↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エクリプス ―月蝕の二人―  作者: 灰色 ウサギ
第2章 想い出人の郷
69/79

第37話 外側から見た二人

今回は2話連続投稿です。併せてお楽しみください。

 マーが「休ませてほしい」と言ったことで、コウたちも夜通し歩いてきたことがわかった。まずは夕食を取ろうということになり、部屋に荷物を置いて食堂へとやってきた。

 なぜかコウとツルギも一緒だ。

 

「なんでだ」


 苛立ち混じりの独り言が、思わず漏れた。

 シャイナが頭をぽんと叩く。


「しょうがないだろ。宿の人にお客さんが多いから部屋ごとに固まって食べてくれって言われたんだからさ」

「わざわざ同じテーブルじゃなくてもいいだろ」

「わがまま言わない」


 夕食には少し早いはずだが、食堂はごった返していた。やはり一番大きな宿屋の火事の影響なのだろう。


 案内された長テーブルの向かいにツルギとコウが座る。自分の隣にはシャイナ、その奥にマーが腰を落ち着ける。

 会って間もない、しかも気に食わないヤツと早々に食事を共にすることになるとは思わなかった。正直なところ、もう少し離れて座りたい。


 不機嫌なままでいると、余計なことにコウが絡んでくる。


「もう少し慣れてもええんちゃうか?」

「お前に慣れる必要はない」

「可愛げないやつやなぁ」

「結構だ」

「まあ、でもビーが会話してるだけ珍し——」

「シャイナ!」

「はいはい」


 マーとツルギはこちらの会話に参加せず、二人で話していた。


「すみませんね。ビー君、野良猫みたいにちょっと警戒心が強くて、口が悪いもので」

「!?」

「野良猫やて」


 コウが小さく吹き出す。

 思わずマーを見れば、八の字眉でツルギに申し訳なさそうに頭を軽く下げている。

 対して、ツルギはコウを一瞥して言った。


「こいつも子どもだ」 

「ツルギ!?」


 仲間からの予想外の説明に、コウも心外だと言わんばかりにツルギを振り返る。

 いい気味だ。

 しかし、自分も野良猫扱いされて釈然としない。

 二人の抗議を、シャイナが「まあまあ」と宥めた。


 小動物は食堂に入れないため、野菜を盛ったボウルを渡して、シオンには部屋で待っててもらうことにした。しょんぼりしていたが、先ほどの件からも、変に目立つわけにもいかない。


 シャイナはこの状況に早々に慣れ始めているのか、「ツルギさん」と話しかけたりしている。相変わらず順応が早い。自分にはもうそんな気力はなかった。コウに絡まれるのも面倒なので、おとなしく黙って待っていると食事が運ばれてきた。


 ご飯に、唐揚げのような料理、スープ、見たことのない野菜が使われた副菜二品。それらが四角い盆に乗せられ、各自の目の前に置かれた。

 いい匂いが鼻をくすぐり、お腹がきゅうっと先に反応する。


 食べながら、いつもの交換を始めた。


「これ、全部食べるとビーにはちょっと多い?」

「そうだな」


 ビーは、自分の皿からシャイナの皿に揚げ物を一つと、ご飯も半分移した。

 その間にシャイナは、青い小皿の副菜を口にする。


「あ、これ辛いかも」

「ん」


 シャイナは自然な動作で、ビーの分の青い小皿を引き取る。

 辛いものは苦手なので助かる。

 ビーは白い小鉢の方の副菜を口に含んだ。

 酸味が疲れた体に沁みた。好きな味だ。

 そのまま白い小鉢の副菜をもくもくと食べ続けていると、シャイナが気がつく。


「それ好き? じゃ、これあげる」


 シャイナが白い小鉢を手渡してくれたので、頷いて無言で受け取る。

 ふと見れば、シャイナのコップが空になっていたので、注ぎ足してやる。


「さんきゅー。これ、唐揚げかな? 食べたことない味付けだけどうまっ!」

 

 揚げ物の一つひとつが大きい。ビーはもう一つ、シャイナの皿に移した。


 食べる手が止まっているコウが、怪訝な顔で尋ねてきた。


「……何してんねん、自分ら」

「何がだ?」

「何が?」


 食べながら、二人同時に聞き返す。その間にシャイナから、揚げ物に添えられたサラダが半分渡ってくる。このサラダのドレッシングもなかなかいける。


「それや。なんで勝手に移し替えとるんや? 普通もうちょいやりとりするやろ」


 マーがにっこり笑って、答えてくれる。


「いつもですよ」

「は?」


 ツルギがポツリと漏らした。


「以心伝心」



◇◇◇◇◇


 連れ立って部屋に戻る。

 改めて眺めると、五人部屋なので、それなりに広い。右手側に二つ、左手側に三つ、ちゃんと独立したベッドがある。ランプが花の形を模していて、壁や床からは木の温もりを感じる。


 部屋を見回すと、シオンは右側に置かれたベッドのうちの一つで、気持ちよさそうに寝そべっていた。耳だけはピンと立って動いている。


「ちゃんと食べれたか?」

「あい! お腹もいっぱいでち〜」


 先ほど大精霊の話で悲しそうな顔をしていたので心配していたが、幸せそうに笑うシオンに、こちらも気分が和らぐ。

 

「そうか」


 頭を撫でるとシオンは嬉しそうに目を閉じた。


 お腹も満たされたし、そのまま寝てしまいたい気分になる。しかし、戦闘もあり、夜通し歩き通した体には、肌にヘドロが張り付いたような不快感があった。

 それに使った銃の整備もしておきたい。


 マーと話していたシャイナがこちらにやってきた。


「ビー、風呂どうする?」

「……先に銃を整える。シオンもひとり置いて行けない」

「じゃあ、交代で入ろっか。ビーは銃綺麗にするなら、オレ先に行っていい? 帰ってきたらシオン見るよ」

「ああ、それでいい」

「おけ」


 シャイナが荷物整理をしているマーに伝えにいってくれる。なんだかんだで、コウたちも一緒に行った。シャイナがうまく言いくるめてくれたのか。


 部屋が静かになった。

 ようやく体の強張りが解け、肩から力が抜ける。すぐに眠気に引き込まれかけるが、頭を振ると、眠気が少しだけ遠のく。


 ホルスターから銃を取り出した。


読んでいただき、ありがとうございます!(*^×^)


少しでも、よかった、面白い、続きが気になると思っていただけたら、

★・リアクションをいただけますと、とてもとてもうれしいです。


作品への感想・コメントも一言「よかった」だけでもいただけると、大変励みになります!


ブックマークも押していただけると、執筆活動もぐぐーんとはかどります。


引き続きお付き合いいただければ幸いです。


<<<<<毎週水曜・土曜日 16:50更新予定>>>>>


次回更新予定 2026年10月14日(土)16:50


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。