第4話:緊張の先にあったもの
「お、この写真もいいじゃねえか」
「そうですね。ピントも合ってますし、明るさも丁度いいですよね」
「この辺はカメラの性能が凄いだけだよ」
「そんなことはございませんわ。優汰様も自信をお持ちなさい」
夜も随分と更けた頃。
僕達は僕の寝室にあるパソコンの周りに集まって、デジタルカメラで撮影した写真をディスプレイに映しみんなで眺めていた。
正直僕が撮ったとは思えないくらい、夜なのに手ブレも少ないし光量のバランスもいい写真ばかり。
イルミネーションである程度明るとはいえ、夜景の撮影って難しいって聞くし、ほんと高いデジタルカメラだったけど買って良かったと思う。
スライドしながら見ていくと、僕と二人っきりの写真も増えてくる。
気恥ずかしさも感じる写真だけど、この時撮影してくれてたのは主に沙和さん。
全身を収めた写真だけじゃなく、バストアップした写真なんかでもフレームに上手く収めてる。
「沙和さんの撮った写真もアングルとか完璧だよね」
「えへへっ。でしょーっ。あーし、こういうの得意だしねー」
「ま、四人の時はだいたい沙和にカメラマンは任せてるもんな」
「貴女は他の子との撮影も手慣れているものね」
「まーねー。みんなプリとかチェキとか好きだしー。でもー、ちっちーがあーし達を撮ってくれたやつもいい感じじゃん? 優くん、ちょっと先行って」
「うん」
沙和さんの指示に従い何枚か先に飛ばしてスライドすると、沙和さんと僕の写真が出てきた。
確かにこれも沙和さんに負けないくらい、良い構図で撮影されてる。
「これも本当によく撮れてるよね」
「そうですか?」
「うん」
「ですが、これも先程優汰君が仰ったように、カメラの性能のお陰でもありますよ」
僕が後ろに立つ千麻さんに顔を向けそう褒めると、彼女は謙遜しながらも嬉しそうにはにかむ。
僕は再び画像に目をやると、みんなとの写真をスライドをしていく。
笑顔のTOP4と一緒に写っている僕。勿論緊張はしてたし、写真を撮られ慣れてもない。
だけど、こうやって見ると案外自然に笑えてると思う。
「……なんか、不思議かも」
「え? 何がですか?」
ぽそりと呟いた僕に、千麻さんが疑問の声を上げる。
「うん。この間の千麻さんの誕生日の写真なんかもでもそうだけど。僕がこうやって、友達と笑顔で写真に写ってるのが、まだちょっと信じられなくって……ふわぁ……」
感慨深くなりながらそう口にした瞬間。僕は思わず生あくびをした。
ふっとパソコンの時計を見ると夜も一時過ぎ。流石に普段だと寝てる時間か。
「優くん眠そうだねー」
「ま、俺もちっと眠くなってきたけどな。ふわぁ……」
僕に負けないくらい大きな欠伸をした喜世さん。
みんなもそろそろ眠くなってきてるのかな。
「ちなみにー、今日はあーしときよっちが優くんと寝るでいいよね?」
「嫌ですわ、と言いたいところだけれど。前回私達が一緒だった以上、仕方ありませんわね」
「そうですね。今晩の機会も沙和の提案ですし」
そんな中、沙和さんがみんなにこう口にすると、千麻さんと瑠音さんは渋々それを受け入れる。
確かに瑠音さんと千麻さんだけ特別っていうのは悪いかも。
とはいえ、みんなと一緒に寝るのって、やっぱり恥ずかしいんだけど……。
「じゃ、じゃあ、早く寝る準備をしようぜ」
さっきまでの眠そうな表情はどこへやら。急にしゃきっとした喜世さんが急かすようにそんな声を出す。
それがちょっと面白くって、僕達はくすくすと笑う。
「ほんと。現金ね貴女は」
「う、うるせーなー。お前らだって逆の立場ならそうしてるだろ」
「まあ、それは否定できないですけど」
「だよねー。ま、あーしも早く優くんと横になりたいしー、寝る準備しよ?」
「う、うん。そうだね」
笑顔で話す沙和さんにそう返事をしたけど、僕はふっとこの間の瑠音さんと千麻さんの時の事を思い出しちゃって、少し緊張しながらみんなと準備を進めたんだ。
◆ ◇ ◆
「優汰ぁ……」
瑠音さんと千麻さんは僕の寝室に残り、喜世さんと沙和さん、僕の三人がベッドで横になってすぐ。喜世さんは寝言を言いながら布団を抱き枕代わりにして爆睡していた。
良い夢を見てるのか。ちょっとだらしない笑顔になってるけど、それもちょっと可愛いかも。
「きよっち、相当眠かったんだねー」
「昨日は子供達の面倒を見てたみたいだし、その分疲れてたのかもね」
片手で頬杖を突き、仰向けになる僕越しに喜世さんを見た沙和さんは、くすっと笑うと頬杖を止め、僕に向くように横向きになる。
ちなみに、この間の二人はすぐに僕の腕を取ったりして密着してきたけど、今日の二人はそんなことはない。
喜世さんはともかく、沙和さんならすぐそうしてきそうだなって思ってたから、ちょっと意外だったりする。
「ね。優くん。ちょっとこっち向いてくんない?」
「え? う、うん」
一旦喜世さんに背を向け、沙和さんの方に向いて横になる。
流石に普段より距離が近いのもあって、彼女に触れていないのに妙に緊張し始める。
だけど、そんな僕の緊張は、次の瞬間戸惑いに変わった。
だって、それまで笑顔だった沙和さんが、真面目な顔になったから。
どうしたんだろう?
「優くん。今ってー、きよっちが寝てるから、ある意味二人っきりみたいなもんじゃん」
「う、うん」
二人っきり。確かに、そうかもしれないけど……あれ?
ふと、前にお風呂場に入ってきた彼女を思い出す。
あの時も随分大胆な行動をしてたし、さっきパジャマを買う時も、下着が見えてもいいっぽい発言をしてたっけ。
実際、彼女のパジャマの着こなしは、制服の時と同じでやっぱり襟元から胸元までのボタンを外してて、下着が見えちゃいそうになってるのは間違いない。
ま、まさか、ここで急に下着を見せたりなんて……って、流石にそこまで破廉恥じゃないよね?
そんなこと、流石にあるはずないよね。
そう思っているのにまた胸のドキドキが大きくなってるのは、相手が沙和さんだからかもしれない。
「あ、あのね。ちょっと、いいかな?」
彼女はそう言うと、急に僕の手を取り互いの胸の間に持ってくると、ぎゅっと手を握ってくる。
そこから伝わってくる熱が、もしかしたらって気持ちを加速させる。
こういう考え方はいけないはずなのに、頭の奥底でそう考えちゃっている自分。
だけど、それを振り払うことができない。
も、もしそんなことになったら、どんな反応をすればいいんだろう?
嫌がったら嫌われる? それともがっかりされる? だけど、そんなの見ちゃってもいいの?
勝手に妄想が大きくなっちゃって、変な緊張感を覚えていると、手を握ったままじっと僕を見つめていた沙和さんは、静かにこう口を開いたんだ。
「あのね。優くんって、ASUKAと知り合いなの?」




