幕間:決意する瑠音
昼間から優汰様達とのシャインズ・ゲート。
合間に夕食などの休憩を挟み、その日は深夜二時まで五人でプレイし続けましたが、流石に優汰様が眠くなったということで、ゲームは一度解散しましたの。
だけれど、本日の私達はこれでは終われませんでしたの。
『しっかし、沙和。お前、随分な提案をしたよな』
『本当です。まさか、嘘とはいえ告白の機会を作るなんて……』
イズコでの会話は勿論この話題。
実際、私は平静を装いながら遊んでおりましたけれど、頭の中ではずっとこの事ばかり考えておりましたもの。
『だってさー。優くんってば、はっきり言うんだもん。あーし達の事も、好きになってないってさー』
『は? そんなこと言ったか?』
『言ったじゃ~ん。本気で誰かを好きになったら、あーし達に相談するーって』
──『で、でしたら、別の誰かをお好きになられて──』
──「それもないよ。今の僕がどんなに外見が良いって言われたって自信が持てるわけじゃないし。もし本気で誰かを好きになったとしたら、自分じゃどうしていいかわからないから、間違いなくみんなに相談するもん」
確かに、先程そのようなやり取りがございましたわね。
あの時の私は、優汰様が誰かに恋焦がれていないという現実しか見えず、ただただ安堵していただけでしたけれど。
「それであの時、貴女はモヤモヤしたと言ったのね」
『そーいうこと。まー、なんとなーくわかってはいたけどさー。でもー、ここまで結構アピールしたつもりなのに、優くんってば全く気づいてくれてないってことじゃん?』
沙和がひどく残念そうな声を出しているけれど、本当にそうなのかしら?
私達と触れ合う度、恥じらいを顔に出す優汰様。
あれは好意の表れではなくって?
『それは考えすぎじゃねえか? あいつ、俺達とくっつくと恥ずかしがってくれるだろ?』
私と同じ考えだったのでしょう。
喜世がそう口にしたけれど、それを否定したのは千麻でしたわ。
『いえ。あながちそうとも言い切れませんよ。あの時の優汰君は、かなり自然な笑顔を見せておりました。もし私達の好意に気づいていれば、そこでも恥じらいを見せるのではないでしょうか?』
『あーしもそう思うんだよねー。もしかしたら、あーし達の気持ちを知ってて、暗に断ってる可能性も否定できないけど……』
『そ、それは……』
『流石にねー。ねーよな?』
沙和の不安そうな言葉に、千麻と喜世が少し焦った声を出したけれど……。
「ま、まさかそんな事はございませんわよね!? でなければ、今回の件をお受けなんていただけないでしょう!?」
それは私も同様。思わずひどい声を出してしまいましたわ。
でも、実際優汰様は、沙和の提案を許可してくださった。
もし私達を拒否するのであれば、そんな勘違いされるようなことをなされないはずですわよね!?
もしそうでなければ、私もう生きていけませんわ!
『……まー、そうだねー。今は折角掴んだチャンスを逃さないためにも、優くんにどう嘘告白するか考えないと』
私が絶望にも似た気持ちで固まっていると、沙和がそう口にしたわ。
そ、そうね。今は気を取り直し、優汰様にどう思いを伝えるか。
それを考えるのに専念しませんと。
『ちなみに、告白の場所などはどうするつもりだったのですか?』
『えっと、あーしは教会で良いと思う。なんかー恋の神様にも祈れそうじゃん?』
『まあ、雰囲気はあるな』
「確かにそうですわね。ちなみに服装はいかがなさるつもり?」
『それなんだけどー。そのー、こないだみんなで買った、ウェディングドレスとかどーお?』
『それって、さっき千麻が着てたやつか』
……え? さっき千麻が着ていた?
「喜世。どういうことですの?」
私の疑問の声に、小さく聞こえた喜世の『げっ……』という声。
まさか……。
「先程ログアウトしていたのは、着替え直すためでしたの?」
私がそう尋ねると、千麻のため息が耳に届いたわ。
つまり、図星ですわね。
『は、はい。折角でしたら、やはり思い出に残る形にしたかったもので……』
『もー。ちっちーってば、本気で抜け駆けする気だったんじゃーん』
『ま、俺も目撃した時はそう思ったし。なんあんらもう優汰とデキてるのかって勘ぐっちまったくらいだしよ』
『で、でも。みんなだって優汰君から同じお願いを受ければ、きっと同じようなことをするんじゃなりませんか?』
それを聞いた瞬間、私はギクッとしてしまったわ。
確かに、もし私が優汰様と二人きりになり、キスをする機会があれば、多分同じ事をしたに違いませんもの。
時間が経てども、私を含め、誰も返事をする者はいない。
ふぅ。結局、考えることは同じね。
『ま、まー。そこはもーしゃーないじゃん。あーし達、優くん好き過ぎだしさー』
『そ、そうだな。どうせ優汰を諦めてる奴なんていねえだろ?』
『あ、諦められるわけありません。まだチャンスがあるんですから』
「そ、そうですわ。未だに私は、優汰様を婚約者にする夢を諦めておりませんもの」
そう。
私と優汰様が結ばれてみせますわ。絶対に。
負けられない気持ちが私の拳をぎゅっと握らせる。
『じゃー、みんな服装は例のウェディングドレスでいーい?』
「構いませんわ」
『はい』
『いいぜ』
『おっけー。後はー、順番をどうやって決めるかなんだけどー』
……じゅ、順番!?
私はそれを聞いてはっとしましたの。
優汰様は、嘘とはいえ告白されたことはあるのかしら。
もしないのだとしたら……。
「わ、私が最初でもよろしくてよ」
私は無意識にそう口にしたのだけれど、やはりそれで納得する者はいなかったわ。
『わ、私が一番最初に依頼を受けたのですから、最初であるべきではないですか?』
『駄目に決まってんだろ。俺だって最初がいいに決まってる』
『となるとー、やっぱ、勝負して決めるしかないかー』
この時点で、やはりみんな気づいているわね。
優汰様に初めて告白するための争いであることに。
『だったら、シャイゲのカジノで誰が一番稼げるか勝負しねえか?』
『確かに、その方が公平ですね』
『あーしも構わないよー。るとっちは?』
「ええ。受けて立ちますわ!」
ここだけは負けられませんわ。
優汰様への告白。その最初の座だけは。
メラメラと燃え上がる心の炎。
優汰様。ちゃんと私が勝利して、貴方様に初めてこの想いをお伝えしてみせますわ!




