表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〜顔面国宝の引きこもりとナンバーワンホストと女子高生が悪のホワイト企業と戦うそうです〜  作者: 虹の箸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/24

結ばれた2人

届かない思いと、甘い罠

「——絶対、あれは『交際宣言』だったはずなのに……っ!」

ベッドの上でクッションを抱きしめながら、凛は一人、悶え苦しんでいた。

ミラが帰国したあの空港での出来事。「離れたくない人がいる」と手を握られたあの日から、凛は完全に自分の湊への気持ちを自覚していた。

しかし、当の湊といえば、その後も態度は一切変わらない。相変わらず研究室にこもり、数式と向き合い、凛への接し方も今まで通りの「少し手のかかる妹」を見るような目のままだった。

(私ばかりドキドキして、バカみたい……)

募るモヤモヤを持て余していた凛。そんな彼女の心の隙を見逃さない組織があった。

「元・弊社社員」である凛の身に宿る、規格外のピンクプラーナ。それを虎視眈々と狙っていたミアズマである。

ある日の夕暮れ時。一人で歩いていた凛の前に、湊が現れた。

「ミナト……?」

だが、様子がおかしい。彼は冷たい瞳で凛を見下ろし、残酷な言葉を紡いだ。

『君のその重い感情、研究の邪魔なんだよね。ミラのところへ行けばよかったよ』

「——え?」

それが、以前も「ニセ湊」を演じたことのある幹部・クロウの変装だとは、心身ともに疲弊していた凛には見抜けなかった。

パチン、と。凛の中で何かが弾ける音がした。

悲しみ、怒り、そして爆発的な愛情。行き場を失った感情が、彼女の身体から凄まじい量の「ピンクプラーナ」となって吹き荒れた。

暴走するピンクと、ホクホク顔の社員たち

「湊ァァァッ!! 逃がさない! 今日という今日は、絶対に結婚してぇぇぇぇっ!!」

街のど真ん中で、ピンク色のオーラを撒き散らしながら絶叫する凛。

その視線の先では、たまたま買い出しに出ていた「本物の湊」が、血相を変えて逃げ惑っていた。

「わあああっ!? 凛!? どうしたの!? なんで婚姻届を持って追いかけてくるのさ!?」

「ハンコ押して! 今すぐここで、ハンコ押してぇぇぇっ!!」

「無理無理無理! 話を聞いて!!」

涙目になりながら全力疾走する湊と、狂戦士バーサーカーと化した凛。

そして、その周囲では——。

「いやー、今日のピンクプラーナは質が高いですねぇ!」

「大豊作だ! みんな、残業にならないようにサクッと回収して定時で帰るぞー!」

ミアズマの社員たちが、特製の掃除機のような機材を片手に、散らばるピンクプラーナをホクホク顔で回収していた。誰一人として湊を襲撃するわけでもなく、ただ純粋に「業務」としてプラーナを採取している。

「待たせたなっ!!」

そこに、「プラーナリゾルブ(変身)」を済ませた青島——ブルーが颯爽と駆けつけた。

しかし、目の前に広がるカオスな光景に、思わず動きを止める。

「……は? なにこれ」

「ブルー! 助けて! 凛が、凛がぁぁっ!」

「結婚! 結ッ婚ッ!!」

泣き叫ぶレッド(湊)と、猛烈な勢いで迫る凛。青島は小さくため息をつくと、すれ違いざまに凛の首元へ、スパンッ!と的確なチョップを入れた。

「あうっ」

短い悲鳴を上げ、凛がその場にバタッと倒れ込み、気絶する。

青島はそのままクルリと振り返り、ミアズマの社員たちを睨みつけた。

「さて、お前ら——」

「あっ、ブルーが出たぞ! 目標回収量は達成した、撤収ー!」

「お疲れ様でしたー!」

蜘蛛の子を散らすように、ミアズマ社員たちは見事なまでの定時退社ムードで逃げ去っていった。

月夜の告白

静寂を取り戻した公園。

ベンチに寝かされた凛を見下ろしながら、青島は呆れたように湊へ視線を向けた。事の顛末を聞き終えた彼は、ポケットに手を突っ込みながら鼻で笑う。

「そりゃー、お前が悪いわ」

「……うっ」

「あんな思わせぶりなこと空港で言っといて、その後放置とかタチ悪すぎ。俺みたいなホストみたいなのでも、思いは真っ正面から受け止めるぞ、じゃなきゃ刺されるのは当たり前だ。とにかくちゃんと向き合ってやれよ。じゃあな」

ひらひらと手を振り、青島は夜の闇へと姿を消した。

残された湊は、スヤスヤと眠る凛の顔を複雑な表情で見つめていた。

「……ん、ぁ……」

やがて、凛がゆっくりと目を覚ます。暴走状態から抜け出し、我に返った彼女は、ハッと身を起こした。

「ミナト……! 私、何してた……?」

「凛。……ごめん」

湊は、凛の隣に静かに腰を下ろした。いつもの理路整然とした天才研究者の顔ではなく、どこか怯えたような、不器用な少年の顔だった。

「僕、自信がなかったんだ。……君と、交際する資格があるのかって」

「え……?」

「僕は研究のことしか頭にないし、人の気持ちにも鈍感だ。君みたいに明るくて、真っ直ぐな人の隣にいて、本当に君を幸せにできるのか……ずっと、分からなかった。それで、逃げてた。君をこんなに追い詰めてしまうまで」

湊はギュッと拳を握りしめ、まっすぐに凛の目を見つめた。

「正直、今でも自信はない。君を怒らせてばかりかもしれない。……でも、君とずっと一緒にいたいっていうあの時の気持ちは、本当だよ」

夜風が、二人の間を優しく吹き抜ける。

湊の不器用で、飾り気のない、けれど誠実な言葉。

その言葉が凛の心にストンと落ちた瞬間、大きな瞳からポロポロと大粒の涙が溢れ出した。

「……バカぁ。自信なんて、そんなのこれから私がいくらでもつけてあげる……っ」

泣き笑いのような顔で、凛は湊の胸にドンッと頭を押し付けた。湊は少し驚いた後、戸惑いながらも、その背中にそっと腕を回した。

虫の音が響く公園。

深まる夜が、ようやく結ばれた二人を優しく包み込んでいた。


お読みいただきありがとうございました。

もし「面白かった!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、ページ下部にある【ブックマークに追加】や、【☆☆☆☆☆】の評価を押して応援していただけると、今後の執筆の何よりの励みになります!

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ