第6話 それぞれの夜
夜――
就寝前、部屋の明かりはもう消している。
ビーは部屋で一人、ベッドに横になって思い出していた。
今朝、シャイナと模擬戦をやっていた時。
右手の少し冷えた感覚。
その後の接触時の金属音。
初めての感覚――
何があった?
何をした?
俺か、シャイナか?
感覚が鋭いシャイナのあの口ぶりからすると――――何かしたのは俺なのか?
あの時の感覚を記憶を頼りに探す。
互いに少し本気になりつつあった――
右手の温度が少し下がって……。
右手をかざして見る。
窓から差し込む月明かりに照らされ、普段より青白くうつった。
目をつぶって集中してみるも、これと言った変化は感じられない。
左手も同じようにやってみる。
両手を見比べても、体温や身体の変化を探ってみても、特に普段と変わりがない。
「なんだったんだ――」
これまで色々と試してはきたが、そのどれとも違う。
また同じ状況になれば、できるか?
窓の外の森に視線を移して、しばし思案する。
今から森に駆け出して、危機的状況になれば――と考えたのだが……。
翌朝、下手したら現行犯でシャイナに見つかり、また怒られる気がする。
ため息をついて、諦めて目を閉じた。
夜――
シャイナは窓から外を眺めていた。
二階にある自分の部屋からはビーの家がよく見える。
すでに家の明かりは消えていて、月夜が優しくその屋根を照らしている。
フクロウの鳴く声がかすかに耳に届く。
小麦畑に風が走り、サワサワと音を立てていた。
「今朝のあれ、なんだったんだろ」
シャイナはビーの怪訝な顔を思い出す。
眉をひそめて、自分の右手を確かめていた。
と言うことは、意図したわけじゃない。
そして、それはビーにとっても初めての感覚。
あの瞬間――
ほんのわずかだけど、何か嫌な感じがした。
鳴らないはずの金属音。
身体がぞわりとした。
理由はわからない。
「ビー、同じ状況作れば……とか思ってそうだな」
一度思いつくと、ビーはとことん自分で試そうとする。
「また一人で行くのか……」
シャイナはため息をついた。
それで何回助けに行ったのかわからない。
「でも、さすがに今日はないか?」
でも、また朝来いって言われそうだな――
窓の外の景色を改めて見る。
少し向こうに見える湖が、月の光を浴びて穏やかに輝く。
山々は静かにそこに佇んで、見守ってくれているかのようだ。
「あの向こうの山かぁ」
数日後に控えた旅に思いを馳せる。
普段行かない場所に行くのは、心がワクワクする。
シャイナは窓は開けたままベッドに潜り込んだ。




