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第一章(2)俺の名前……

《登場人物紹介》

◾️吉野 遍

「外回り行ってきまーす!」って言う吉野君のBGM

「明日も/SHISHAMO」


◾️白川 古都

会議室に向かう白川主任の革靴の足音とそのBGM

「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY/布袋寅泰」(「キル・ビル」のあれ)

数日後。

今日は三時にいちごミルクを飲むのだと心に決めていた吉野遍が自販機に向かうと、そこに先客がいた。

「あ。」

思わず喉から声が漏れる。

その声に振り向いたのは、経営戦略部の白川古都だった。

目が合い、遍は無意識に背筋を伸ばした。

「お先」

取り出し口からブラックコーヒーの缶を取り出すと、白川は数歩歩いて、振り返った。

「……吉野、やったっけ」

「……俺の名前」

「会議途中に自己紹介してくるやつ珍しいからな」

この間の査定会議の件だ。

意外だ。と遍は思った。

何でもかんでも数字と一緒に切り捨てる訳ではないらしい。

急に「白川主任」が人間に見えて、遍はにこりと笑った。

「へへ、褒めてくれてます?」

白川は、それには答えずに眉を上げる。

「お前こそ、俺の名前覚えてくれてるやん」

「先輩のこと知らない人いないでしょ。だって――」

遍はあわてて口をつぐむ。

「だって?」

白川は楽しそうに遍の顔を見る。

陰で囁かれている「経営戦略の鉄の壁」だの「数字の鬼」だのが、本人の耳に届いていないはずがないのだ。

「先輩も笑ったりするんですね」

「人のことなんや思てんねん」

立ち去ろうとする古都を、遍は呼び止めた。

肩越しに振り向く古都に、遍はぴしりと敬礼をした。

「次の査定も、お手柔らかにお願いします!」

古都がまた、笑ったように見えた。


「数字でものを言えよ」

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