第19話 黒幕
リューン王子は、犯人がスグルドだと言った。私たちは、その理由をリューン王子から語られるのを待っていた。
「まず、私はルスフ兄上から、バリャード侯爵とスグルドが最近密にやり取りをしていることを知らされた」
「なっ、なんと……」
「それこそルスフ兄上の思惑なのでは?」
「ああ、その可能性もあると思った。だからすぐには信じなかった。だが、私が自分の事を刺したのは、体の自由が効かなくなり、アデルリアに刃を向けたからだ。私はアデルリアを刺したくなくて、操られている体に抵抗し、その刃を自分に向けた。そして操られていたのは私だけではなかった」
リューン王子は、私を見た。
「はい、私もリューン王子が自分で刺したのを見た時、体の自由が効かなくなりました。そして、その剣を抜きました」
「犯人は私の性格をよく知っている。好きな人を殺すことになるなら、自分が犠牲になると」
「だが、二人を操ったのが誰か証拠はあるのか?」
「はい、ございます。この魔法は遅効性で事件の一、二日前から事件までの間にかけられたかと。しかし、魔法をかけられれば、その瞬間気づきます。私はかけられた記憶はありませんでした」
「なら、分からないではないか」
「ですが、私とアデルリアは同時にある魔法を見ています」
リューン王子は、スグルド王子を見た。
「スグルド。二人で見舞いに行った時、花を振らせる魔法を見せてくれたな」
「はっ、はい」
「その時、その魔法をカモフラージュとして、魔法をかけたのではないか?」
「⁈」
「カモフラージュと弟だからと油断したせいで、その時は気がつかなかったよ。流石私をよく知っているお前ならではの策だな」
「……」
「では、魔法の痕跡を……」
「もういいよ」
スグルドはポツリと呟いた。
「上手くいくと思ったんだけどなあ。まさかリューン兄上が生きているとはね。操られてアデルリア嬢に剣を向ければ自分を刺すと思っていたけど、まさか致命傷を避けて、しかも事前に魔法まで発動させてたなんて……完敗だよ」
「スグルド……なんでこんな事を……」
「兄上たちには分からないよ。必要とされない王子の気持ちなんて」
「スグルド、誰もそんな風に思ってなんか……」
「違わないよ‼︎次期国王はルスフ兄上かリューン兄上。僕は絶対になる事はない。これがどんなに惨めか分かる?二人は次期国王になる為に色々頑張って、皆に褒められて。でも僕はそんなに頑張らなくていいって言われて。誰も僕に期待してくれない。いてもいなくても一緒。もうこんなの嫌なんだよ‼︎」
「スグルド王子……」
「リューン兄上が死んで、それがルスフ兄上が仕組んだ事だったらルスフ兄上も失脚して、王位は僕が継ぐことになる。馬鹿なバリャード侯爵は僕が王位に就いた際は、重要なポジションを約束すると言ったら、喜んで手伝ってくれたよ」
「スグルド、すまなかった。お前がそんな思いをしていたとは」
「同情なんてやめてよね。そういうところが一番ムカつくんだよ、リューン兄上」
「スグルド、お前をリューン・アデルリア嬢殺人未遂及び、王位簒奪未遂で逮捕する。衛兵よ、スグルドを牢に連れていけ。そして、厳重に監視するように」
「はっ‼︎」
スグルド王子は、兵に縄をかけられた。
「スグルド、この白衣の男はお前の駒か?」
「ああ、こいつか。こいつは殺人鬼だよ。今までにもたくさんの人を毒殺している毒のエキスパートで、僕の飲んだ毒も死なない程度のを用意してもらったんだ。人体実験用の人間を用意してやるって言ったら、喜んで協力してくれたよ」
「衛兵よ、侯爵とその男も牢へ連れていけ」
三人は牢へ連れて行かれた。
「リューン王子……」
「アデルリア、事件は解決したよ。もう大丈夫だ。怖い思いをさせてしまったね。すまなかった」
リューン王子は、私の頭を撫でた。その瞬間、気が緩み私は涙を流した。
良かった。これで私もリューン王子も助かったんだ。
こうして、事件は無事解決した。




