↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エクリプス ―月蝕の二人―  作者: 灰色 ウサギ
第2章 想い出人の郷
48/79

第16話 製図屋にて(1)

「ビーくん、シャイナくん、ちょっと手伝ってもらえますか?」


 マーに買い物を任せ、店内を物色してしばらく経った頃。マーが会計窓口で手招いていた。

 商品を棚に戻し、シャイナと共にマーの元へ行く。


「買い物終わったのか?」

「ええ、スムーズに終わりましたよ。お待たせしました」

「いや、いろいろ見れた」

「面白かった!」

「ふふ、そうですか。楽しめたみたいですね。買った物を運ぶので手伝ってもらってもいいですか?」


 マーの後ろのカウンターには大きな紙袋が二つ、小さい紙袋が一つ置かれていた。

 大きな紙袋は片手でも持てなくもない。しかし、両手で抱えたほうが安定しそうだった。

 自分より先にシャイナが一歩進み出た。大きい紙袋を少し持ち上げ、二つの紙袋の重さを比べる。


「じゃあ、オレこっちの重いやつ持つよ」

「マーにはまだ買い物してもらうから、俺はもう一つの紙袋にするか。小さいのは……」

「すみません、ありがとうございます。小さいのは僕の鞄に入りますよ」


 マーが小さい紙袋の上部を掴んで持ち上げた途端、その紙袋の底が盛大に破けて商品が散らばる。


「わぁ」


 驚きの声を上げたわりには、マーの笑顔は少しも崩れない。むしろ少し予見していたのかという余裕が垣間見える。店員がすみません、と言いながら商品を拾って詰め直してくれる。

 マーが眉尻を下げて言う。


「やっぱ、やっちゃいましたね」

「相変わらずだな」

「ほんと変わんないね」


 苦笑しながら、シャイナも頷いていた。

 店員に再度詰め直してもらった小袋を受け取り、丁寧にお礼を言ってから、マーは歩き出した。


「次は製図屋さんでこの辺りの正確な地図の確認と、近隣の情報を聞きましょうか」

「製図屋?」

「って何?」


 シャイナが不思議そうな顔をする。

 

「地図を作って売っているお店ですよ。最新の地図や、ちょっとした観光案内、近隣の情報なども得られることがあります」

「リタホームの情報を教えてもらうのか?」

「ええ、それもあります」

「それも?」

「加えて街道上の不具合や危険度、迂回すべきかどうかもわかるかもしれません」


 そうか。通る予定の道が常に安全かどうかはわからない。天候や周辺事情など、情報収集は必要なのだと思った。

 祖父母がマーを同行させたのも、こういった事情にも詳しいからなのかもしれない。


「それは助かるな」

「わかるかどうかは運次第です。冒険者用の情報屋もありますが、僕はこちらの方が好きですね。このあとは、製図屋に行ってからお昼にしましょうか」

「はーい」

「わかった」


 製図屋は先ほどの旅用品店の近くにあった。他の店と異なり、店構えはこじんまりしており、人の出入りも少なそうだった。

 こんな場所に最新の情報があるのかと、少し疑う。シャイナもこちらを見て、首を傾げる。

 マーは表に貼られた掲示物を一通り見ていた。指で軽くなぞりながら確認すると、小さく頷き中へ入って行った。

 何を確認しているかはわからなかったが、その後に続く。


 店内に入ると馴染み深い匂いが鼻をくすぐる。

 紙とインク、古びた皮の匂いが混じり合っている。


「なんか、ビーの家の書庫みたいな匂い」

「俺もそう思う」


 シャイナが自分と同じ感想を漏らしたので、少し肩の力が抜ける。同時にこの場所にどんな知識が詰まっているのか興味が湧いた。


 壁にはこの街周辺の大きな地図があり、その上に小さなメモが何枚も留められている。メモには走り書きや細かな情報が日付とともに記載されていた。

 棚には丸められた売り物用の地図に、雑然と入れられた紙束、紐で括られた冊子などが置かれていた。


 店内を見回している間に、マーがカウンターでメガネをかけた細身の老人と話していた。他に誰もいないところを見ると店主だろう。「カッカッ」と特徴的な笑い声が時折聞こえてくる。

 マーはこの短時間で、すでに相手と打ち解けているらしい。相変わらず、人との距離の詰め方がうまい。

 

「ところで、リタホームの薬草って市場にはないですよね」

「ああ、今は出回っとらんな。行くのかい、お前さん方」

「ええ、まあ」

「しかし、珍しいな。あんたさん、後ろのお子さまも連れてくのか」

「はい、彼らと一緒に」


 深い皺の奥にある厳しい目がこちらに向けられた。メガネを持ち上げ、観察しながら何かを思い出すように無遠慮に見つめられる。


「……そこの銀髪の方——」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。