第27話:服選び
買い出しを済ませ家に帰った僕は、寝室のパソコンを起動すると、そのままシャインズ・ゲートを立ち上げキャラ編集画面に入った。
この画面では自分の服装なんかを変えられるんだけど、今の時点で僕が持っている服装なんて、レベルに合わせて購入した装備だけ。
一応、一度でも手に入れた装備は、売ったり捨てたりしても見た目装備として何時でも使える仕様になっているけど、それだって低レベル装備とかしかない。
告白される時って、どんな格好が正しいんだろう?
多分、現実だったらみんな私服か制服。だからそれが自然にも感じるけど、今回はシャインズ・ゲート。異世界での告白なんだから、もう少し非現実的であるべきなのかもしれない。
一応課金で買える見た目装備のバリエーションは豊富だし、現代の私服っぽい服装も結構ある。
女子用のを見ていると、前にみんなが見せてくれた私服や修道服、昨日千麻さんが着ていたドレスなんかもあって、男子以上にバリエーションがある。
ちなみに無課金用の見た目装備も多少あるんだけど、その半分は世界観に合わないいわゆるネタ装備か、地味な布の服系が幾つかあるだけ。
流石にここから選ぶっていうのは、なんとなく気が引ける。
だって、今までの経験から考えて、TOP4の四人が着飾ってこないわけないから。
しかも、嘘告白とはいっても、練習だからきっと本気な感じで来ると思う。
なんだかんだでみんな真面目だもんね。
だとすれば、さっき思った通り僕も真摯に向き合うべきだと思う。
だとしたら、こういうちょっと着飾った私服系?
でも、カタログにあるのはちょっと異世界チックなデザインがほとんど。
練習ならリアル寄りな服装がいいのかな?
ただ、そういう服も意外に派手なのが多いんだよね。
僕って普段から地味な服が多いけど、そっち寄りのデザインの服ってあまりない。
だったら自然体で、世界観にあう中で地味な私服を選ぶ?
でも、なんかそれでみんなが凄く可愛く着飾ってきたら、なんかこっちだけ浮いちゃいそうな気もする。
うーん……。
ゲーム内のカタログをスクロールさせながら、どの服装ならいいかと思案するけど、中々いい案がまとまらない。
実際みんなと出かける時だって、着飾ろうとしたらこれくらい迷うし、そもそも僕にファッションセンスなんてないし。
どうしよう……あれ? これ……。
カタログをスクロールしていた手がふっと止め、そこにあった見た目装備をじっと見つめる。
……もしかしたら、これならありかもしれない。
セット装備で一着千五百円かぁ……。
ゲーム内では多少安い方っぽいけど、これがゲーム相場で高いか安いかはあまりよくわからない。
実際、ファンタジー・フォレストの頃も、アイテム課金って興味なくって金額なんて見たことなかったし。
まあ、一日の食費よりは安いって割り切ったほうがいいかな。
TOP4の練習台になるためだし、みんなには普段お世話になってるんだ。
こういう所で少しでも恩を返したいし。
まあ、この服を喜んでくれるかはわからないけど……。
……うん。迷ったって仕方ない。
これでいこう。
色々と不安はありつつも、僕はその見た目装備に課金すると、早速自分のキャラに着せてみる。
……うん。悪くはないかも。個人的には案外似合ってると思う。
もしこれを見てみんなが微妙な反応をしたら、その時はアドバイスでも聞きながら別の服を購入すればいいよね。
懐は痛むけど、これもみんなのため……。
「ふわぁー」
やっと服装が決まってホッとした瞬間。急に眠気と欠伸が襲ってきた。
そういえば、外から帰ってきた後から少しぼんやりすることが増えてたっけ。
今はまだお昼前。集合は夜八時に昨日の教会の中だけど、そこでログアウトしてるからログインすればすぐ。
時間にも余裕もあるし、流石に軽く寝ておこうかな。
僕はゲームを落としパソコンをシャットダウンすると、そのまま布団の上のばたりとうつ伏せになって倒れたんだけど。
その瞬間、僕もシャットダウンしたかのように一気に眠気が襲ってきて、そのまま意識を失ったんだ。
◆ ◇ ◆
「……ん……」
ぼんやりとした僕が、顔を横に向けうっすらと目を開ける。
なんだろ。真っ暗で何も見えない……。これ、夢かな?
体を捻り仰向けになると、僕はゆっくりと上半身を起こし目を擦った。
……暗闇に目が慣れてきて、少しだけど何かが見えてくる。
あれ? よくよく見たら、ここって僕の部屋じゃないか。
じゃあ何でこんなに暗いんだろう? えっと、時間は……。
肩越しにベッドボードに置いてあるデジタル時計に手を伸ばし、上のボタンを押す。
ぱっと液晶が光って表示された時間は……八時五十分か。
……え? 八時五十分!?
慌ててリモコンで部屋の電気を点けると、僕はベランダのカーテンを開ける。
未だ外に干されている洗濯物。その先には、既に日が暮れ暗くなっている見慣れた夜景が飛び込んできた。
し、しまった! 洗濯物が湿気っちゃう!
急いでベランダの窓を開けて、洗濯物を取り込みベッドの上に置いていく。
少し冷たくなってるけど、夏の暑さのせいもあってかまだそこまで酷く湿気った感じはしない。
ほっ。良かった。
僕はひとしきり洗濯物を取り込んだ後、ベランダの窓を静かに閉めた。
まさか、こんな時間まで寝ちゃうなんて。
でも、今朝も寝たって言ってもなんか変な夢見て起きたりしてたし、実のところあまりちゃんと眠れてなかったからなぁ。
とはいえ、いくら時間に余裕があるからって流石に寝すぎ。
ほんと気をつけないと……ってあれ? 時間に余裕があるって……。
ふと、ある現実に気づいた僕の顔から血の気が引く。
「しまった!」
さっきは出なかった声をあげ、僕は慌ててパソコンを起動した。
みんなとの集合の時間、完全に過ぎてるじゃないか!
きっと、イズコに心配するメッセージが届いているかも。早く顔を出して謝らないと。
えっと、スマホは……あ、あった!
……あれ?
スマホのロック画面を見た瞬間、僕は思わず首を傾げる。
誰からもメッセージが来てる気配がないけど、どういうことだろう?
もしかして、僕が寝過ごしている可能性とかを考えて、気を遣って連絡してこなかったのかな?
パソコンが立ち上がったのを見て、急いでシャインズ・ゲートとイズコを立ち上げる。
先にチャットルームに……って、誰もいない? 僕が待ち合わせの時間を聞き間違えたのかな?
念のためシャインズ・ゲートにログインしてみたけど、そこにも誰もいない。
……これ、どういうこと?
狐につままれたような顔をしながら、僕はその場で一人戸惑ったんだ。




