第23話:夜の公園
ご飯を御馳走になった後、僕は再び獏君達とマルカーを遊んだ。
獏くんと琉武君が一生懸命教えてくれたお陰で、まあまあ走れるようになった僕は、そのまま彼らの案内でワールドフリーランのまま色々な場所を案内してもらった。
このゲームはオープンワールドの中にコースが作られてるみたいで、流れでコースを走ったり色々な景色を見たりできたんだけど、町並みとかもすごく綺麗で、走りながらちょっとわくわくしてた。
その後、再び獏君達とレースで対決。
「優汰、そこだ! 飛ばせ!」
「優汰さん。がんばってー!」
喜世さんと蒼ちゃんの声援を受けながら頑張ったけど、流石にまだ二人に追いつけるほどじゃない。
それでもさっきより順位は上がってて。
「有内やるじゃん!」
「獏兄ちゃんと俺のお陰だね!」
なんて、二人は自慢げな笑顔を見せていた。
そして、そんな僕達を見つめる響子さんもまた、無言でほほ笑みを浮かべていた。
◆ ◇ ◆
気づけば夜も九時を回り、そろそろ家に帰ることにした。
「今日は喜世のためにわざわざありがとう」
「いえ。こちらこそ長居してすいません」
靴を履いて振り返ると、響子さんや子供達が僕を見送るためにやってきた。
「有内ー。ちゃんとマルカー練習しとけよな!」
「そうだぞ! 獏兄ちゃんも俺ももっとうまくなっとくけどな!」
「そうだね。ちょっと頑張ってみるよ」
獏君と琉武君の言葉に、僕も頷く。
たしかにもう少し頑張らないと、二人には中々追いつけなさそうだし。
「優汰さん! 今度は公園デートしようね!」
「デ、デート?」
「うん! お姉ちゃんだけじゃなく、あたしともデートしてね!」
「お、おい! お前にはデートとかまだ早いだろ!」
「いいでしょ! お姉ちゃんだけいい思いするのずるいもん」
僕の隣で靴を履いた喜世さんが、完全に蒼ちゃんに振り回されてる。
ここまでオロオロする彼女を見るのって珍しいかも。
子供達のバタバタを見て、響子さんが笑いながら僕を見る。
「有内君。騒がしいし大変だけど、よかったら懲りずに遊びに来てね」
「はい。是非」
「じゃ、優汰。行くぞ」
「うん。お邪魔しました」
「またねー!」
喜世さんに従い玄関を出た僕は、笑顔で手を振ってくれるみんなに軽く頭を下げると、そのままドアを締めた。
そのまま僕達は狭い階段を並んで降りアパートを出た僕達は、互いに向かい合う。
「悪かったな。流石に大変だったろ」
「少し。でも、僕から言い出したんだし、喜世さんの美味しいカレーも食べられたから良かったよ」
「そっか。へへっ」
料理を褒められてちょっと気恥ずかしそうに笑う喜世さん。
さっきまでずっと兄弟に怒ったり戸惑ったりしてばっかりだったから、こうやって喜んでくるのは嬉しいかも。
「土曜日、一緒にイルミネーション見に行けるかな?」
「だといいけどよ。ま、お袋が妙にやる気見せてたし、信じるしかねえな」
「そうだね。それじゃ、今日はこれで」
「ああ。気をつけて帰れよな」
「うん。それじゃあね」
互いに手を振った後、僕は彼女に背中を向け、そのまま家の方に歩き出す。
でも、喜世さんの家は本当に賑やかだったなぁ。
あれだったら毎日楽しそうだよね。もちろん 喜世さんや響子さんは大変そうだけど。
でもれで、みんなでイルミネーションを見に行けたらいいんだけど……。
未だ雲の多い夜空を見ながら、僕は天気のことや響子さんの仕事のことなど、色々上手く行けばいいななんて思いながら、一人街頭に照らされた道を帰って行った。
◆ ◇ ◆
そして当日。
土曜日の夜。
「うっわーっ! きれーい!」
天気予報が嘘のように、夕方から雲が晴れすっきりとした夜空が広がる中。
目的の公園に着き車を降りた瞬間、沙和さんがひとり飛び出し公園の入口からそこに広がるイルミネーションに目を輝かせた。
確かに、そこに広がる光景は圧巻だった。
公園にある街灯や遊具。銅像や建物が軒並みライトアップされたその場所は、間違いなくただの公園とは思えない神秘的な輝きを見せている、
カップルなんかもうっとりとしながらそれを眺めて歩いたり、友達の集団らしき女子なんかも写真を撮りながら思い思いに雰囲気を楽しんでいる。
「噂に聞いていましたが、こんなに綺麗なんですね」
「ほんと。すごすぎて言葉を失っちまったよ」
「都内でも有数のイルミネーションの人気スポット。流石ですわね」
僕の脇に並んだ千麻さん、喜世さん、瑠音さんも感嘆の声を漏らす中。
「ほんと、綺麗だよね」
僕も素直にそう漏らした。
「ね、ね。早く公園の中見て回ろ!」
僕達の前に戻ってきた沙和さんはきらっきらの笑顔。
「そうしよっか。ちなみに、合間でイルミネーションをバックにみんなの写真を撮ってもいいかな?」
「構わないわよ。勿論、貴方とのツーショット写真も撮らせてもらうわよ」
「え? あ、うん。いいよ」
「おっしゃっ! じゃ、早く行こうぜ!」
「そうですね。どちらで撮影するか早く決めましょう」
「だね! それじゃー、れっつごー!」
瑠音さんの提案にOKをした瞬間、みんながさっきまでとは違う笑顔を見せると、みんな一斉に歩き出す。
なんか、千麻さんの誕生日以降、二人っきりの写真が欲しいって言われる機会が増えたけど、みんな一緒の写真じゃ駄目なのかな?
まあ、みんながそういう写真を欲しいっていうんだし、断る理由もないんだけど。
「ほらー。優くんも早くー!」
「あ、ごめん」
慌ててみんなに追いついた僕は、そのまま並んで神秘的な公園へと足を踏み入れたんだ。




