第2話:質問攻め
うわっ!? び、びっくりしたぁ。
あまりに大きな、合唱にも似た声に、僕は思わずびくっとした。
教室を見渡すと、男女ともに僕に釘付けになっている。
そ、それだけじゃない。
気づいたら教室の外、廊下からこっちの様子を窺って、こっちを指差したりしてる。
や、やっぱりこの髪似合ってないとか?
それとも気持ち悪い顔を見せるなとか言われるの!?
正直頭がパニックになっていると。
「ほ、本当に有内君!?」
隣の席に座っていた鈴木さんが、僕の方に身を乗り出しそう聞いてきた。
「う、うん。そうだけど……」
「うっそーっ!? 信じらんなーい!」
「まさかこんなイケメンがクラスにいたなんて……」
周囲の女子がにわかに騒がしくなる──って、僕がイケメン? 本当に?
「ね? 有内君は、なんで急に髪の毛切ったの!?」
「あ、えっと。この間お母さんに、流石に見栄えが悪いからそろそろ髪を切りなさいって怒られちゃって」
思わずそんな言い訳をすると、そこから僕の席を一気に囲んだ女子達の質問攻めが始まった。
「有内君の誕生日は?」
「は、八月二十四日」
「血液型は?」
「O型だけど」
「趣味は?」
「え?」
さ、流石にシャインズ・ゲートとか言えないよね。
え、えっと……。
「べ、勉強、かな?」
「マジ!? 真面目すぎじゃん!」
「ほーんと。でも、だからテストも学年上位なのかも」
ま、まあ、そういう反応になるよね。
沙和さんを彷彿とさせるギャルっぽい子達が妙に納得をしてる。
ちなみにこの子達はあまり見慣れない相手。多分別のクラスの子じゃないかなって思う。
「ズバリ! 有内君って、彼女っているの?」
「い、いないけど」
「好きなタイプは?」
「や、優しい人、かな」
「え? 外見の好みとかは?」
「と、特にないけど」
僕の回答に周囲が毎回ざわめいてたけど、この答えを聞いた瞬間、女子からあがったのはどよめき。
「それってつまり、私とかでもいいわけ?」
鈴木さんがそんな事を言ってきたけど、彼女が別に可愛くないようには思えないんだよね。
「外見って話なら、そうなるかも。でも、鈴木さんって可愛いほうじゃない?」
僕がそう返した瞬間、彼女の顔がぽんっと赤くなった。
あ、あれ? 大丈夫かな?
「か、可愛い? 私が? 本当に?」
「うん。鈴木さんも十分モテると思うよ」
僕の言葉を聞いて、鈴木さんがより顔を赤くしたけど。そんなに恥ずかしくなるような事言ったかな?
僕が首を傾げていると、彼女はバンっと勢いよく席を立ち上がった。
「ね、ねえ。私、彼氏いないよ?」
「あ 英子ってば抜け駆けはだめだってー! 有内君 あたしも今フリーだよ!」
「私も私も!」
え? え? え? え?
急に周囲の女子が挙手し始めたけど、これって僕にアピールしてるの?
正直、あまりに急展開すぎて頭がついてこない。
え、えっと、みんなが僕を本気で好きなのかはわからないけど。
「え、えっと、僕なんかと付き合っても、いいことないと思うよ?」
本気でそう思うからこそ、僕は敢えてそう返した。
「え? どうして?」
鈴木さんがきょとんとしながら質問してくる。
「だ、だって、僕って勉強くらいしか取り柄もないし、今まで誰とも付き合ったことだってないから。一緒にいてもつまらないと思うし……」
「それってつまり……」
僕が申し訳なさそうにそう返すと、鈴木さんが急に周りの子と顔を見合わせると。
「ダイヤの原石!」
みんなが同時にそう言った。
へ? どういうこと?
僕が唖然としていると、みんながうっとりしながら急に語り始める。
「恋愛すら知らない真面目なイケメン」
「そんな彼と恋仲になれば、私好みの彼にできる」
「それって超やばくない!?」
「ヤバすぎっしょ! しかも常に隣にこんなイケメンがいるなんて、夢のようじゃん!」
……え? そうなの?
結局僕にだって意思があるし、そうはならなそうな気もするけど。
それに、僕がイケメンかはわからないけど、一緒にいてつまらなかったから、夢どころか現実に引き戻されないのかな?
僕がそんな事を考えていると、周囲のみんな頬を染めながら、より前のめりになって僕を囲んでくる。
「ね? ね? あたしと付き合わない?」
「何言ってるのよ? 私に決まってるじゃん。ね? 悪いようにしないよ?」
「私のことを可愛いって言ってくれたもん。ね? 有内君。私とお付き合いしない?」
「え、え、えっと……」
こ、これってどうすればいいの!?
素直に断りたいけど、それでみんなから嫌われたりとか、またみんなに無視されたりとかしない?
困惑と不安で何も言えずにいると。
「皆さん。どうしたのですか?」
女子の人だかりの向こうで、どこかで聞いた落ち着いた声がした。
「な、長月さん! その、有内が、変わりすぎちゃったんですよ!」
「へ? どういうこと?」
「何があったってんだよ?」
男子の誰かがそんな説明をすると、沙和さんと喜世さんの疑問の声がした。
妙に廊下も騒がしくなってたし、みんなも気になったのかもしれない。
「皆様。道をお開けになって」
「は、はい!」
瑠音さんの言葉につられ、みんなが道を開けると、そこに現れたのはTOP4のみんな。
と、とりあえず変な質問攻めからは解放されたけど、ここからどうすればいいんだろう。みんながうまく場を収めてくれないかな……。
他力本願さにちょっと申し訳ない気持ちになりながら彼女達を見ていると。
「……ト、TOP4が、赤くなったぁっ!?」
今度は男子達がそう叫んだんだけど。
確かにその言葉通り、僕を見たTOP4の面々は呆然としながら、何も言わず顔を真っ赤にし立ち尽くしていたんだ。




