第6話:なんでそんな格好なのか?
えっと、確かこの辺……。
僕がシャインズ・ゲートにログインしてやってきたのは、神聖都市ゼクセイドの東側。海岸線にある小さな砂浜だった。
沙和さんからのDMで、ここに来てからボイスチャットを繫ぐようにって指示があったんだ。
ちなみに、この辺りに来たのは初めて。
でも、ゼクセイドからの距離は遠くないし、それほど強い敵もいないから、来るのはそれほど困らなかった。
白い砂浜と海岸線。
陽射しの輝きもあってどこか夏っぽさを感じるその場所には、敵らしい敵もいない。
ということは、ここは観光ポイントみたいな場所なのかな?
ぱっと見、イベントが始まりそうな建物とかもないし、NPCなんかもいないみたい。なんなら他のプレイヤーどころか、肝心の沙和さん達の姿すら見えないんだけど……。
辺りをきょろきょろしても、何ら景色は変わらない。
寄せては返す波の音なんかは心地よいし、一人で来たならここでのんびりする所だけど、今日は待ち合わせで来てるんだからそういうわけにもいかない。
とりあえず、イズコに繋いで確認しようかな。
僕はイズコを起動すると、ボイスチャットのルームに入ってみた。
と、その瞬間。
『わっ!!』
突然、沙和さんが大きな声を出した。
「うわっ!」
予想以上に大きな声がヘッドホンからしたせいで、僕まで思わず驚いた声を出すと。
『優くん遅ーい。待ちくたびれちゃったよー』
沙和さんがそんな事を言ってきた。
「え? でも、みんなまだいないよね?」
僕もしかして、待ち合わせ場所を間違えたのかな?
改めてぐるりと周囲を見回した瞬間、僕はいつの間にか後ろに立っていた四人に目が留まる。
あ、あれ? いつの間に──。
そんな疑問を覚えたのとほぼ同時に、僕は彼女達の姿にどきっとしてしまった。
だ、だって、みんながこの場所がとても良く似合う、ちょっと大胆な水着姿で立っていたんだから。
にこにこの沙和さんは、前にお風呂場で見せたような褐色の肌を覆う面積が狭い黄色のビキニ姿。
いつものように束ねたポニーテールともよく似合ってるけど、大きな胸もあってやっぱり目のやりどころに困る。
千麻さんも髪の毛と同じ藍色のビキニだけど、腰には薄いパレオを巻いていたりして、彼女らしいしおらしさを感じさせる。
ただ、顔を赤らめ俯きながらちらちらとこっちを見てる姿は、こっちにも恥ずかしさを伝染してくる。
千麻さん同様、どこか恥ずかしげに顔を背けている喜世さんは、どちらかというと競泳水着に近い真っ赤な水着。
ただ、ちょっと下半身の切れ込みが鋭いし、肩から胸元までのカットもちょっと広めで胸の谷間が見えてて、周囲に比べて地味なんていうことはない。
そして瑠音さんは、フリルの多いピンクのビキニ。
彼女も下の水着がちょっときわどい切れ込みをしてて、見ているこっちが目のやり場に困る。
い、いくらゲームの中は好きに着飾れるといったって、何でみんなこんな格好なの!?
正直どこを見ていいのかわからない僕は、恥ずかしさで顔を赤くしながら思わず顔を背けた。
「え、えっと、何でみんな水着なの?」
僕が戸惑いながら尋ねると。
『そ、そりゃ、お前を驚かせたかったからに決まってんだろ』
喜世さんが不満げな声でそう答えた。
「ぼ、僕を驚かせる?」
『ええ。優汰様が私達を驚かせたのですもの。仕返しですわ』
「仕返しって……」
瑠音さんがふてくされ顔でそう口にしたけど、僕が驚かせたって……あ。
「もしかして、今日の顔出しのこと?」
『そーでーっす! 優くんってばあーし達に相談もなしに髪切ってるしさー』
さっきまでの笑顔から一変、沙和さんも不満そうに頬を膨らませる。
『ただ、ゲームとはいえこの格好は、ちょっと恥ずかしいですが……』
唯一、千麻さんだけは未だ顔を真っ赤にして俯いてるけど、それは僕も同じ気持ちだ。
実際、顔や身長なんかはみんなもキャラメイクの時にしっかり作り込んでたみたいだし、ぱっと見の胸の大きさなんかも多分、実際に寄せてるように見える。
だから、ゲームの中のはずなのにリアルに見えちゃって、この間の沙和さんとのお風呂の時と同じくらい恥ずかしい。
『優汰様。貴方が週末に用事があると仰ってたのは、髪を切りに行きたかったからなの?』
「あ、うん」
『でもー、なんであーし達に話してくれなかったの?』
「えっと、その……」
彼女達に言わなかった理由。
勿論それはあるんだけど、話してもいいのかな……。
内緒にしていた後ろめたさに、ちょっと口ごもった僕を見て、千麻さんがこんな質問をしてきた。
『優汰君が髪の毛を切ったのは、前に言っていた大きなきっかけ作りのためですか?』
「う、うん。みんなが僕が顔を出した時に、格好良いって言ってくれたし。だったら現実にそうすれば、みんなが現実の僕に興味を持つきっかけにできるんじゃって思って」
『まあ、確かにそういう意味じゃいいきっかけだったとは思うぜ。でも、それだったら話してくれててもよかったじゃねえか。じゃなかったら、俺達だってあそこまで驚かなくって済んだってのに』
腕を組み、未だ不満そうな喜世さん。
……そうだ。
こんなことを隠し事をして不満を強くさせるなら、ちゃんと話して謝ったほうがいいよね。
「ごめん。でも、僕はそうなってほしかったんだ」
『そうなってほしかったって、どういうことですの?』
「うん。僕はみんなに驚いてほしかったんだ」
『えーっ!? 何でー!?』
僕の言葉に目を丸くした沙和さん達。
だけど、唯一そうならなかった人がいた。
『……より真実味を感じさせたかったから、ですか?』
顔を上げ、眼鏡を直した千麻さんが僕に静かに問いかけてくる。
そこにあった正しい答えを聞いて。
「うん」
僕はしっかりと頷いたんだ。




