第24話:より大きな困惑
「本当に凄いなぁ……」
みんなで公園に入った後も、僕はそんな感嘆の言葉を独りごちっていた。
クリスマスの時期、よく東京駅付近でイルミネーションのイベントをやってるなんてニュースで見たことがあるけど、実際こんな感じですごく神秘的なんだろうなぁ。
「しかしやっべーな。この雰囲気」
「本当ですね」
「やはり、間近で見ると凄さが違いますわね」
「ほんとほんと。思わず話すの忘れちゃうよねー」
みんなも周囲に広がる風景に見惚れながら、ちょっと感動すら見せている。
「ちなみにさー。クリスマスもここでイルミネーションやるっぽいんだよねー」
「あ、そうなんだ?」
へえ。やっぱり人気スポットはそういうイベントって多いんだなぁ。
沙和さんの説明を聞きながら感心していると。
「え? またみんなで見に来よっか?」
彼女は笑顔で僕に向けそう言ってきた。
「それは良案ですわね」
「そうですね。優汰君はいかがですか?」
「うん。僕も大丈夫だよ」
「そう。でしたら決まりですわね。一緒に私の誕生日も祝っていただかないと」
そういえば、あの時期は瑠音さんの誕生日だったっけ。
「じゃあ、みんなで沢山祝ってあげないとね」
「そうですね。秋からみんなの誕生日が続きますし、しっかりお祝いしましょうね」
「へへっ。今から誕生日が楽しみだぜ」
「そうだねー。優くんにもたーくさん甘えちゃうからね!」
「そうね。千麻の時にも相当だったようだし、私達もサービスしてもらわないと」
横に立つみんなを見ると、どこかニヤニヤしているようにも見える。
確かに千麻さんの時にも色々お祝いしたし、甘えたいからって色々としてたっけ。
そこまで期待されると、ちょっとプレッシャーかも……。
僕が少し戸惑ってると、みんながくすっと笑う。
「そんなに緊張しなくてもいいじゃーん。もち、優くんの誕生日も楽しみにしててね!」
「ああ。めっちゃうまい料理を食わせてやるよ。な? 千麻」
「はい。腕によりをかけて作りますからね」
「プレゼントも豪勢に参りますわよ。お楽しみ遊ばせ」
こうやって祝ってくれるのは嬉しいけど。これってきっと、その分自分達の時も期待してるってことだよね?
ここまで言われたら──。
「うん。僕も、少しは期待に答えられるように頑張ってみるよ」
──って言うしかないよね。
あまり甘えられるのは得意じゃないし恥ずかしい。
だけど、やっぱり友達だからこそ、期待されたら答えたいしね。
僕はそんな気持ちで笑ってみせた。
◆ ◇ ◆
そこから、色々なイルミネーションを見た後、幾つかの場所で写真撮影をした。
四人みんなを撮ったり、僕とみんな一人ずつで撮ったり。
「ね? 折角だしー、ちょーっと恋人っぽく撮ってみない?」
なんて提案されて、色々ポーズをとらされた。
腕に絡みついて寄り添う千麻さん。
腰に手を回してほしいと言われ、僕に抱きついてきた瑠音さん。
正面から抱きしめることになった喜世さん。
でも、個人的には 僕の肩に両手を掛け、こっちに寄り添うような感じでキスをしようとする沙和さんのポーズは、個人的に一番緊張させられたと思う。
「沙和。流石にそれはやりすぎですわよ」
「そ、そうだぞ。お前、偶然キスしちまったらどうするんだよ」
「そ、そうですよ。優汰君に迷惑がかかるかもしれないんですよ?」
「そんなこと言ってー。みんなだってしっかり優くんにくっついてたじゃーん!」
なんて、僕の前でちょっと言い争いになりかけてたけど。
「えっと、どれも恥ずかしいから一緒かも」
そう僕が言ったら、流石にみんなも気まずそうな顔をしてたっけ。
でも、言い争うくらいならそのほうがいいかなって思う。
「だから、喧嘩は止めよう? やっぱりみんなには、仲良く笑顔でいてほしいし」
きつくならないように笑顔を向けると、四人は動きを止め互いの顔を見つめる。
イルミネーションに照らされた彼女達が、急に赤く染まったように見えるのは気のせいかな?
「ま、まあ、優汰君が良いのなら、それでもいいですが……」
「そ、そうだな。優汰がその、あれでも問題ないってなら、いいんだけどよ」
「え? あれって?」
どういう意味なんだろう?
僕が首を傾げると、四人がちらちらと恥ずかしそうにこっちを見てくる。
「そ、それはもう、決まっておりますわ」
「決まっているって、何が?」
「そ、そりゃー。あ、あーし達が、もーっとベタベタしてもいいのかなーって」
べ、ベタベタって、もっとくっついてくるってこと?
ふっと頭に過ったのは、四人に囲まれくっつかれる姿。
そこまでされたことはないんだけど、何故か急にその絵が浮かんじゃって、僕のほうまで恥ずかしくなってくる。
ど、どう答えよう?
恥ずかしさと困惑から、思わず顔を背けた僕は、公園の外を見て気持ちをごまかそうとしたんだけど。逸らした目に飛び込んできたあるものを見た瞬間、僕は心臓が止まるかと思った。
……あれって、まさか……。
心臓が急にバクバクと脈打ち、背中に嫌な汗が流れる。
──「有内君。あの……ありがとう」
忘れかけていたはずのあの日がフラッシュバックし、ぎゅっと胸が締め付けられそうになった理由。
それは、公園の外にあるショッピングモールの壁にある、一枚の大きな宣伝ボードにあったんだ。




