舞い降りたのは、レッド青島ブルーピンクの三人だった。

「あんな強制搾取……僕の理論の完全な悪用だ。絶対に許さない!」

湊の声には、普段の温厚さはない。科学者としての強い怒りが込められていた。

「人の命をなんだと思ってるの! こんなやり方、私が絶対ぶっ潰す!」

凛もまた、凄まじいピンクプラーナを立ち昇らせて敵を睨みつける。

青島はチラリと社長たちを見て、不敵に笑う。

「おっと。どうやら今日は、俺たち以外にもお怒りの奴らがいるみたいだな?」

「フッ。……今日だけは、目障りな正義の味方も見逃してやろう。行くぞ、クロウ、シオンくん」

「了解です、社長!」

そこからの戦いは圧巻だった。

湊がゼノスのシステムを瞬時に解析して弱点を割り出し、凛が広範囲のプラーナ制圧射撃で敵の退路を断つ。

そして、ミアズマ陣営。

「シオン、右は俺が引き受ける! お前は俺が作った隙を突け!」

「……はいっ!」

クロウが撹乱と体術を駆使して敵陣を掻き乱し、シオンがその隙を縫って正確無比な攻撃を叩き込む。年齢も性格も違う二人の、初めてのバディ連携が見事に決まる。

最後は、青島の容赦ない落ちてた鉄パイプでぶん殴り殺法と社長の重い一撃がゼノスの幹部を沈め、アジトは完全に崩壊した。


戦いの後。

夜明けの光が差し込む中、ヒーローたちとミアズマは、言葉を交わすことなく互いに背を向けた。

シオンは、息を切らしているクロウと社長に向き直り、深く頭を下げた。

「……社長、クロウ先輩。私の認識が甘かったです。効率だけでは測れない、信頼という『強さ』があることを……今日学びました」

少しだけ素直になったシオンの言葉に、クロウは照れくさそうに頭を掻く。社長はいつもの穏やかな笑顔に戻って頷いた。

「わかってくれればいいさ。さあ、帰ろうか。……クロウくん、シオンくん。今日は特別有給休暇だ」

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