幕間:沙和の閃き
早々にシャイゲを切り上げたあーし達。
あーしはその後パジャマのままベッドの横に座って、流れでスマホできよっちに通話を繋いで、週末のテスト勉強のことをささーっと伝えたの。
『そっか。わかった。俺も参加してーのは山々だけど、土日はバレー部の面倒見ないとだしよ』
「だよねー。その代わりー、勝ったらちゃーんとみんなでお祝いするからね!」
『ああ。期待しとくぜ。あと、お前等だけで抜け駆けするのはぜってー止めろよな』
流石にきよっちもそれは気にするかー。
ま、一人のけ者のまま、あーし達だけキスとかしてたらやっぱ嫌だよねー。
逆の立場だったら、あーしも嫌だし。
「大丈夫大丈夫ー。るとっちやちっちーもいるしさー」
『あのなー。あいつら真面目に見えて、優汰のことに関しちゃポンコツだろ?』
あー。確かに二人とも、急に突っ走りそうな事言うよねー。唐突盲信とか言ったっけ? そんな感じ。
「まーでもー、それはあーしだって変わらないじゃん」
『自分で言うなって。ま、否定はしねーけどよ。今日の昼の件なんて、まさにそうだったしな』
「あれはー、こないだの優くんの告白聞いてー、もっと学校生活楽しませてあげたいなーって思っただけ」
『にしたってだろ。優汰に相談なしにやってたら、あいつだって困惑するだろ。少しは反省しろって』
やっば。喜世の口うるさいとこ出てきちゃったかも。さっきのシャイゲの二の前にならないよう、そろそろ通話終わらせたほうがいいよね。
「はいはい。じゃ、明日も助っ人がんばだよ!」
『ああ。優汰にもよろしく言っといてくれ』
「……ふーん。そこは優くんだけなんだ?」
『ど、どうせ瑠音や千麻は言わなくたってわかってるだろって。ったく……。それじゃあな』
「うん。また明日ねー!」
あーしは何時ものように挨拶をすると、そのまま通話を切った。
「んーっ!」
あーしはスマホを持った右手を上に上げると、左手で脇を伸ばすように右手を引っ張ると、両手を広げベッドに仰向けになった。
もう。きよっちってば、あーしが何も考えずに昼間行動したと思ってるっしょ。あーしだってちゃーんと考えてるのに。
……優くんの過去の話って、幼稚園の頃いじめにあいかけたあーしやちっちーの否じゃないくらい重かった。
あれを聞いた時、あーし裏でガチ泣きだったもん。可哀想過ぎて。
あの日より前は、確かにあーしの身勝手が多かったよ?
わざと優くんのバスの時間と合わせて挨拶したのもそうだし、貴堂君に絡まれてた時に優くん見つけて声かけたのだって、完全にあーしの興味本位。
だけど、今は違うんだよねー。
優くんと恋人になりたいって想いはもちあるけどー、それ以上に優くんにアオハルさせてあげたいじゃん。
これだけはあーし、本気で思ってるんだよねー。
だって、あーし達は優くんにとってたった四人の友達、TOP4なんだし。
それなのにさー……。
あーしはスマホをベッドボードに置くと、近くに置いてたピッカリチュウのぬいぐるみを手にすると、あーしの方に向けて両手で持つ。
「ねー、ありうっちー。みんな酷くなーい? ちっちーもるとっちもあーしに嫌がらせしてさー。きよっちもそうだけど、これでもあーし達って幼稚園からの幼馴染なのにさー」
この子の名前はありうっち。
中学の時に買ったお気にのぬいぐるみなんだけどー、あーしが学校で間違って優くんって口走らないようにって、最近名前をつけたの。
そしたらより愛着湧いちゃってさー。やっぱ好きな人の名前を呼べるのって最高だよね!
でも、ほんと酷いじゃん。
確かにあーしは勉強全然ダメダメだよ? ちっちーやるとっちと比べたら雲梯の差……だっけ? ま、そんな感じだけどさー。
みんなでテスト勉強するのだってアオハルできるわけだしー。ただ真面目に勉強するだけじゃ絶対つまらないじゃん。
まあ、優くんに脇に座ってもらってー、なんなら偶然装って手とか触れたいなー、くらいは思ってるけど。そんなの絶対ちっちーやるとっちも思ってるくせにー。
「あーん! もう! みんなの馬鹿ー!」
ちょっとムカムカしちゃって、あーしはありうっちをぎゅっと抱きしめると、思いの丈を部屋で叫んじゃった。
あーしがいなかったら、学校で優くんと自然に話もできないくせにさー。
ほーんと。これで明日あーしがお弁当当番じゃなかったら、温厚な沙和ちゃんがキレちゃうとこだったよねー。
でもさー。明日は朝から優くんを近くで見れるのかー。
……にひひひっ。やばっ。勝手に頬緩んじゃうじゃん。でもー。
「仕方ないよねー。ありうっちー?」
あーしはまた上にぬいぐるみを持ち上げると、にっこにこでそれを見つめた。
優くんと二日連続で逢えるって最高じゃん?
明日の朝逢ってー。夜も逢うでしょ? それで土曜も一緒だもんねー。
……ん? あれ? 二日も一緒……土曜も優くんに逢える……それってつまり……もしかして……。
思わず上半身を起こしたあーしのちょーミラクルスーパーコンピューターが、頭の中で色々考える。でー。出てきた答えを総合するとー……ぴこーん!
もしかしてー。これ、チャンスじゃなーいー?
あーしは思わずありうっちをぎゅっと抱きしめると、キラリと目を輝かせた。
だとしたらー、やっぱちゃーんと物選ばないとだよねー。
あれ、まだ着れるかなー? 無理なら明日の放課後ダッシュで行けば、多分間に合うっしょ?
その時は明日の朝優くんに夜受け取るの遅くなるよーって伝えとけばー……にししっ。よーっし! テンションアゲアゲっしょ!
あーしはありうっちをベッドに置くとその場で立ち上がる。
こーなったら、あーしが優くんに色々してあげちゃうもんねー!
そうすればー、優くんもきっとアオハル感じてくれそうじゃん? うんうん!
一気に楽しくなったあたしは、そのまま明日の仕込みのため、部屋を色々漁って準備をしてったの。
あー。早く明日になーれ!




