第28話:遅れた理由
うーん。これ、みんなにメッセージを入れたほうがいいのかな?
もしかしたら家の用事とかがあったりしたのかな?
でも、それだったらメッセージくらい残してくれそうな気もする。
だとしたら、僕と同じで寝過ごしてるとか?
その可能性はあるかもしれないけど、それだったらのんびり待てばいいと思う。
ただ……もしかして、僕が遅刻したのに怒って何も連絡してきてないとか……。
それだったらどうしよう……。
やらかした気持ちになって、一気に不安が加速する。
こ、こういう時ってどうすればいいんだろう? 電話とかして謝ったほうがいいのかな?
で、でも、まだそうと決まったわけじゃないし。間違ってたらそれはそれで恥ずかしいし……。
と、とりあえず、少しこのまま待ってみようかな。
あまりに連絡がなかったら、覚悟を決めてこっちから連絡しよう。
僕はキャラを教会の長椅子に腰掛けさせると、じっとその場で待つことにした。
十分……二十分……三十分……。
待てども待てども連絡もなければチャットに入ってくる気配のないみんな。
九時を回っちゃったから、もしかしたら待ち合わせがもっと遅かった可能性もあるけど、流石に聞き違いはないと思うんだよね……。
だとすると、やっぱり僕、遅刻したせいで嫌われちゃったのかな?
教会に佇みながら、僕は大きなため息を漏らす。
いくら気持ちに余裕がなかったからって、なんで目覚ましすらかけようとしなかったんだろう……。
でも、そんなの今更。とにかく、まずはみんなに謝らないとかな……。
落ち込んだ気持ちのまま、僕は一旦ゲームを終わらせようとメニュー画面を出す。
と、その瞬間。
『優くんごめーん!』
突然僕の耳に、沙和さんの声が飛び込んできた。
「え? ごめんって、どういうこと?」
予想外の言葉にきょとんとしていると。
『わ、悪い! 遅れた!』
『お、お待たせしてしまい、大変申し訳ございません!』
『まさか、一時間以上も優汰様を待たせてしまうなんて……。情けないですわ……』
喜世さんと千麻さんの焦った声と、思いっきり気落ちした瑠音さんの声もした。
みんな同時に入ってきたってことは、今が待ち合わせ時間?
でも、遅れたって言ってるよね?
「えっと、待ち合わせって八時で合ってた?」
『ああ。お前が正しいぜ』
状況が飲み込めず、とりあえずで質問をしてみると、喜世さんが少し申し訳なさそうな声で答えてくれる。
そこは間違ってなかったのか。
僕も遅刻をしてるからよしとは言えないけど、聞き違いがなかったことでちょっと安心する。
「それならよかった。実は僕も寝坊して遅れちゃったんだよね」
『え? そーなの?』
「うん。起きたら八時五十分とかになっちゃってて。だから、僕もそんなに待ってないし大丈夫だよ」
『それでも三十分以上お待たせしてしまったのですね……』
みんなを安心させたくて状況を伝えたんだけど、それを聞いたみんなの声は変わらない。
『ほんとごめーん! 今日の告白のために徹夜で練習してたんだけどー。そしたら夕食食べ終わった瞬間眠くなっちゃってさー。それで、ちょっとだけーって思ってうとうとしてたらこんな時間になっちゃって……』
『俺もだ。緊張で全然寝られなくってよ。弟達の世話をしてる間は良かったんだけど、一段落して落ち着いた』
『私もそうです。情けないお話ですが、夕食こそ済ませましたが、まだお風呂すら済ませておりませんし……』
『私もあまり変わりませんわ。今日この時こそ、私の天王山。それだけの意気込みおりましたけど。とんだ失態ですわ……』
練習ってだけなのに、ここまで意気込んでくれてるのは、きっと嘘告白のこともあるけど、僕が練習したいっていうのに応えようとしてくれてるのもあるのかも。
でも、お風呂とかも済ませてないのか。って、僕もだけど。
えっと、今は九時半。だったら……。
「じゃあ、一旦みんなお風呂とか済ませて、十時半くらいで集まり直そうか?」
『え? ですが、それでは優汰君に待っていただいた意味が……』
「別に。僕もさっき言った通り同じ状況で、お風呂にすら入れてないのも一緒なんだ。夏場はやっぱり汗がベタつくし、すっきりしてからのほうが落ち着くと思うし。どうかな?」
『ま、まあ、優汰がいいってなら、俺は断る理由もねえぜ』
『私もですわ。確かに汗が気になるのは確かですもの』
『そうですね。せっかく本番という時に、そういうのが気になって集中できないのもどうかと思いますし』
『だねー。じゃーあー、みんな1時間後に集合しよ? 今度は寝坊なしね!』
「うん」
こうして、僕達の嘘告白の練習は一旦仕切り直しになった。
◆ ◇ ◆
予定通り、一時間後には全員がイズコに集合した。
事前の話で、みんな教会にいるから同時にログインしようって話にしてる。
『ちなみにー、みんなは衣装の見た目装備の準備はできてる?』
『俺は大丈夫だぜ』
『私もです』
『私も万全ですわ。沙和はどうなのかしら?』
『あーしもバッチシ!』
やっぱり。みんな何か仕込んでるっぽいのか。
よかった。予想があたって。
「僕も着替え終わってるから大丈夫」
そう伝えると、みんなが同時に『えっ?』と声を上げた。
『ゆ、優汰様は、普段通りの服ではありませんの?』
「うん。みんな真剣そうだったし、だったら僕もちゃんとしたほうがいいかなって」
『それってつまり、見た目装備に課金したってことか?』
「うん。色々迷ってひとつだけ買ってみた」
『そこまでしてくださったんですか……』
「みんなに比べたら大した事ないけどね」
『うわーっ! それめっちゃ楽しみじゃん! テンション上がってきたー!』
沙和さんの本気で嬉しそうな声を聞くと、そこまでしてよかったなと思う。
実際見た時、変って言われないかは心配だけど……。
『じゃ、みんな。ログインボタン押す前まで進んで、同時にログイン押そっ!』
「うん」
『ああ』
『わかりました』
『承知しましてよ』
僕は立ち上がっているゲームのタイトル画面から、いつものようにサーバ選択画面を経由しキャラを表示する。
みんな、どんな格好なんだろう? 緊張もあるけど、ちょっと楽しみでもある。
『それじゃ、せーのっ! ポチッ!』
沙和さんの掛け声に合わせ、僕もログインボタンを押す。
そして、いつもの天から落ちていく映像から、画面が真っ白になった後。教会の中が見えてきたんだけど。そこに立っていた四人を見た瞬間。
「うわぁ……」
僕は感嘆の声を上げたんだ。




