第19話 路地裏の攻防(1)
路地裏を駆ける。
男が三人——
スキンヘッド。
ツンツン頭。
小柄。
子うさぎを捕らえているのは、ガタイのいいスキンヘッドの男。
まだ気付かれてはいない。
まず——ウサギ確保。
「もう一発入れとくか」
薄笑いと共に、スキンヘッドの男の腕が振り上げられる。
体に熱が起こる。
急加速、大地を力強く蹴った。
勢いのままスキンヘッドの横面に膝蹴りをめり込ませる。頬骨の硬い感触が返る。
「ぐあぁっ!!」
男が苦痛の叫びを上げる。
その手が緩み、子うさぎが投げ出された。
スキンヘッドの男の体を踏み台に、進路を変え、両手を伸ばした。
薄紫の柔らかな塊を空中で受け止め、そのまま着地する。
背後で男が倒れる音がした。
すぐに手のひらの中を見た。
小さな体。
薄紫色の毛並みに、萎れた長い耳。
ぐったりとして動かないが、胸の辺りの毛が上下しているのは確認できた。
……生きている。
「お前っ、何してくれんだっ!!」
後ろを振り返ると、殺気立った男たちがこちらを睨んでいる。
ツンツン頭と小柄な男。
スキンヘッドは仰向けで倒れたまま。
残りの二人がナイフを抜いた。
仲間がやられた怒りか、目が血走っている。
こちらとしても引く気はなかった。
衰弱した子うさぎから伝わる微かな体温。
それが全身をめぐり、抗い難い熱のうねりとなっていた。
ナイフを見ても動じない自分に対して、相手が半歩後ろにずれ、焦りの混じった声を上げる。
「こ、このまま帰れると思うなよっ」
「奇遇だな。俺も同じ考えだ」
踏みしめた靴底が、土を鈍く鳴らした。
◇◇◇◇◇
シャイナは、鼻歌を口ずさみながら歩いていた。
立ち並ぶ屋台に、活気のある声。目に入る食事はどれも美味しそうで、いい匂いがお腹を刺激する。
手には紙袋が二つ。
それぞれ串焼きとクレープが入っている。袋越しに、焼きたての温かさと作りたての冷たさが、心を踊らす。
隣を歩くエチルスが穏やかに言った。
彼の手にはサラダボールの容器が二つ重なっている。
「思ったより早く買えて良かったですね」
「ほんとだね。並んだけど、あんまり待った感じしなかった」
「店員さんたちの対応も慣れてましたね。ビーくんの希望のものも買えて良かったです」
「うん。フルーツ多めのやつ選んだから喜ぶと思う」
食べる姿が容易に想像できて、頬が勝手に緩む。
人波を抜け、飲食スペースの奥へと進む。
しかし、席が近づくにつれて、嫌な感じがした。
ビーの姿が見当たらない。
どこにいてもすぐ目が見つけるのに。
荷物だけが、机に置かれたまま残っている。
「あれ? ビーくん、お手洗いとかですかね」
エチルスの声が耳を素通りする。
席は間違えていない。
心臓が早鐘を打っていた。
ビーはこんな風に荷物を放り出して、どこかへ行くことはしない。
手に持っていた食事をどさりと机に置いた。
——何があった?
体が一瞬走り出しそうになる。つま先に力を入れて、かろうじて押し留めた。
闇雲に探しても意味がない。
感覚を研ぎ澄ませろ。拾え。
空気、匂い、音。
どこに——
ドゴッ!
壁に何かが叩きつけられる音。
怒号。
この席の向こう、奥、路地裏——!
シャイナは駆けていた。




