第14話:憧れのアオハル
とりあえず背中を洗ってもらったところで、他は自分で洗うからってことで、早々にご奉仕は止めてもらった。
そこまでしてもらわなくたって、僕は沙和さんに沢山助けられてるからっていうのが理由だったんだけど、それを伝えたら彼女もすぐ納得してくれた。
「ま、あーしもちょーっち変な気持ちになりそうだったしー。ここまでにすんね」
っていうのも理由だったみたいだけど。
ただ、その結果。
先に彼女が湯船に浸かることになったんだけど、そこから僕が体を洗っている姿をじーっと見られることにあり、気恥ずかしい思いをしてたのはここだけの話だ。
◆ ◇ ◆
……で。
今僕は、人生で初めて湯船に女子と一緒に入っている。
一人暮らしとは言え、複数人で住む家を借りてもらってる関係で、まあまあ広いお風呂。そこに僕と沙和さんは体育座りの状態で向かい合わせに座っている。
バスタオルがあるとはいえ、変に下半身が見られないか心配だったし、目の前の沙和さんの豊満な胸なんかが湯船の中に見えたりして刺激的過ぎる。
本当は後ろ向きに一緒に入ろうと思ってたんだけど。
「優くーん。恥ずかしいかもしんないけど、やっぱ話すなら顔見てっしょ」
という彼女の言葉には、確かに納得感があったからだ。
まあ、彼女も目の前で、少し恥ずかしそうに顔を逸らしてるけど。
「あははっ。自分で言っといてなんだけどー。やっぱ裸の優くんが目の前って、流石に恥ずいねー」
「だ、だよね」
「うん。でもー、きっとこの先のこと考えたら、絶対慣れとかないとだしー」
「え? 慣れとく?」
慣れるってどういう意味だろう?
僕が首を傾げると、それに気づいた彼女が恥じらいながら笑う。
「そ。だってー、これからこういうこと、優くんも沢山経験するしー」
「え? た、沢山?」
「そ。だってー、あーし達と夏に海行ったりー、温泉行ったりとかするかもじゃん? そういう時にー、あーし達の水着姿、見ることになるわけだしー」
「み、みんなと海や温泉なんて。僕なんかが一緒に行くなんて──」
「優くーん」
慌てて否定しようとした僕を遮り、沙和さんがちょっと白い目を向けてくる。
それがちょっと冷たく感じて、僕は思わずびくっと身を震わせると、それを見た彼女はコホンと咳払いをした後、真面目な顔でこっちを見た。
「あのねー。あーし達と優くんってー、もう特別な友達なわけじゃん?」
「う、うん」
「でさ。あーし達も優くんの過去も知ったわけじゃん?」
「そ、そうだね」
「それでねー。あーし達はー、優くんがこれまで経験できなかったアオハルなこと、いっぱい経験させてあげたいわけ」
「アオハルなこと?」
アオハルって、多分青春ってことでいいんだよね?
でも、青春なことってなんだろう?
「そ。今までさー。私生活でも学校生活でも、あーし達以外の友達と、一緒に楽しく過ごしてきたーなんてこと、なんてないわけじゃん?」
「うん。まあ……」
確かにそれは間違いない。
だって、そもそも友達がいなかったんだし。
「だからー、あーし達も優くんの過去を聞いてー、これからいーっぱいアオハルなこと経験させてあげよーって思ったわけ。旅行とかだってそのひとつ。やっぱー、友達と一緒に遊ぶ経験ってー、すっごいいい思い出になるしさー」
「もしかして、今こうやってるのもそうだったりする?」
僕がそう問いかけると、沙和さんはいつもの照れ笑いを浮かべる。
「えへへっ。そっ。こういうハプニングなイベントもー、きっとアオハルな想い出になるかなー、なんて思ってさー。まあ、それであーしがエロい女とか思われちゃったら嫌だけどー、優くんはそんなこと思わないかな? って思ったしー」
「ま、まあ、確かに印象深い思い出にはなったけどね」
今でも頭の中にさっきの水着の立ち姿が焼き付いちゃってるのは、正直なんか悪い気がしてるけど……。
「だからー、この先もできたらー、一緒に旅行行ったりもしよ? 勿論学校生活でも、少しずつ色々経験させてあげたいけどー、そのためにももっとアピッてくからさー」
……ほんと。沙和さんの前向きっぷりには圧倒されちゃうな。
きっと他のみんなも、彼女の行動力に助けられたこともあるんじゃないかって思う。
勿論、僕も少しでもそんな沙和さんの頑張りに答えてあげたいと思ってる。
「そうだね。学校でも、少しずつでも話したりできるようになりたいし」
「でしょでしょ? ちなみに優くんってー、学校でこんなアオハルしたいなーってこと、ない?」
座り方を変え、膝立ちになり興味津々に聞いてくる沙和さん。
み、水着姿でその姿勢は、ちょっと刺激が強いんだけど……。
「え、えっと。その……文化祭で友達と回るとか、そういうのはちょっと憧れるかも」
「あー。わかるわかるー! 去年も四人で色々見て回ったんだけどー、食べ歩きすっごく楽しかったんだよねー」
恥ずかしさで思わず顔を逸らし横目で彼女を見ると、にっこにこの笑顔でそう話してる。
でも、どうしても沙和さんの豹柄水着で強調された胸に目がいっちゃってる。
こ、このままずっとお風呂に入ってるのは、流石にちょっと理性的に危ないかも……。
僕はザバッとお風呂で立ち上がると、沙和さんを見た。
「ご、ごめん。ちょっと逆上せそうだから、先に出るね。お風呂上がったら、もう少し続き話そっか」
「あ。そーだねー。あーしは体とか洗ってから出るねー。シャンプーとか借りちゃっていい?」
「うん。好きにしていいよ。それじゃ、ゆっくりしてね」
「はーい!」
僕はそのまま洗い場からそそくさと洗面所に出ると、扉を締めた瞬間、ほっと一息吐く。
流石にあのままずっといたらヤバかった。実際、ちょっと下半身のあれが大きくなりかけてたし。
制服姿の時も思ってたけど、沙和さんってやっぱりスタイルが良かった。
でも、だからこそ目のやり場に本当に困っちゃったし。
っと。ここにずっといたら彼女がお風呂から出られなくなっちゃうよね。
僕はいそいそとバスタオルを手にしようとしたんだけど、その瞬間目に入ったのは、僕の着替えの脇に並んでる、黒の随分セクシーなブラジャーとパンティだった。
うわぁ……沙和さんって、こういう下着を付けるのか。
さっきの豹柄の水着といい、ギャルってやっぱりこんな感じなんだ……。
──「えへへっ。どーよ? あーし、セクシー?」
ふっと頭に浮かぶ、この下着をつけた沙和さんの姿。
思わず生唾を飲み込み──って、何考えてるのさ。
ブンブンと頭を振った僕は、急いで体をバスタオルで拭き着替えを済ませると、蠱惑的なこの空間から足早に逃げ出したんだ。




