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オンラインゲームで知り合った友達が同じ高校のTOP4美少女達だったけど、僕は本当に友達のままでいていいの?  作者: しょぼん(´・ω・`)
第九章:過去、現在、未来

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第5話:ASUKAがそこに立つ理由

「えっ?」


 瞬間、沙和さんに握られている手の感触や、それまでに浮かんでいた妄想なんて吹き飛ぶくらいの衝撃が走った。

 彼女はなんでそう口にしたのか、一瞬わからなかったから。


「きゅ、急にどうしたの?」


 僕が言葉を濁す代わりにそう聞くと、横になったままの沙和さんは少しだけ目を伏せ不安そうな顔をする。

 それでも、すぐにまた綺麗で真剣な瞳を僕に向けてきた。


「あのね。本当は聞いちゃいけないかなって思ったんだけど。その……ASUKAを見てた優くんの表情とか、その後に見た後ろ姿を見て、直感的にそう思っちゃって……」


 真剣だった顔が、話すに連れて申し訳なさを色濃く出す。

 きっと彼女は察してるのかも。だからこんな顔になるんだ。

 僕のそんな直感は、次の言葉で現実になる。


「それでね。優くんがあーし達以外の女子で、目を奪われるくらいの知り合いがいるとしたら、それってやっぱり、中学校時代なんじゃないかなーって」


 ──「ちなみにー、話したいこととかあったらー、この機会に何でも聞くかんね」


 ……やっぱりあの時の言葉は、このことだったんだ。

 ASUKAの事を思い出しこと以上に、沙和さんがあの時から見せてくれていた優しさを感じ、僕は別な意味で申し訳なさを覚える。


 急に泊まろうとした理由もきっかけを作るため。

 それまでの買い物とかボウリングなんかも、きっと僕の気持ちを軽くするため。

 勿論それは予想でしかないけど、沙和さんのことだから間違ってないんじゃないかなって思う。


 僕はその瞬間、ふっと笑ってしまう。

 今こうやって気を遣ってくれる人がいる喜びと、過去を思い出し迷惑をかけている自分への呆れ。それらが入り交じった、なんともいえない笑顔で。


「……もしかして、違かった?」


 沙和さんがちょっと不安そうな顔をしたのは、多分外れてた時、僕に過去を思い出させて苦しめちゃうんじゃって思ったからかな。

 勝手に彼女の心を読んだ僕は、名探偵のように真実だけを口にした相手に、小さく首を横に振る。

 そして、そのまま心に痛みを思い出させた相手のことを話し始めた。


「他人の空似かもしれないんだけど。多分、彼女は木原さんだと思う」

「木原さん?」

「うん。木原愛菜。僕が中学二年からみんなに無視されるきっかけになった転校生。正直、引っ込み思案な性格の彼女がアーティストになるイメージは浮かばないんだけど。でも、なんとなく間違いない気がする。目尻の下の泣きぼくろまで一緒とか、中々ないだろうし」


 僕は、中学校の卒業式で壇上に上がり、賞状を貰った後の木原さんと今の彼女を重ねる。

 アーティストとしての写真は化粧なんかもしてるからか。華やかさも違う。

 それでも、僕には他人に見えなかったから。


「確か彼女も、優くんを無視したんだよね」

「うん」

「そこから女友達とは話すようになったって言ってたっけ?」

「うん。よく覚えてるね」

「そりゃ、優くんが言ったことだもん。忘れないよ。あーしは、優くんのすべてを受け入れるんだーって決めてたし」


 また真剣な瞳を向けてくれる沙和さんは、ASUKAと同じくらい眩しい。

 でも、その眩しさは嫌じゃない。まるで太陽のように僕に温かさをくれるから。


「それでも、有名になりたいみたいなタイプじゃなかった?」

「うん。だから驚いたんだ。彼女がなんでアーティストを目指したんだろうって。まあ、考えても意味はないんだけど」


 そう。考えたって意味はないのに。

 僕が思わず自嘲すると、沙和さんは少し考えると、おずおずとこんな事を言ってきた。


「もしかすると、だけど。木原さんって子は、優くんに謝りたかったのかも」

「え? 僕に?」

「うん」


 どういうこと?

 僕に謝りたいからアーティストになる。そこに関連性があるように感じないんだけど。


「なんでそう思ったの?」

「うん。そのね。彼女が一躍人気になったのは、とあるアニメの主題歌だったの。主人公の男子高校生が濡れ衣で周りからひどい目で見られちゃうんだけど、それをヒロインの女の子が助けてくれて、最後には濡れ衣を着せてきた男子がざまぁされちゃう感じの」


 へぇ。今ってそういうアニメもやってるんだ。

 本当に僕はそういうのに疎い。だから、そんなのすら全然知らなかった。


「でね。その時のエンディングを歌ったのがASUKAだったんだけど。その時すごい話題になったんだよね。歌詞と曲が真実味がありすぎてやばいーって」

「真実味?」

「うん。アニメと全く同じってわけじゃなかったんだけど。とある男子が自分を助けてくれたとに、そのせいで相手が無視されちゃって、結果自分も無視するようになったことを懺悔する。そんな歌だったんだよね」


 無視された男子……きっかけを作った女子……。

 話を聞いただけで胸がズキリと痛むくらい、自分に重なる歌。


「あーしもその歌を聴いた時、確かに凄いって思った。心が籠ってるなんてレベルじゃなかったし。で、試しにアニメも見たんだけどさー。そしたら、ヒロインが主犯の男子の告白を好きな人がいるって断わったんだけど、その時に勝手に名前を借りて主人公が好きだからって言ったのがきっかけでいじめられるようになったって知ってさー。その時は、アニメに合わせたんだなーってくらいにしか思ってなかったし、その後に出したASUKAの明るい歌とかラブソングのほうが好きだったから、すっかり忘れてたんだよね。でも、今思い出したらなんとなくわかんの。優くんと木原さんって子の状況にめちゃくちゃ似てるって」

「……うん。確かに似てるね」

「でしょ? だから、もしかしたら無理をして有名になってでも、優くんに何とか謝りたいんじゃないかなって」


 謝りたい、か……。

 沙和さんの話を聞いて、僕は心でその言葉を繰り返す。

 無視されるようになった後中学に通い続けた間、木原さんとの接点はなかった。

 無視ってそういうものだし、そりゃそうなんだけど。


 途中から、女友達と笑顔を見せるようにもなっていた彼女。

 そんな木原さんが僕に謝りたいっていう気持ちなんて持ってたのかな。

 半信半疑の沼から抜け出せない。

 ただ、僕はその歌すら聞いてないし、木原さん本人から何か聞いたわけでもない。

 ここで色々考えたって、何もわかんないと思う。


「……ね。優くん」

「……何?」

「その、もし、木原さんって子が本当にASUKAだったとして。もし直接謝りたいって言われたら、会いたいって思う?」


 少し心配そうな沙和さんが、不安を隠さずおずおずとそう尋ねてくる。


 会いたいかどうか……。

 それを聞いて、僕の心がまた痛む。


 まだ二人で話せてた頃、笑顔を見せてくれた木原さん。

 無視するようになった時、凄く申し訳なさそうな顔をしていた木原さん。

 そして、友達と笑顔で話すようになった木原さん。


 彼女のことを思い出す度に痛む胸。

 正直、色々な事が頭に浮かんじゃって、自分って嫌な奴だなって思う。

 ただ、それでもやっぱり……。


「……ううん。それはないかな」


 僕が選択したのは、過去との決別だった。

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