17、屑という物は本当に面倒な代物である
投稿が遅くなりがちで、本っ当にすみません。
それでも見捨てずに読んでくださっている方、ブックマーク&評価してくださった方、ありがとうございます!
今にも腐り落ちそうな玄関扉をアルフレートが壊れない程度に、しかし焦りが読み取れる乱暴さでノックするとドアが僅かに開き、その間から顔の鼻から下を黒い布で隠した男が顔を覗かせた。
「何の用だ」
「ハイル殿を迎えに来た」
「よし、少し待っていろ」
そう言われ、扉が閉ざされる。そのまま待たされ、そろそろ帰りたくなってきた頃。
再び扉が開き、先程の男が今度は半分ほどまで開く。
「……後ろのヤツが抱えてるガキだけよこせ。他の二人は偽物だろう」
「「「……!」」」
……バレた。建物の出入口やその周りの家は様々な形で騎士達が固めている筈だから外から私達の様子を確認することは不可能だし、騎士達が私を裏切ることはまずもって不可能。
覆面男の位置からではアルフレートが邪魔になり私の事は見えないことも考慮するとやはり手紙の通り、術者がいるのだろう。
(殿下、どうなさいますか?)
ハラルドが魔術で聞いてくる。
まあ、答えは決まってるんだが。
「もちろん行きます。二人はここで待機していて下さい」
するりと腕の間から抜け出し、扉をくぐる。覆面男は扉に鍵をかけると、逃げ出し防止のためか私の腕を掴んで歩き出した。
玄関を抜けて薄暗い廊下を進む。突き当たりの部屋に入る。それまでの薄暗さとはうって変わった明るさに目が驚いている気がする。虹彩よ、仕事しろ。
「クラウス……!」
まず部屋の真ん中にあるソファーからこちらを見、私の名を呼んだのは、賢明にして見目麗しき我が皇帝陛下。
「ほう、あの子がご自慢のクラウス君か」
そして、その声につられてこちらに目をやったのはソファーの奥にある机にあぐらをかいた初老の男。顔や剥き出しの上半身に刺青をいれており、完全に社会不適合者さんな雰囲気だ。
つまりは怒らせたらまずい人。とりあえず下手に出ておくべきだろう。
「はじめまして、ハイルの長男、クラウスです。この度は父上がご迷惑をお掛け致しましたこと、平に謝罪いたします」
作り笑いを浮かべ、右手を差し出す。
「はじめまして、俺はロイだ。父親と違って礼儀正しいいい子だな」
「……お褒めに預り光栄です」
ぎゅむ、と握り込まれ、手が悲鳴を上げる。見上げると、それはそれは怖い笑顔を浮かべるロイ。
「あの……? できれば本題に入って頂ければありがたいのですが」
「じゃあ早速状況説明といこう。まず、君がここに呼び出されたのはハイル……君の父親が俺の恋人を略奪したからだ」
屑親父いいぃぃぃぃぃぃぃぃ! 貴様なにやってやがる…………! 893さんの恋人略奪とか死亡フラグ立ちまくりだろうが! 仮にも皇帝が何て事を!
私の心の中では大嵐が吹き荒れる。が、ロイはそれに全く気付かぬ様子で話し続ける。
……まあ、この人の心中も似たような物だろうけど。行き過ぎた恋愛感情は時に理性を焼きはらったりするからなぁ。
「勿論俺はその落とし前をつけろと彼に詰め寄った。そこで、彼が君の話を出したんだ」
うん?今、何て言いました?
屑親父が、私の話をした?
つまり、予めここに来るのが私であるとわかっていた?
つくづくこの屑は余計なこと以外しないんだな。
「ところで、話が変わるんだが俺は絶対的弱者を痛め付け、絶望する様子を眺めるのが大好きなんだ」
……本当に変な方向に話変わるな。
「それがこの辺りだと結構有名な話なんだが」
隠してないんかい。
「その事を知ったハイルから、君を差し出すと言われたんだ。俺の恋人と君を交換しようと」
…………はい?
「ハイルは俺の恋人と添い遂げられる代わりに、俺は君を好きにできるようにすればお互いWinWinなんじゃないかってな」
…………何ですと?
「だが、ただの商品のように扱われるのは君も嫌だろう」
嫌なんてもんじゃねーよ。人権否定されてるじゃん、それ。
「だから、君にも選択の機会を与えてあげようと思ってな」
「選択の、機会?」
「1、このまま父親共々逃げ帰る。そしてハイルを二度と俺の恋人に近寄らせないようにする。
2、俺との一対一の殴り合いで勝ち、恋人と三人で帰る。
3、俺との闘いで負け、恋人と帰る父親を俺と見送る。
どれがいい?」
「逃げ帰ります」
即答した。ええ即答しますとも。何が楽しくて父親の恋愛関係の始末までしなきゃいけないんだって。大体893さんと2歳児の勝負なんて結果が目に見えてるじゃん。
第一、当初の最大目標は屑親父の保護。ならば、このまま屑を引き摺って逃げ帰るべし。
本能がそう言っている。
まあおとなしくこの893さんが帰してくれればだけど。
「よし、分かっ「待て!」……なんだ、ハイル」
口出すなよ黙ってろ屑親父。
抗議の意を込めて睨むと、それが気に障ったのか小さく舌打ちをし、こちらに手を伸ばしてくる。咄嗟に振り払おうとしたが力の差がありすぎて、片方の襟を掴んで無理矢理引き寄せられた。
「良いか、クラウス。よく聞け」
嫌だよ聞きたくない。
「お前さえ、お前さえ我慢してくれれば俺とエルナの恋が成就するんだ」
諦めろよ! 何でそこで息子を人身御供にするって選択肢が思い付くんだよ! どう考えてもおかしいだろう!
「それとも」
そう口にすると同時に、ぐにゃり、と歪な笑みを浮かべる屑親父。本当に嫌な予感しかしない。
「エリザベートがどうなっても良いのか?」
「……っ!」
ああ、こいつはやっぱり屑以外の何者でもない。
だが、こいつをここまで増長させたのは私。
その負債を母上に背負わせる訳にはいかない。
一つ深呼吸をして。
体と声の震えを押し隠し。
私は、ロイに向き直り。
「勝負を、しましょう。私の選択は2番です」
何とか声を絞り出した。
3番になる可能性が頂点が見えないくらいに高いけど。
一応どっちに転んでも屑親父は解放されるし。
出来る限りは頑張ろう。
ああ、早く帰りたい。
次は、次こそはアクション回です!(違ったらすみません)




