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〜顔面国宝の引きこもりとナンバーワンホストと女子高生が悪のホワイト企業と戦うそうです〜  作者: 虹の箸


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地面師たち

「社長。例の『西東京再開発エリア』の地上げ工作ですが、予定通り地権者たちの洗脳を完了。底値で土地を買い上げ、巨大デベロッパーへの転売手続きを進めています」

株式会社ミアズマの社長室。冷徹な怪人・クロウが、タブレットを片手に淡々と報告を行っていた。

近日中に新たな鉄道路線が開通し、地価が高騰することが確実視されているエリア。ミアズマ社は悪のプラーナを用いて地権者たちの判断力を鈍らせ、合法かつ格安で土地を巻き上げるという、現代的な錬金術を実行していたのだ。

「ご苦労。我が社は今期、社員への特別ボーナス支給とサテライトオフィスの増設を控えているからね。確実な資金源の確保は急務だ」

神崎零社長が、満足げにコーヒーカップを傾ける。

「しかし……一件だけ、厄介な問題が」

クロウがわずかに眉をひそめた。

「エリアの中心にある古民家に住む老婆が、洗脳を完全に跳ね除けているのです。『死んだ爺さんと暮らした大切な家と土地だから、いくら積まれても絶対に売らない』と」

「ふむ。暴力や脅迫で無理やりハンコを押させるのは、我が社のコンプライアンス的にNGだからね」

「はい。ですので、強制退去ではなく『自発的な隔離』を行いました。彼女の周囲に濃密な悪のプラーナを注ぎ込み、亡き夫と暮らす『幻の家(仮想空間)』を構築。老婆の意識をその中へ完全に閉じ込めました」

「素晴らしい対応だ。現実の肉体は眠ったままだし、土地の権利書はこちらで処理できる。彼女も夢の中で幸せなら、まさにWin-Winな悪事と言えるね」

二人がホワイトな悪の経営戦略に頷き合っていた頃。

 ◇ ◇ ◇

「湊! 大変だよ、西のエリアでとんでもない悪のプラーナの渦が発生してる!」

放課後のファミレス。ポテトをつまんでいた僕(赤城湊)の耳元で、赤の精霊ルミが焦ったような声を上げた。

ルミは僕の相棒であり、元気いっぱいで正義感の強い精霊だ。

「誰かの精神が、丸ごと仮想空間に閉じ込められてるみたい。急いで助けてあげよう!」

「ええっ!? か、仮想空間!?」

僕が驚いて声を上げると、向かいの席でパフェを食べていた凛の肩から、ピンクの精霊ラマがひょっこり顔を出した。

「アカンな。精神世界へのダイブっちゅうことは、肉体は外に置いていかなアカン。いっぺんに複数人で突入したら、プラーナの波長が乱れて空間ごと崩壊するかもしれへんで」

「マジかよ」

隣の席でスマホをいじっていたジン(ブルー)が、面倒くさそうに頭を掻いた。

彼の傍らには、青の精霊ラピが静かに浮かんでいる。

「しゃーねぇ。ここはそういうのが得意なお前が単身で乗り込んで、その閉じ込められてる奴の目を覚まさせてこい。俺と凛は、外からお前の肉体とプラーナの繋がりを維持するバックアップに回る」

「ぼ、僕一人で!? 無理だよ青島さん!!」

「湊くん、大丈夫! 私が外から湊くんのお顔の安全を全力で守護するから! 安心して行ってきて!!」

「顔しか守る気ないよね!?」

凛の声援(?)を受け、僕はルミと共に精神を集中させ――老婆を縛り付ける仮想空間へとダイブした。

 ◇ ◇ ◇

目を開けると、そこは昭和の香りが漂う、暖かな日差しに包まれた縁側だった。

庭では洗濯物が揺れ、ちゃぶ台には温かいお茶。そこには、穏やかな笑顔で将棋を打つお爺さんと、それを見て微笑むお婆さんの姿があった。

(これが、ミアズマが作り出した幻……!)

「お、お婆さん! ここは現実じゃありません! 悪の組織が見せている幻なんです、目を覚まして!」

僕は縁側に駆け寄り、必死に呼びかけた。

しかし、お婆さんは穏やかな顔のまま、ゆっくりと僕の方を振り向いた。

「あらあら……幻でも、いいんだよ」

「え……?」

「だって、ここにはお爺さんがいる。あの大切な日々が、そのままここにあるんだもの。私は、ずっとここで暮らしたい……」

その瞬間。

お婆さんの強烈な『過去への執着』と、ミアズマの『悪のプラーナ』がドロドロに混ざり合い、空間全体がうねりを上げた。

「な、なんだこれ……体が……動か……!」

『――おや、見ない顔だねぇ。お前さんは……ああ、私たちの可愛い孫だったかい?』

幻影のお爺さんが、ゆっくりと立ち上がり、僕の顔を覗き込む。

その瞬間、僕の脳内に「この二人の孫として、この家で永遠に幸せに暮らす」という偽の記憶が強制的に上書きされそうになった。

「ちが……僕は……っ!」

「湊! しっかりして! 幻に取り込まれちゃうよ!」

ルミの悲痛な叫びも虚しく、僕の意識は、温かくも恐ろしい甘い幻の世界へと急速に溶け落ちていく。

(青島さん……凛……助け……)

現実世界では、ファミレスのソファで眠るように意識を失っている僕の体から、光が失われつつあった。

「アカン! 湊のプラーナが仮想空間に飲み込まれとる!!」

ラマの叫びに、凛がガタッと席を立った。

「湊くん!! 湊くんのお顔から生気が失われていく……ッ!! なんとしてでも助けないと!!」

「チッ、単独行動は荷が重すぎたか。しゃーねえな……」

ジンが鋭い目を仮想空間の入り口へと向ける。

果たして、待機組のブルーとピンクは、甘い罠に囚われたレッドを救い出すことができるのか――!?


お読みいただきありがとうございました。

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