第27話 卑屈
とりあえずすべきは、自分の弱さを見せてしまったことへのフォローだろう。
「あのさ、ごめん。
俺、混乱しているだけだと思うから。それから、理沙さんが冷静だってのもよくわかった。興奮するとブラック・アウトしちゃうし、思考もわけがわからなくなるんだね、首だけのときは……」
「まぁ、慣れもあるよ。律くんはまだこういう身体になったばかりだし……。率直に言って、首が繋がっていたときからそうだったし……」
「うん、まぁ、それも言えているんだろうな」
またもや完璧に言いのめされて俺はそう同意するしかなかった。「首が繋がっていたときからそうだった」なんて言われちゃえば、もうフォローもへったくれもありゃしない。
しっかし、これも辛いな。
少しは俺にもメンツっての、あるんだけどな。真正面から叩き潰された気分だ。だけど、俺には反論の余地もない。
なんか、卑屈な気分になっちゃうな。
俺は、再び自分の身体を彼女に明け渡した。完膚なきまでやっつけられたら、お茶を濁すしかないし、卑屈な気分になっちゃうにしても、少しは俺も役に立っていると思えれば救いもある。
もう、発想自体が卑怯だし情けないけど、これ以上叩きのめされたらさすがにトラウマになりそう。
首だけになって、改めて思う。彼女の言うとおり、酸素や糖を貯めておける器官が首側にもできているような気がする。ただ、あくまで俺の感覚でだけど、そのタンクはあまりに小さい。首だけでもいられるし、半日ぐらいはって話もあるけど、これはそのタンクが満タンのときから始めて、だ。
当然、タンクを満たすのは即時にはできないし、こうやってこまめに首を置き換える方が話は早い気がする。同時に、身体の方もメンテして、糖と酸素を効率よく供給できるようにしないとなんだな……。きっと、走り込みなんかも有効なはずだ。
あっ、それでか。
「さっき、飛首族は空腹に弱いって言っていたよね」
「そう。胴体から常に持ち出しって感じだからね。これ自体は繋がっていてもおんなじことだけど、それが私たちの場合、完全に自動車の給油みたいな話だから……」
「そっか。そして乗っかる首が2つとなると……」
「毎日、猛烈にお腹が減るわよ。
特に脳は糖しか使えないからね。ごはんは朝からオカワリしないと」
俺の頭に、板チョコレートを山のように用意する、老棋士の光景が浮かんだ。
なんか、これが今日唯一、充実感というか報われたって気がした。
俺、頭脳労働者になったんだ、みたいな……。
もうすでに、頭労働者ではあるんだろうけどね。
深刻な疑問が湧いた。
……この先、恋というか、思いでも報われる日は来るんだろうか?
あー、やめやめ。こんなこと考えていると、マジで負け犬根性が染みつきそうだ。




