第21話:賑やかな時間
玄関でのバタバタが落ち着いた──かと思ったんだけど、家にあがらせてもらってもなんだかんだでバタバタが続いた。
◆ ◇ ◆
家にあがってすぐ。
ちょっと懐かしい感じの畳の居間で、僕は早速長男の獏君と次男の琉武君の相手をすることになった。
ゲームはマルオカートワールド。スーパーマルオの世界を使ったレースゲームらしいんだけど、僕はレースゲームってほとんどしたことがない。
だから、最初はひたすら負けまくった。CPUにすら勝てずに。
「有内ー。また最下位かよー。俺や琉武に勝てないのはわかるけどよー。流石にCPUにも勝てないのはやべーってー」
「そういう兄ちゃんだってCPUに一位取られてるじゃん」
「う、うるせー! お前が最後に甲羅当ててきたからじゃねーか!」
座布団に正座しゲームをする僕の右で、胡座を掻いた獏君と琉武君が言い争う中。
「お兄ちゃん達も大人げないよー。優汰さんはマルカーシリーズ初めてなんだから。ちゃんと教えてあげなよー」
なんて、左に座る蒼ちゃんがそう苦言を呈してくれる。
玄関で会った瞬間は小学生だなって印象だった三人。ただ、蒼ちゃんは喜世さんとのやり取り以降、随分と落ち着いた態度をみせてる。
一番年下なのにしっかりした、どこか背伸びした雰囲気があるのは喜世さん譲りなのかなって思ってたんだけど。
「うっせーなー。お前は急にませたこと言ってんじゃねーよ」
「獏兄ちゃんの言う通りだよ。普段はゲームやらせてやらせてうるさいのに」
「そ、そんなことないもん! ゆ、優汰さん。お兄ちゃん達の言う事なんて信じなくっていいからね! あたしはいっつもいい子だから」
兄弟のツッコミに慌てて取り繕う姿は、やっぱり小学生って感じがする。
でも、いい子っていうなら。
「うん。みんないい子だと思うよ。ゲームが下手な僕と遊んでくれるし、庇ってくれるし」
そう。みんないい子だと思うんだよね。喜世さんに似て。
僕が笑顔を見せると、彼らはみんな驚いた後。
「これが、姉貴を落とした大人の余裕かよ……」
「獏兄ちゃんじゃこうはいかないよね……」
「う、うっせえ。琉武は一言余計だ」
唖然としながら獏くん達ははこんな会話をし。
「イケメンでこんなに優しい人なんて、世界に存在するんだ……」
蒼ちゃんはまた目をキラキラさせている。
うーん……イケメンかは置いておくとして、これくらいならみんな普通じゃないのかな?
ま、いいや。
「獏君。琉武君。よかったら、走り方だけでも少し教えてもらっていい? 少しは勝負できるようにならないと、二人に悪いし」
「まーなー。アイテムを上手く使うのは後にしても、もう少し早く走れねーと延々とこうなっちまうもんな」
「獏兄ちゃん。ワールドフリーランで少し走ってみる?」
「それいいな。そうするか」
「優汰さん。頑張って!」
「うん。二人ともよろしくね」
僕の提案に答え、そのままワールドフリーランっていう自由に世界を走れるモードで、僕に走り方の基礎を教えてくれる獏くんと琉武君。
蒼ちゃんはその間もずっと応援してくれて、僕はなんだかんだで三人と楽しくゲームすることができたんだ。
◆ ◇ ◆
しばらくして、喜世さんがご飯ができたってことで、僕達も配膳なんかを手伝った。
大きめの座卓に並んだ料理はポークカレー。
子供達向けには甘めの。僕と喜世さんのは本格的なルーを使ってるみたい。
「それじゃ、いくぞ。いただきます」
「いっただっきまーす!」
僕の脇に座った喜世さんの合図で、兄弟達三人は元気に挨拶する。
「いただきます」
僕も同じく挨拶をすると、スプーンを手にしてカレーを口にした。
……うわ。これ、すごく美味しい。
瞬間、僕は目を丸くした。
元々漂ってた香りから、かなり本格的な感じはしてたけど、旨味もコクもあるし、辛味もしっかりしてる。ブロック肉を使ったこっちの豚肉は……うん。ちゃんと焼き目を入れていて香ばしいだけじゃなく、肉も柔らかいしジューシーさもある。
これだけの味を出せるのは凄いなぁ。かなり手間がかかってそう。
「どうだ?」
「うん。凄く美味しいよ」
「口に合うか?」
「うん。これなら毎日食べても飽きないと思うよ」
「そっか」
問いかけに笑顔で本音を口にすると、様子を窺っていた喜世さんはほっとした顔をする。
「喜世姉のカレーはほんと美味しいんだよなー」
「お母さんのカレーより、絶対美味しいよねー」
「わかるわかる。母さんのカレー、ちょっと甘すぎるんだよなー」
向かいに座る獏君達三人も、そう言いながら笑顔でカレーを食べ進めてる。
みんながここまで言ってるってことは、本当に彼ら好みの味付けにできてるってことだよね。
「ほんと。喜世さんって料理上手だよね」
「そうか? ま、作り慣れてるってのが大きいけどな」
僕がそう褒めると、彼女は少し気恥ずかしそうに笑う。
「母さんは朝も早いから、弁当や朝食もほぼ姉貴が作ってるんだぜ」
「へぇ。お弁当だけじゃないんだね」
「ほんと。朝から喜世姉のご飯が食べられるのは幸せだぜ」
「ちなみに、あたし達もちゃーんとお片付けとか手伝うよ。ね? お姉ちゃん?」
「うん。片付けは蒼が一番頑張ってるな」
三人が笑顔で口々にそんな話されて、喜世さんは少し照れながら応対してる。
子供って、なんとなく裏表なく本音を口にする印象がある。多分これらの感想も本音だろうな。
一人っ子だった自分にとって、こうやって兄弟なんかと家族団らんの時間を過ごすことなんてなかったけど、こういうのもいい感じだよね。
喜世さん達の会話を微笑ましく見ていると。
ピンポーン
突然、家のチャイムが鳴ったんだ。




