幕間:沙和達による計画
「やっほー。聞こえるー?」
『ああ。問題ないぜ』
『映像もちゃんと届いておりますわ』
『僕も大丈夫だよ』
「おっけー」
パソコンのディスプレイに映っている、千麻以外のカメラ画像。
あーしはそのひとつ、一番大きなウィンドウに映っている生の優くんを見て、にやにやしたくなる気持ちを笑顔に変えてごまかした。
あの後、明日のことについてもうちょっち話したあーし達は、そのままシャインズ・ゲートを終わりにしたんだけど。その間にあーしがゲームの個別チャットでこっそり声を掛けて、こうやってイズコで個別に通話することにしたんだよねー。
もち、この話は千麻には内緒。
そりゃーねー。
「みんな、今日は遅いのにごめんねー。ちっちーの誕生日もすぐそこだしー、その話をしておきたくってさー」
こんな話題をするのに、本人がいるのは流石にサプライズ感ないしねー。
『確かに。木曜日まであと三日だものね』
『そうだな。で、話ってなんだよ?』
「話は色々あるんだけどー。まずは優くんにお願いがあるんだよねー」
『え? 僕に?』
「うん」
『えっと、どんなお願い?』
あーしが頷くと、優くんが真面目な顔をする。
きゃーっ! こういう真剣な顔もちょーイケてるじゃん!
ほんとリアルなシャイゲでの優くんも格好良いけどー、やっぱ生イケメンはひと味違うよねー。
って、優くんを楽しんでる場合じゃなかった。
「えっとね。こんなギリギリで相談になっちゃって悪いんだけどー。木曜日のちっちーのお誕生日会、優くん家でできない?」
『え? 僕の家で?』
「うん。毎年みんなの誕生日って、るとっちの家でやってるんだけどさー。移動も車使わないとだしー、毎年同じ場所ってのも味気ないなーって。で、だったら今年は優くん家でやりたいなーって」
勿論、るとっちの別宅が嫌ってわけじゃない。
でも、どうせだったら優くん家のほうが、ちっちーも絶対喜ぶんと思うんだよねー。もち、あーしもだけど。
『そっか。全然構わないよ』
あーしのお願いを聞いて、優くんは眩しい笑顔とともに、迷いなく快諾してくれる。
……やっばー! 笑顔眩しすぎだし、本気優しすぎ!
るとっちは天使なんて言ってたけど、やっぱもう神、神っしょ!
あーしはゆうくんの返事を聞きながら、内心きゃーきゃー言ってた。
ちなみに、間違いなくるとっちときよっちも興奮してると思う。めっちゃ顔を赤くしてるし。
「ありがとー! それでさー。優くんってー、水曜日の夜用事ある?」
『えっと、あるにはあるけど、瑠音さんにお弁当箱を返すくらいかな』
「ほんと? じゃー、その日にあーし達、家に行ってもいーい?」
『え? なんで?』
『折角千麻の誕生日を祝うんだもの。部屋の飾りつけなどもしたいのよ』
『まー、お前が部屋にそういうのしてほしくないってなら、無理強いはしねーけど』
「大丈夫。千麻さんを祝ってあげるためなんだし、全然問題ないよ」
るとっちやきよっちの言葉を聞いても、優くんってば笑顔のまま。
顔が見えてより爽やかさが際立ってるのもあって、今まで以上にいい人感がビンビン伝わってくる。
普通さー、いきなりこんなお願いしたら、嫌な顔ひとつしたっておかしくないじゃん。それをこんなあっさりOKしてくれちゃうんだもん。
『あ。ちなみに、飾り付けの準備とか食べ物とか、何か買っておいたほうがいいものある?』
ほら。話を聞いてすぐこうやって色々気にしてくれるしさー。
今回の髪を切ったのだって、あーし達のためにーって、人任せにしないで自分で行動してくれたわけじゃん?
ほんと、優くんってば惚れちゃう要素あーりーすーぎー。
『そこはあらかた俺達で用意してあるから、優汰は当日の飾り付けを手伝ってくれればいいぜ』
『お金のことも心配しなくていいわ。優汰様は千麻を喜ばせることだけ考えなさい』
『わかった。でもごめんね。それでなくたってお弁当代の話だってあるのに……』
うっわー! 優くん、そんな顔しないで!
彼の気落ちした顔があーしのハートをズギュンと撃ち抜くと、同時に早く笑顔にしてあげたいって気持ちが膨れ上がる。
「そんなの大丈夫だよー。その代わりに部屋を借りたりするんだしー」
『そうそう。お前にはお前の役割もあるし。なんなら千麻には悪いけどよ。前日もお前と一緒にいられるわけだしな』
『ま、あの子はクラスメイトとして優汰様と接する機会も多いわ。だから、たまには私達にもこういった機会をいただかないと』
「うんうん! だからー、元気だそ?」
『……うん。そうするよ。ありがと』
あーし達が笑いかけると、優くんが優しく微笑んでくれる。
もーそれが素敵すぎて、あーしはまた心臓を撃ち抜かれた。
わーっ! もーヤバっ! ヤバいっしょ!
なんで今ビデオ通話なのー!?
あー! こういう優くんの色々な表情、もっと沢山側で見たいよー!
あーしがその場で悶えたくなるのを必死に堪えていると。
『そういえば。水曜の夕ご飯は僕が作っておくから。家の人に外で済ませてくるって伝えてもらってもいい?』
なんて、嬉しいことまで言ってくれちゃう。
前に食べた時も、ほっぺが落ちちゃうんじゃって思うくらい美味しかった優くんのご飯。
またそれが食べられるなんて、それだけももー最高!
「おっけー! 優くんが何作ってくれるのか、めっちゃ楽しみー!」
『そ、そんなに期待しないでね。口に合うかわからないから』
「えーっ! 前のご飯もめちゃくちゃ美味しかったもん! 期待するなっていうのが無理っしょ!」
『ま、優汰が作るなら間違いねえ。それは俺達が保証する』
『口に合わないなんてことございませんわ! 残す人がいるというのなら、私がすべていただいてもよろしくてよ』
「無理無理無理無理! あーしが残すはずないじゃん!」
『俺だって、絶対渡せねえからな!』
優くんのご飯っていうだけで必死になるあーし達を見て、優くんがちょっと苦笑いしてる。
呆れられてるかもって不安があるはずなのに、それよりそんな顔も素敵って思ってるあーしはもう、優くんを好き過ぎだと思う。
──今までも好きだった優くん。
でも、髪を切ってくれてイケメンに進化しちゃった今、こうやって色々な表情をちゃんと見せてくれる優くんともっといたいって気持ちも、めちゃめちゃ大きくなってる。
あー。もー、明日が待ちきれないよー!
さっきのシャイゲ内で優くんとイチャイチャできる口実もゲットできたしー。これからの学校生活がめっちゃ楽しみじゃん!
あーし達以外の子達に優くんを取られないためにも、ぜーったいもっとアピってくんだからね!




